2019.11.22

きちんと理解してる?覚えておきたい子どもの医療費

Column

すべての子どもたちが健康に暮らす権利を保障するために、なくてはならない小児医療助成制度。育児の経済的負担を軽減する効果が大きく、近年、拡充が進んでいることは、よろこばしいことですよね。
一方で、対象年齢や所得制限、一部負担の有無など、医療サービスの患者負担の程度に地域間格差があるため、注意が必要です。そこで、チェックするポイントを見ていきましょう。

◆住んでいる地域で違うのはなぜ?

そもそも、小児医療助成制度とは、自治体が居住する子どもの医療費の自己負担分を助成することで、患者の経済的負担をゼロにする、または軽減する制度のこと。通常、医療では就学前で2割、小学生以上で3割を患者が自己負担しますが、小児医療助成制度は、患者の自己負担部分を自治体の公費で実施される地方単独事業であるため、自治体によって制度の内容が違うのです。
『平成30年度「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」について』(厚生労働省)で都道府県における実施状況を見てみると、対象年齢で最も多いのは小学校就学前まで。これに加えて市区町村の助成の上乗せがあり、隣町同士であっても助成内容が異なるという状況が生み出されています。

◆自治体ごとに助成内容が違うポイント

市区町村の助成の上乗せは、自治体の財政事情や政策などによって大きく左右されます。実際に、次のようなポイントで違いが出てきます。

1. 助成を受けられる子どもの年齢
→自治体によって、「就学前〜22歳年度末まで」と、大きな開きがある。

2. 親の所得制限の有無
→所得制限を設けていない自治体の方が多いが、「1歳児からの助成に所得制限あり」「中学生の助成に所得制限あり」という自治体も。

3. 一部負担金の有無
→「初診時に一部負担金がかかる」「医療費の1割が自己負担となる」といった自治体も。

また、現物給付であるか、償還払いであるかといった、助成方法も自治体によって異なります。医療機関の窓口で保険証と「乳幼児医療費受給者証」を提示すれば窓口での支払いが不要になるのが「現物給付」。医療機関の窓口で自己負担分を支払い、後日、市区町村の窓口で申請し、払い戻しを受け取るのが「償還払い」。多くの自治体が現物給付ではありますが、償還払いの自治体では、受診抑制が発生することが懸念されます。

◆親として心に留めておきたいこと

子どもの医療費の助成は、子育て世帯にとってありがたい制度ですが、助成制度の広がりが過剰な受診を招いたり、医療費の増大による自治体の財政圧迫を招いたりするのでは……という懸念の声も聞かれます。
こうした状況の中、実際に受給対象となっているお子さんを持つママはどう思っているのでしょうか。

「保育園に通い始めた頃は本当によく熱を出したり感染性の胃腸炎になったりして毎週のように小児科を受診していたので、子どもの医療費の助成は本当に助かりました。
子どもたちの命にかかわることですから、経済的な理由で受診できないなど、医療費の心配をなくすことは、最大の子育て支援だと思います」
(T.Tさん/4歳と8歳の女の子のママ)

「友人が暮らす自治体は、税収の減少にともない、一部負担と所得制限の導入を決めたそうです。自治体の負担や自治体間の格差をなくすためにも、国が全国一律の支援をできないものなのでしょうか」
(R.Yさん/0歳の女の子と2歳の男の子のママ)

「決して“タダ”ではなく、医療費助成には公費が使われているという意識を私たち親がしっかり持つことも大切だと思っています。そのためには、子どもの健康状態をしっかり把握すること、病気を予防する知識を持つこと、必要に応じて適切に医療機関を受診するスキルを身につけることなどが重要になってくると感じます」
(T.Iさん/5歳の男の子のママ)

「教育資金に住宅ローンに追われる中で、老後資金2000万円問題や消費税の引き上げと、子育て世代に苦しい現実が広がっています。だからこそ、子どもの医療費助成や幼保無償化は本当にありがたいです」
(R.Tさん/2歳の女の子と4歳の男の子とのママ)



東京都は、通院も入院も15歳の年度末までが無料ですが、千代田区のみ、区独自の上乗せで、通院も入院も18歳まで無料。この3年間の差は、大きいですよね。出産を機に、自治体をまたいでの引っ越しを考えている方は少なくないでしょう。制度の内容は子育てのしやすさに大きく関わってきますから、自治体のホームページなどでチェックしておきましょう。