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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

故郷へのオマージュを込め映画界の巨匠が造る フランシス・フォード・コッポラ ディレクターズ・カット ジンファンデル ドライ・クリーク・ヴァレー2012

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

映画フィルムを巻きつけた斬新なデザイン

ワインの名前は、映画の編集作業を意味する「ディレクターズ・カット」。ボトルには、ゾーエトロープといわれる映画のフィルムが巻きつけられ、とても斬新なデザインが魅力です。このワインの造り手は、『ゴッド・ファーザー』『地獄の黙示録』で有名な、偉大な映画監督フランシス・フォード・コッポラ。彼のもうひとつの天職はワイン造りでした。またそれは、イタリア移民であった彼のファミリーが抱いた大きな夢でもあったのです。

祖父のワイン造りを見て育つ少年時代

1904年、コッポラの祖父アゴスティーノは、南イタリアの小さな町ベルナルダから、新天地を求めてアメリカに移住します。ワイン造りは数世代続くコッポラ家の生活の一部で、祖父は移住後は故郷を想い、自宅の地下で日常消費用のワインを造っていました。それは決して高価なワインではなかったようですが、毎日の食卓を家族で楽しむに十分なもの。そして祖父のワイン造りをみて少年時代を過ごしたコッポラは、ワインに自分のルーツを感じ、自身のワイナリーを持つことを夢見ていきました。コッポラは成長しカリフォルニア大学ロザンゼルス校 UCLAで学んだ後、映画の道に進みます。しかし当時も、勉学や仕事の合間に、カリフォルニアの葡萄畑やワイナリーを熱心に巡り、ワイン造りへの夢をさらに膨らませていったといわれます。

映画界から夢のワイン造りへ

1975年、映画監督として成功し、富も栄誉も得たコッポラは、機が熟したとばかりに、ナパヴァレーにワイナリーを購入。『ルビコン』『イングルヌック』など、まさに芸術品ともいえるボルドースタイルの偉大なワインを生み出し、その質の高さと華やかな気品は世界のワイン愛好家を魅了しました。さらに2006年、偉大なテロワールに魅せられ、カリフォルニアのソノマにふたつ目の「フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリー」を設立。こちらは、どんな食事にも幅広く楽しめるフードフレンドリーなワイン造りがコンセプト。まさに、祖父から受け継いだ「大切な家族と食卓を囲みながら楽しむワイン」の素晴らしさを伝えるワイナリーでした。

故郷の葡萄ジンファンデルを使って

今回ご紹介するディレクターズ・カットは、この新ワイナリーの設立を祝ってリリースされたワイン。使われている葡萄品種はジンファンデルです。ジンファンデルは元来南イタリアで栽培されていた葡萄品種で、アメリカに持ち込まれた苗木をイタリア移民が好んで植えたことで根付き、今ではアメリカを代表する人気の葡萄品種となっています。つまり、ジンファンデルの葡萄から造るディレクターズ・カットは、コッポラにとっては、故郷への思いと家族のルーツが表現されたワインといえるでしょう。しなやかな口当たりと瑞々しい果実の凝縮感が特徴で、心地よい酸としなやかなタンニンが余韻まで優しく続き、リリース当初から多くの人々に愛されてきました。

映画もワインもすべて本物を

コッポラ自身は「映画を褒められるより、ワインを褒められるほうがとても嬉しい。しかし、映画もワインも生み出すものは、すべて本物でなくてはいけない」と語っています。その言葉のように、ディレクターズ・カットはフレンドリーな価格帯であっても、栽培・醸造に一切手を抜くことなく、樹齢の高い古木の葡萄と、オーガニック栽培で育った若木の葡萄をブレンド。熟成にはアメリカンオークとフレンチオークの両方をバランスよく使い、葡萄の生き生きとした果実味とエレガントな気品をみごとに表現しています。映画造り同様、全てにおいて妥協なく情熱と哲学をもって打ち込んだ「ディレクターズ・カット」は、映画好きにもワイン好きにも愛される逸品です。

東急フードショーのおすすめ

フランシス・フォード・コッポラ ディレクターズ・カット ジンファンデルドライ・クリーク・ヴァレー2012
(750ml)3,456円

生産者:フランシス・フォード・コッポラ・ワイナリー
生産地:カリフォルニアソノマ・カウンティドライ・クリーク・ヴァレー
葡萄品種:ジンファンデル78%、プティット・シラー22%
タイプ:赤・辛口・フルボディ

このワインは2006年、映画界の巨匠フランシス・フォード・コッポラ監督が、カリフォルニアのソノマに新しいワイナリーを設立したことを祝って、リリースしたワイン。故郷イタリアの葡萄ジンファンデルを使って、自らのルーツとワインへの深い愛情を表現しています。ラベルには映画のフィルムをあしらい、コッポラ監督のフィルム・メイキングとワイン・メイキングを融合させました。ソノマの中でも、ジンファンデルの聖地といわれるドライ・クリーク・ヴァレーの葡萄を厳選。ベリーなどの凝縮した赤い果実のフレーヴァー、フレンチオーク由来のバニラやチョコレートの香り。濃潤でありながら滑らかなタンニンと生き生きとした果実味、親しみがありながら気品と複雑性も備えたワインです。料理との汎用性も広く、牛肉の赤ワイン煮、ビーフシチュー、ハンバーグ、洋風カレー、トマトソースを用いたイタリア料理。さらに、中華の煮込みや豚の味噌漬けなど、和洋中エスニックと幅広い料理と楽しむことができ、大切な家族や友人との食卓を華やかに彩ります。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。