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結婚準備・スタート応援ガイド

ウエディングプランナー岡村奈奈さんによる結婚準備のアドバイスとコラム記事のアーカイブです。

忌み言葉とは(1)

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忌み言葉(いみことば)とは、忌みはばかって使用を避ける言葉。不吉なことを連想させるため使用を控えたほうがよいとされている言葉のことを言います。
結婚や結婚式の周辺では、不幸や離縁などに繋がるような言葉全般。ほかに、受験や闘病中の人に対しての言葉選びや贈り物などにも関連づけられます。
言葉には「言霊(ことだま=言葉に宿る霊的な力)」があって、不吉なことを言うと、それが本当に悪いことを引き寄せてしまうと信じられていたことに由来することだと思います。

私自身もこれを物心つく頃から信じているところがあり、結婚式業界のそういう文化はとても好きなので、徐々に失われていく社会の流れや感覚を強く憂いている側のタイプです。

婚礼文化を知らない人に話すとき、例えば、専門学校の初回の授業などには「縁起」の話から始めます。
さまざまなものや名称の由来を「縁起がいい」という以上に説明できないことが多く「験(ゲン)を担ぐ」など、この概念を理解しなければ受けとめられないことばかりであることを、結婚式のことを知れば知るほど実感するのですが、現代社会では、この「縁起がいいから」という言葉が感覚的に理解できない人が案外多いということもわかってきました。
幸せな時代であることの表れなのかもしれません。
それでも「縁起がいいから」と生まれたものは、結婚式のような特別な場面に限らず、想像以上に日常に溶け込んでいることを知ると、言葉や自分が実感したことだけでなくその外側の世界も、もっと面白く感じられるのではないかと思っています。

見渡してみると「勝負」の世界にいる人、スポーツマン・アスリートは、験担ぎをしている人が多いイメージがあります。
努力した人ほど、最後の一手として「運」を味方につけようとするのかもしれません。そういう慎重な姿勢や心持ちは、スポーツの中のパフォーマンスと繋がっているという面もあると思います。
受験でも「勝つ」ために、とんかつや「勝つ」の発音にちなんだものを食べることはメジャーな行為ですよね。お菓子の名前が受験生向けのものだけ変わるのも見かけます。

イカの加工品である「スルメ」は、保存食であり「寿留女」などの当て字で結納品の1つとして贈られるなどの縁起物ですが、賭け事で「スル(損をする)」ことを避けるため、スルメを「アタリメ」と呼ぶようになったというのは有名な話。
私も結婚式の仕事に就いて結納品を勉強したとき、それらが同一人物(?)だと知って大変驚きました。
「刺身」と「お造り」はほとんど同じだけど少し違うものですが、婚礼料理には「刺身」は出ません。「刺す」という「切る」に似た連想を避けるためです。
この「ややこしさ」に、優しさや日本人が乗り越えてきた文化や歴史を感じて愛しく思うわけなのです。

(2020/12)

岡村奈奈 プロフィール

音大卒業後、専門式場などの婚礼施設勤務を経て2005年にフリーに転向。執筆・監修、メディア出演多数。オーソドックスなスタイルから、アウトドアや音楽ホール等でのユニークなウエディング、伝統的な和婚までオールマイティに対応。カウンセリング型のプロデュースに定評がある。
「ハッピーウエディングBOOK」(高橋書店)
「ウエディングプランナーが教える、結婚式と準備が”もっと”楽しくなる方法」(誠文堂新光社)
「結婚する子どものために 親がすること、できること」(日本文芸社)著者。
https://nanea.jp