お花の買い方(1)
今年の春は、卒業式や入学式が例年のように行えなかったり、結婚式の中止や延期もあって、お花の流通が止まり、高価な百合などが生産者のもとで破棄されるのがニュースになったりしていました。
お花のビジネスは他の農産物などと同じで、生産者の思いや工夫、輸入物の身近さもあまり知る機会がありませんでしたが、たくさんの人を介して届いているのだと初めて実感したという声も聞こえてきました。

結婚式にお花は欠かせないので、お花にまつわる話題には事欠きません。
インタビューなどで苦労話を聞かれると、5月中旬のウエディング(東京)で桜を手配した話とか、披露宴中にチューリップが全開になってしまって新郎新婦と笑い合った話とかをすることがあります。多くの人にとって、結婚式は初めてお花と真剣に向き合う機会になるので、そんな話題は他人が聞いても、ちょっと想像できて面白そうに感じていただけるのだと思います。
きっと今ならできるけど、10年前にはできなかったという希望を思い出して、見ると切ない気持ちになるお花もあります。ブーゲンビリアで会場をいっぱいに飾りたいというカップルのため、手をつくしましたが、当時は私自身のアイディアもネットワークも足りませんでしたし、お花を取り巻く技術や環境も年単位で大きく変わっています。
実際ほかのお花できれいに飾って、ご本人たちはもう忘れてくださっているようなので言いませんが、私は今もブーゲンビリアを見るたびに特別な思いが湧き上がります。
結婚式という定点から観察していると、お花の流行や品種改良などさまざまな変化を感じます。

リモート生活で話題になったビデオ通話の「背景」でも、ウエディング関係の人たちは画面の枠内にお花を飾っているのが映っている確率が非常に高いなと思いました。
仕事柄のイメージ演出的な狙いもあると思いますが、それ以上にお花が日常のものという感覚なのだと思います。
日常のものとそうでない人、たった1つの違いは、飾ることの「慣れ」です。お花用のハサミや花瓶が家にあるか、難しがらずにパパッと活けることができて、負担を与えないかということがポイントです。
そういう意味では、お花を買う時、贈る時に「飾り方」をイメージすると、そのハードルはぐっと下がります。
お花をもらい慣れているような人やお家を訪ねて花瓶があることを知っている人に贈るのならば、花そのものの旬や珍しさ、色やイメージなどで選ぶのがよいでしょうし、その逆ならば、マグカップやビールグラスなどに簡単に挿せるよう短めに束ねるなど、扱いやすいお花をお花屋さんで聞いてみるとよいでしょう。
折り畳みできるビニールの花瓶もこの数年で種類がとても増えました。複数並べるのがインテリア的で可愛いので、ここから始めるのもおすすめです。