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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

雲海に包まれた特異なテロワールが生む オチョ・イ・メディオ ティント・ヴェラスコ

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

今月はカジュアルな価格ながら実力も十分なスペイン・ラマンチャ地方のワインをご紹介しましょう。クリスマスや忘年会にも相応しいポップで陽気なイラストの赤ワイン。雲海に包まれた冷涼な畑から生まれた、フレッシュで引き締まった果実感が魅力です。

標高850mの高地の畑が生む 美しい酸と果実感

写真:畑は天空にいるような標高850mの高地にあり、早朝は雲海が立ち込める絶景。
ワインの名前はオチョ・イ・メディオ ティント・ヴェラスコ。オチョ・イ・メディオとはスペイン語で8と1/2の意味。ラベルにはその数字と雲の上を気球で散歩する様子がユニークにデザインされています。

このラベルは、標高850mもの高地にある自社畑が大変素晴らしいこと、さらに早朝には畑に雲海が立ち込める絶景が眺められることを表現しています。

フェルナンド7世の王妃所有の由緒ある畑 ワイナリーには最新の設備が

写真:ワイナリーでは最新の設備が整い、無菌状態を維持している。土壌は葡萄栽培に適した石灰岩。
この畑の所有者はフィンカ・ラ・エスタカーダ。カスティーリャ・ラ・マンチャ地方のウクレスにあり、かつてはフェルナンド7世の王妃の財産だったスペインの宝ともいえる畑です。

ラマンチャ地方は、スペインの内陸にあり夏は非常に暑いのですが、ウクレス地区のこの畑のみは標高が高いため夏でも風通しがよく冷涼です。それゆえ葡萄は過熟にならずゆっくりと成熟。美しい酸が残り果実味とのバランスに優れたワインが出来上がります。

昼夜の寒暖の差と雲海が畑を包む絶景が優良な葡萄を生む

写真:早朝の霧がぱっと晴れた後は、高地の畑には燦燦と太陽が降り注ぐ。
高地の畑での農作業は大変な苦労でもありました。しかしこの地区の人々は、美味しいワインを造るために困難な畑仕事もいとわず、200年以上も丹精込めて葡萄栽培と醸造を続けてきました。その甲斐あって、2005年にはEUが優れた葡萄栽培地域を認証するDOウクレスの呼称が認められました。

さらに、良い葡萄が生まれる畑の条件には、昼夜の寒暖の差が大きいことも重要です。その点においてもウクレスは優れています。高地ゆえに昼間は燦燦と太陽を浴びて、葡萄は伸び伸びと育ち豊かな果実味を備えます。逆に夜間は山の気温がぐっと下がり、引き締まった酸と複雑性をもつ葡萄が生まれます。

こうした昼夜の寒暖の差が真夏は25℃以上もあるウクレスでは、朝から正午にかけて大きな雲海が立ち込めます。まるで雲の上を散歩しているかのような絶景が現れることも大きな特徴。その様子をこのワインラベルはユニークに表現しています。

果肉も茎も赤いスペインの固有品種ティント・ヴェラスコ 冬の煮込み料理にピッタリ

写真 上:果皮も果肉も葉も赤い珍しい葡萄ティント・ヴェラスコ
写真 下:冬は煮込み料理に合わせて楽しんで

最後にこのワインの名前に「ティント・ヴェラスコ」という言葉があることに注目しましょう。このティント・ヴェラスコは、スペインのみで栽培される黒葡萄の名前です。この葡萄は果皮だけでなく、なんと果肉や茎までもが赤い珍しい葡萄。それゆえこのワインも、とても濃い色調でブラックベリーなどの黒系果実由来の凝縮感のある芳醇な味わいを備えています。

まさに情熱の国スペインにふさわしい、生命力あふれる豊かな味わいのワイン。これからの季節はビーフシチューやカスレ、デミグラスソースのハンバーグなど洋風の煮込み料理、ローストした子羊やビーフ、トマト系パスタなどに。さらにすき焼きや筑前煮、豚カツ、鴨鍋など和食にもピッタリ。ほっこりとしたユーモアたっぷりのラベルデザインも、冬の食卓を温かくしてくれますね。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

オチョ・イ・メディオ ティント・ヴェラスコ 2019
(750ml) 1,540円

生産地:スペイン・カスティーリャ・ラ・マンチャ地方DOウクレス
生産者:フィンカ・ラ・エスタカーダ
葡萄品種:ティント・ヴェラスコ
タイプ:赤・ミィディアムボディ・黒スグリやカシスの果実感と凝縮感

フェルナンド7世の妻マリアが所有する歴史ある土地にワイナリーを創設。最新醸造技術で造る非常にコストパフォーマンスに優れたワイン。標高850mの高地の畑が生み出す、フレッシュな酸と黒系果実主体の凝縮感がストレートに感じられます。葡萄の果実感を大切にするため、21℃の低めの温度で発酵、新樽で14日間だけ熟成させるという細かい技が駆使されています。ブラックベリー、コーヒー、チョコレートなどの風味もあり、引き締まったボディをフレッシュな酸が支えています。ローストした子羊や牛肉、デミグラスソースの煮込みハンバーグ、牛肉の赤ワイン煮、トマト系パスタ、すきやきや根菜の煮物など冬の食卓にふさわしいワインです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。