コート・デ・ブラン地区のグラン・クリュであるクラマンは、サランの丘の南東向き斜面からアヴィーズへと続く東向きの斜面からなる。日照量に恵まれた柔らかく豊かな果実と力強いがゆったりとしたミネラルにより、味わいの広がりは大きくクリーミーな質感が特徴である。アヴィーズやル・メニル・シュール・オジェに比べると酸やミネラルはそこまでタイトすぎず、よりふくよかな味わいが楽しめる。ランスロ・ピエンヌのラインナップはクラマンのシャルドネをメインに使用しており、これぞクラマンという味を堪能することができる。創始者であるジャン・バティスト・ランスロはもともとこの地でブドウを栽培しており、その歴史は120年も前に遡る。ワイン造りに対する彼の情熱は脈々と受け継がれ、2005年からはジル・ランスロが4代目としてドメーヌの指揮をとっている。ジルのモットーは「個性あふれる区画を吟味し、クラマンのテロワールを最良の方法で表現すること」である。所有する区画はそれぞれが異なる向きの斜面を持つため、ブドウの成長スピードは一つとして同じものはない。こうしたブドウの多様性がランスロ・ピエンヌのスタイルを造り上げるのだ。クラマンの特徴である複雑さや豊かさをより表現するために100%マロラクティック発酵を行っていたが、現在では一部の樽では行わないことで、テロワール由来のフレッシュさやテンションを残すよう努めている。また、リザーヴワインの貯蔵にはソレラシステムを使用しているためブレンドには1995年からのものが使われている。こうした彼の取り組みから複雑でストラクチャーのはっきりとしたシャンパーニュが完成する。フランス国内でも多くの人が注目し、次なる世代を担う造り手として目を離すことのできない要注目の生産者である。クラマンをメインにシュイイ、アヴィーズのブドウを使用。ジンジャーブレッド、ブリオッシュ、バターを感じさせるアロマの奥には上質なミネラルが感じられる。ドサージュはごく少量であるが、クラマンのボリューム感、アヴィーズの生き生きとした酸、シュイイの明るい果実がパーフェクトなバランスを生み出している。