1970年代以降、シャブリではニュートラルで生産性のよいステンレスタンクを使った醸造が一般的になりましたが、ヴァンサンの父、ルネは伝統的な小樽の使用を頑なに守り続けました。もっとも寒冷なシャブリのこと。冷えきったセラーでは発酵がなかなか始まらないこともあるので、アルコール発酵のきっかけはタンクで行っています。樽は、そのほとんどが何年も使用した古樽を用い、新樽は少ないです。また通常のピエス(228リットル)だけでなく、シャブリで昔から使われていたフイエット(132リットル)も見られ、その古典ぶりが強調されます。ただし、当のヴァンサンに言わせますと、樽醸造はとりたててワインの品質を決める決定的要因ではないようです。大切なのは畑だと主張します。ヴァンサンは1998年に3haの区画で実験的にビディナミ農法を始め、その結果が良好なことから2002年にはすべての畑をビオディナミに転換しました。目に見えて土壌のバランスが改善され、病気が減り、腐敗果も少なくなったといいます。 畑名のつかないシャブリですが、その畑の場所は1級ラ・フォレに隣接しています。ワインの密度では1級、特級にかなわないとはいえ、人々が最高のシャブリに求める研ぎ澄まされたシャープネスとミネラル感はしっかり備えています。キンメリジャン土壌ゆえのヨード香も強く、生ガキと合わせるなら最上の1本となるでしょう。