「場」から進化する新時代の結婚式
日本の結婚式とは、歴史的に見ても「場」をさします。
近代的におしゃれに、オリジナリティ豊かに変化しても「集まる場、祝う場、酒を酌み交わす場」という根源は変わることはありませんでした。
それが今、集まることのハードルに躓いてしまいそうだと言うのです。全国のカップルと式場みんなが、です。
「そもそも結婚式とは」と、本質という名前をつけた障害物がハードルの前にあって、乗り越えていけと難しい顔をして立っているのですから、障害物リレーそのものです。ハードルは高く見えなくなったとしても、走り出す理由や乗り越えられそうな自信や意欲に繋がるとは考えにくいです。

振り返ると、結婚式のプランニングを5Wに当てはめ、その一番初めにWhyを考えましょうと、私が初めてメディアで発信したのは2005年です。今では「コンセプトウエディングの考え方」の常識ですが、実は数年前からは(Whyよりも)Whoを先に考えましょう、に変えました。ある時から、「誰を招待するか/誰に何を伝えたいか/誰に何を感じてほしいか」を軸にするプランニングのほうが、もっと自然で、新郎新婦の理想に近づく気がしたのです。Whoの後ろにWhyがいて、ヒントを連れてきてくれることがわかったのと、Whyよりも結婚式で表現すべきWhoにある重要性に気づいたこともあります。
結婚式を「(集まるための)場」と考えるのは一旦お休みにして、「結び目」に例えられるような「節目」と考えてはどうでしょうか。「今」にぴったりだと思うのです。集まるため、招待状を送るためのリストアップではなく、人付き合いを振り返り、結婚するお互いの大事な人を理解したり紹介したりするためにリストを作ると考えれば、結婚式を今しなくてもできること、伝えられることがあるとわかるし、「今する」を選んだとしても、それが最適なカタチであることが本人たちも周囲も納得できるのではないでしょうか。また、それは「リスト」ではなく家系図や相関図のようなもの、二人共通の住所録みたいなものでもよいでしょう。

すでに「見てもらうため」「祝ってもらうため」を目的とするよりも、「感謝を伝えたい」など新郎新婦のほうが招待するゲストに対して何かをしたいというふうに主流が移り変わっていますが、そういう意味では、集まることよりも、誰にどうやって何を伝えるかということがカギになる流れは自然です。
「高校を卒業してから1度も会っていないのに、なんで結婚式に招待されたんだろう」というような話を聞くことがありますが、そこには必ず理由があるはずです。招待された側にとってピンとくることばかりではないかもしれませんが、そう思ったまま集まるより、自分の物語の登場人物として欠かせない人であることを伝えたり、あるいは、万が一人数合わせのような旧型の発想があるならば、それに招待する側が気づくためにも、リスト作成という行程は必要です。
ウエディングプランナーとして、お客様ごとに「今」結婚式をすることを薦めるか薦めないかは異なりますが、基本的には慎重派です。でも、会わなくていいつもりでリストを作ると、やっぱり会いたくなるというのが人の歴史というものなのかもしれません。これを結び目と呼んで、私たちにはこんなに大事な人がいるんだと気づくことができたら、結婚式を挙げることに相当する価値ということもできますし、結婚式を挙げることに走り出す理由になるのではないでしょうか。