「喜多方」と聞くとラーメンを連想する人が多いかもしれませんが、会津盆地の北西にある喜多方市は、全国でも有数の酒処として知られています。なぜ酒造りが盛んで、美味しい日本酒が造られるのか。その要因のひとつが、盆地の北側にある飯豊山からの清冽な伏流水の存在です。飯豊山に降り積もった大量の雪が時間をかけて地層に染み渡り、甘みを含んだ良質な「軟水」になって市内へ。ミネラルバランスの良いこの軟水は酒造りにおける「仕込み水」に適していて、穏やかな発酵を促し、ふくよかな味わいを醸し出します。
喜多方市はその伏流水を使った味噌・醤油・清酒の醸造業が盛んで、中でも清酒醸造蔵数は人口比で全国トップクラス。その歴史は古く、約400年前から酒蔵が営まれ、現在も9つの蔵元が伝統を受け継いで美味しい酒造りに勤しんでいます。
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新たな取り組みも。寛政2年から続く老舗〈大和川酒造店〉。
〈大和川酒造店〉は、そんな喜多方市で代々続く、歴史ある老舗酒蔵。江戸時代中期の寛政2年(1790年)に創業して以来、九代にわたって酒造りを続け、当時も今も変わることのない清冽な飯豊山の伏流水を仕込み水として使用し、代々の杜氏の一途な心意気で数々の銘酒を造りだしてきました。また、使用する酒造米を自社田や契約栽培農家で収穫された無農薬・減農薬無化学肥料の良質な米に早くから切り替えるなど、本当に美味しい酒造りのための新たな取り組みにも意欲的。今でこそ日本を代表する食文化として世界で認められるようになった日本酒ですが、〈大和川酒造店〉はその先駆けとして海外へ進出し、自慢の銘酒は各国で好評を博しています。
米作りと土作りから考える、“田んぼからの酒造り”を実践。
そんな〈大和川酒造店〉の取り組みのひとつが、平成19年に設立した農業法人「大和川ファーム」の自社田で栽培した原料米を使って酒造りを行う、“田んぼからの酒造り”の実践です。メインで使用する酒造好適米「夢の香」や「山田錦」などを自社田で栽培し、収穫から乾燥、精米に至るまでの全工程を自社設備で一貫管理。その利点を生かし、緻密な水分調整など、原料である米の処理には細心の注意が払われています。さらに、その酒造りの過程で出る有機副産物(米ぬか・酒粕など)を利用して肥料を製造するなど、土作りから考える循環型の米栽培と酒造りが実践されています。また、創業から続く伝統的な酒造技術を重んじながら、近代的な設備を用いた技術革新にも積極的。自社工場には、厳密な温度管理で長期低温発酵が可能なオールステンレス製ジャケット発酵タンクや、衛生的で高品質な麹作りが可能な製麹装置などが導入されています。
自社で育てた酒造米「夢の香」が生みだす、銘酒の味わい。
こだわりの製法で造られる自慢の銘酒の中からここでご紹介するのが、〈大和川酒造店〉を代表する銘柄であり、初代の名が冠せられた「弥右衛門(やうえもん)」の純米大吟醸。自社で一貫生産した酒造好適米「夢の香」を高精白の45%まで磨き上げ、福島のオリジナル酵母「煌酵母」と飯豊山の伏流水を使って醸した無濾過生原酒です。軽やかな飲み口と上品な香りで、ほのかな甘みもあるふくよかな味わいは、キリッと冷やして飲むのがおすすめ。会津盆地の豊かな自然の恩恵を受け、酒造りにおける老舗酒蔵の“美学”を貫いて生みだされた、珠玉の味わいに酔いしれてみませんか?