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渋谷 東急フードショー

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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

若き兄弟の情熱とドイツの新時代を伝える
ヴァイングート・ヴァインライヒ ヴァインライヒ・ヴァイス 2018

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

梅雨も明け夏も本番ですね。渋谷 東急フードショーは7月10日にグランドオープンし、ワイン売り場もリニューアル。たくさんのお客様にご来場いただいております。今回は新たな門出に向けて、若き生産者が造る新時代のワインをご紹介しましょう。ドイツワインの聖地ラインヘッセンで生まれる、非凡なデイリーワイン。ドイツの新時代を感じてくださいね。

若き生産者兄弟の個性を表現したモダンなラベル。

写真:兄弟は個性が全く異なるが「何事もお互いの意見を交換し理解し合って進んでいる」と仲が良い。
ワイン名は「ヴァイングート・ヴァインライヒ ヴァインライヒ・ヴァイス2018」。これはヴァイングート・ヴァインライヒ醸造所が造る、フレッシュなヴァイス=白ワイン。誕生年も2018年と若く、味わいはピュアでまろやか。バランスに優れ、リースリング葡萄の果実感が余韻に美しく残る、モダンスタイルのワインです。

ラベルも非常にシンプルで現代的。中央には、2色のラインが天に伸びるようなマークがモダンに描かれています。淡いブルーとシックなグレー。その色彩のように、全く個性が異なる若き兄弟が、ドイツワインの新時代を切り拓こうとする強い意志が現われています。

千の丘陵地に広がる ドイツ最大のワイン産地ラインヘッセン

写真:ライン川をはさんで対岸に位置する、ラインヘッセン地方の葡萄畑。千の丘陵地ともいわれるなだらかな丘が連なる
ヴァインライヒ醸造所はリースリングの聖地ともいわれる、ラインヘッセン地方のベヒトハイムに位置しています。ラインヘッセンは、いくつもの丘陵地帯に26600㏊にも及ぶ畑が広がるドイツ最大のワイン産地。その名前は1919年までこの地を統治していたヘッセン大公国の領地名にちなんでいます。ヴァインライヒ醸造所もこの地で代々ワイン造りを行ってきた歴史があり、2009年から若きヤンとマークの兄弟が力を合わせて醸造所を運営しています。

現在は20㏊の畑の98%で自然環境に配慮したオーガニック栽培を実践。醸造においても自分たちの畑の個性を生かすため、畑由来の天然酵母を活用した自然発酵を行なっています。 兄弟は現在30代前半、13年間ともに葡萄栽培とワイン造りに励んできました。しかしその年月の間には、ふたりの性格の違いゆえに幾たびかの軋轢が生じた時期もありました。

哲学的になりすぎない 日常に寄り添い飲んで楽しく とにかく美味しいワインを

写真:醸造は小区画ごと温度管理がされたステンレスのタンクで発酵・熟成。自社畑からの天然酵母を使いテロワールを表現する。
彼らは自らを「晴天と曇天」「水と災」「ジーニアスとクレイジー」などと表現するほど性格が異なります。兄のヤンは地に足が着いて現実的で、ドイツワインの伝統を重んじるタイプ。反対に弟は新しいことを好む革新的タイプで、当時フランスのジュラやロワール、ルーション地方で流行していた宇宙の動きとともに、葡萄栽培や醸造を行うビオディナミに傾倒。ナチュラルワイン、特にオレンジワインを造りたいと考えていました。

しかし兄は哲学的な論理が先行し、収穫量も十分に見込めず、必ずしも美味しいとはいえないナチュラルワインが生まれることに反対します。今でこそ研究が進み美味しいナチュラルワインが増えましたが、当時は醸造過程でSO2(酸化防止剤)を添加しないことでワインが傷んだり、温度管理が厳密に行われない自然発酵によって、いわゆるビオ臭といわれる、果実感の乏しい独特の香りのワインを生むこともあったからです。

やがて兄弟は年月をかけて互いの考えを理解し合い、二人の理想のワインを造り上げてゆきます。そして今、自分たちのワインスタイルについてこう語ります。 「化学肥料や農薬を排した環境に配慮したビオロジック栽培や無添加醸造を行いながらも、独りよがりでフリークにならず、哲学的になりすぎないワインを造っていくこと。量と質と価格のバランスに優れ、飲んでいて楽しくとにかく美味しいワイン造りを目指しています」 伝統と革新を融合した彼らのワインは、ドイツワインの新時代をも象徴しています。

優秀な若手醸造家団体「Generetion Riesling」に所属

写真:ドイツワインの未来を担う、ジェネレーション・リースリングの若き醸造家たち。
2006年、ドイツワイン協会は、若手醸造家団体「Generetion Riesling ジェネレーション リースリング」を設立しました。これはドイツ全13の生産地域の、優秀な35歳以下の若手醸造家で構成され、ドイツの伝統品種に敬意を払いながら、若い感性で伸び伸びとワイン造りを行う生産者団体。まさにヤンとマークの兄弟もここに所属しています。 今回おすすめのこのヴァインライヒ・ヴァイスのワインも、リースリング、ミュラートゥルガウ、バッカスのドイツ伝統品種を巧みにブレンド。個々の葡萄がバランスよく融合し、アロマが豊かで、果実のまろやかさとフレッシュ感がみごとに共存。手に取りやすい価格ながら、二人の情熱と非凡な才能、そして新たな時代を感じる白ワインです。この夏から新入荷し、東急百貨店のネットショッピングでもご購入いただけます。皆さま、モダンスタイルのピュアで伸びやかなドイツワインをこの夏どうぞお楽しみください。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

ヴァイングート・ヴァインライヒ ヴァインライヒ・ヴァイス 2018
(750ml) 1,870円

生産地:ドイツ・ラインヘッセン地方
生産者:ヴァイングート・ヴァインライヒ
葡萄品種:リースリング40%、ミュラートゥルガウ30%、バッカス30%
タイプ:白・中辛口 フレッシュでなめらか

ヤンとマーク兄弟は有機栽培で畑を守り、新しい感性でドイツワインの新時代を拓く生産者。豊かな才能と将来性を備えた若手醸造家団体「ジェネレーション・リースリング」のメンバーです。醸造においても畑由来の自然酵母を使い、酸化防止剤のSO2は無添加、または最小限に抑えています。さらに栽培は小区画で、醸造も区画ごと小型のステンレスタンクで行い10カ月熟成。個々の畑の特性を生かした醸造を行っています。手ごろな価格帯ながら、非常に丹念に造り上げられた非凡なテーブルワインともいえます。

白桃、メロンの果実にムスクのような芳香と豊かなアロマを備え、ワインは円やかで、よどみなく口内に広がります。バランスに優れ、各葡萄品種の酸や甘味が突出することなく融合。美しい余韻を残すワインです。スモークサーモン、魚介のマリネ、ハムやソーセージ、エビや白身魚のフライ、天ぷらや酢の物、鯛の刺身、鮎の塩焼き、アサリの酒蒸し、レモンやポン酢で食す豚カツなど、あらゆるお料理とお楽しください。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。