ショレ・レ・ボーヌは今は県道となった幹線道路D974の東側に位置する小さな村です。マルサネと同じく村名アペラシオンは得られても、特級畑はおろか、1級畑すら有りません。それゆえ隣村のサヴィニー・レ・ボーヌと比べても目立たぬ存在だが、この村には偉大なドメーヌが存在します。それがトロ・ボーです。合計24haもの畑を、アロース・コルトン、ボーヌ、サヴィニー・レ・ボーヌ、そしてお膝元のショレ・レ・ボーヌにもち、とりわけコルトンの丘にはコルトン・ブレッサンドとコルトン・シャルルマーニュ、それにクリマ名のつかないコルトン(コルトン・コンブからなる)の特級畑を有します。ドメーヌの歴史は19世紀の末まで遡り、1921年にはすでに元詰めを始めていたと言います。ドメーヌがある通りの名前はリュー・アレクサンドル・トロ。アレクサンドルは、現在ドメーヌを経営する一族の祖先で、ショレ・レ・ボーヌの村長を務めていました。そのアレクサンドルの妻がオーレリー・ボーといい、両家の姓が合わさりトロ・ボーとなっています。ドメーヌは1990年代までジャック、アラン、フランソワの三兄弟により運営され、今はそれぞれの子供たち、ジャン・ポール(アンヌ・グロの夫)、オリヴィエ、ナタリーの手に委ねられています。ブドウ畑は施肥をせず、夏季剪定により収量調整しています。赤ワインの造りは手摘みしたブドウを除梗ののち、コンクリートタンク、またはステンレスタンクを使用して発酵。最初の数日はルモンタージュを行い、その後は日に2回のピジャージュして樽に移します。新樽率は村名が4分の1、1級が3分の1、特級が50%となりますが、パワフルなアロース・コルトンはワンランク引き上げて村名で3分の1、1級で50%です。このドメーヌのコルトン・シャルルマーニュは、東側斜面の頂上、ル・コルトンに植えられたシャルドネからなり、50%の新樽を含み樽発酵、樽熟成をします。トロ・ボーのワインはどれも果実味豊かでタンニンが丸く、とても洗練されたスタイルで野暮ったさが一切感じられません。またヴィンテージごとのブレも少なく、村名ショレ・レ・ボーヌなどは、レストランの定番としてワインリストに常時載せておきたいアイテムかと思います。 トロ・ボーの村名ワインの中で最も力強いタイプを選ぶなら、こちらのアロース・コルトンです。カシスやダークチェリーの香りにややスパイシーなニュアンス。キメ細かながらも存在を感じさせるタンニン。ストラクチャーはしっかりしています。