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ワイン&グルメ スクリーンの銘酒たち Columnist Van Yoshimi

映画の中で恋人たちが愛を語り合うとき、主人公が家族や友人と食卓を囲むとき、そこには香り高いお酒やおいしい料理が登場します。名画の中の洋酒やグルメにこめられたメッセージをご紹介してみましょう。

紅酒

紹興酒に秘められた女性たちの愛と人生

紅酒 MAIDEN ROSE/女児紅
(1995年製作・中国)

映画のあらすじ
蘇州紹興の大きな造り酒屋に一人娘が生まれ、父親は娘の誕生を祝って女児紅といわれる紹興酒を仕込み、土に埋める。年頃になった娘は、いいなずけとの結婚を拒否し、職人の青年と恋に落ち、親の反対を押し切って私生児の女の子を産む。文化革命の混乱期に父を失い、造り酒屋を没収されながらも、一人娘を女手ひとつで育て上げる。やがて孫が産まれ、探しあてた父が造った女児紅を70年後、孫の結婚式で披露する…。

舞台は美しき水郷の町 紹興

中国を代表するお酒である紹興酒は、浙江省紹興市で千年以上前から造られている銘酒。今回は風光明媚な紹興の町を舞台にした映画『紅酒』と、意外に知られていない紹興酒の逸話をお伝えしましょう。

映画『紅酒』は文化革命の最中に、女手ひとつで娘を育てあげ、酒造りの技術を必死に守ろうとした女杜氏の一生を描いた作品です。激動の時代を生きた3世代の女性たちの愛と人生を、紹興の町の美しい風景と重ねながら情感豊かに描いています。

女子誕生の酒にまつわる
ヒューマン・ドラマ

映画のタイトルである「紅酒」とは、日本でいう老酒または紹興酒のこと。その銘醸地である紹興では、昔からある風習が根付いていました。それは、女の子が生まれると酒を造り、土に埋めて熟成させ、その子が嫁ぐ日に飲むという風習でした。映画でも、主人公の父親が娘のために紹興酒を造り、土の中に大切に埋めます。しかし文化大革命の混乱で父親は死に、造り酒屋は没収され、紅酒は行方不明になります。

やがて年月が経ち、その酒は70年後の孫の時代に発見されます。「ルロロー、ルロロー」という紹興酒の熟成の音を頼りに、老婆になった主人公が紅酒を探すシーンは胸を打ちます。さらに、孫の結婚式でその酒をしみじみ味わうラストシーンは、非常に感慨深く最も心に残る名場面です。

鑑湖の水が銘酒を生む
熟練の杜氏が聞き分ける発酵の音色

紹興酒が銘酒である所以は、紹興の町の郊外にある鑑湖の水によるところが大きいといわれます。紹興酒の仕込みには、必ず鑑湖の水が使われ、その水はミネラルやマグネシウムなどの栄養分が豊富で、硬度が美酒造りに最適であるから言われていました。映画でも正月用の紹興酒を仕込むために、家族全員が朝霧のなか何度も船で水運びをするシーンが登場します。

紹興酒の原料はもち米と麦麹と水。製造期間は一年で最も寒い、立冬から立春までの間。もち米と麦麹を約4日発酵させて酒かめに仕込み、さらに約7日間発酵し加水して100日後、粕ごと絞って再びかめで3年以上熟成します。紹興酒造りにおいては、最も難しいのは発酵完了の見極めです。かめに響く発酵泡の音色で判断しますが、その音を聞き分けられる熟練の杜氏は、現在紹興でも5、6人程度しかいないといわれています。

女子には花彫酒 男子には状元酒
その由来は?

紹興の酒屋には今では「花彫酒」といって、かめに美しい花模様を彫刻した高価な紹興酒が売られていますが、これは女児誕生を祝って送られた「女児紅」のお酒がはじまりです。古来より、女の子が誕生すると父親は紹興酒を仕込み、娘が嫁ぐ時、その酒かめに美しい花模様の彫刻を施したことが由来で、映画にもそのエピソードが綴られています。

ちなみに「男児が生まれたときには、酒を造る習慣はないの?」と疑問に思う人もいるかもしれません。男児の場合は「状元紅」という名前の紹興酒を造ります。状元とは昔、中国で行われた官吏登用試験の最高位合格者のこと。つまり「状元紅」は、誕生した男児の立身出世を願った名前であり、今でも紹興では成人や就職のお祝いに飲まれるお酒といわれています。

紹興酒の楽しみ方

長期熟成物の高価な紹興酒は、常温、ストレートで飲むのが本来の美味しい飲み方ですが、ロックやぬる燗でも楽しめます。飲みやすくするために氷砂糖を加えることもありますが、これはその昔、粗悪な酒を古酒の味に近づけるために氷砂糖を加えていた名残り。かえって本来の風味をそこない、後味を悪くすることもあるため、何も加えずに飲むのがお勧めです。中華料理を楽しむには必須のお酒ですが、料理の際、エビや鶏肉の下味にほんの少し加えてもいいでしょう。人間の成長や生命維持に必要な必須アミノ酸を豊富に含むことから、近年、健康酒としても注目されています。

Profile

伴 良美(ばん・よしみ)
ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。

東急フードショーのおすすめ

紹興老酒 12年熟成 クリアーシリーズ

1,575円(税込)

生産地:中国 紹興市
生産者:日盛酒業有限公司
容量:500ml アルコール度数16度
まろやかな旨みと気品ある余韻
熟年の杜氏が生み出す 伝統の紹興酒

300年以上の歴史をもつ紹興酒伝統の技法を、リアルに継承した本物の紹興酒。この紹興酒の杜氏であるチュエン・ア・ユイ氏は16歳から父の見習いをはじめ、紹興酒の伝統的な醸造技術を学びました。その優れた醸造技術が認められ、三大国営企業の醸造主任を歴任。現在は日盛酒業有限公司の醸造責任者に就任し、優れた紹興酒を生産しています。12年熟成のこの紹興酒は、長期熟成によって生まれたまろやかなうまみと芳醇な香りと同時に、雑味のないクリーンな喉ごしと気品ある余韻を備えた逸品です。

紹興老酒 20年熟成 クリアーシリーズ

2,625円(税込)

生産地:中国 紹興市
生産者:日盛酒業有限公司
容量:500ml アルコール度数16度
20年熟成の原酒率は約9割
長期熟成によって生まれる気品と芳醇さ

先に紹介したクリアーシリーズ12年熟成の紹興酒を、さらに寝かせた20年物の紹興酒。紹興酒は通常20年ものと謳っていても、全体の50%にその年数の紹興酒が入っていれば商品として許可され、残り50%は他の年数のものをブレンドしてもよい決まりがあります。しかし、このクリアーシリーズの紹興酒は、8~9割が20年熟成の原酒が占める高級品です。長期熟成による奥深く気品あふれる風味と香りを備える一方で、雑味が全くない透明感のある喉ごしと余韻をもちます。完全熟成したもち米のふくいくとした甘さも備え、紹興酒の魅力を最大限に表現したすばらしいお酒です。

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