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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

スペインのペトリュス 伝説のアレハンドロ・フェルナンデスが造るエル・ヴィンクロ・クリアンサ2011

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

東急フードショーのワイン売り場では、お客様にお手頃な価格帯でありながら高品質で、さらに、世界のトレンドを代表するワインをご提供すべく日頃より努力を重ねております。そのために、定期的に約80種類のワインをブラインドでテイスティング、その中から上位の特に優れたワインを厳選した販売コーナーを設けています。今回はその中でも№1ともいえる、スペインの赤ワインをご紹介いたしましょう。

団結、絆を意味するエル・ヴィンクロ ワインを通じて喜びを分かち合いたい

ワイン名は、エル・ヴィンクロ・クリアンサ。ワイナリー名でもある“エル・ヴィンクロ”とは「団結、きずな」を意味しています。生産者が団結して、故郷の優れた固有品種で素晴らしいワインを造ることで、多くの人々とつながり、喜びを分かち合っていこう、との想いからこの名がつけられました。

ワイナリーがあるのは、ドン・キホーテの小説の舞台でも有名な、スペインのラ・マンチャ地方カンポ・デ・クリプターナの町。ここはマドリッドから列車で約2時間。赤土の大地をひた走ると、やがて広大な葡萄畑や高い木立が現れます。その向こうには青い空をバックにいくつもの白い風車が並び、雄大なスペインらしい風景が広がります。

ラベルは自然と味わいを表現 樽熟成由来の心地よい木の芳香

ワインのラベルには水彩画で、ラ・マンチャ地方に群立する木立が描かれています。ワイナリー周辺の自然風景を描いたものですが、同時に、このワインはオークの木樽で熟成しているため、ほのかに感じる香ばしい樽の風味をイメージしたともいわれます。完熟した果実と繊細な木の芳香がバランスよく溶け合い、心地よい余韻を残す芳醇な味わいが魅力です。

さらに特筆すべきは、このワインの生産者であるアレハンドロ・フェルナンデスは、現代のスペインワインを発展させた偉大な人物であるということ。彼は1972年、今ではスペインの最高級ワイン産地として知られるリベラ・デル・デュエロで、「スペインのペトリュス」と称されたティント・ペスケラを造りあげ、世界のワイン評論家から絶賛された生産者なのです。

努力と情熱の伝説の生産者 世界屈指のワイン生産地へ

リベラ・デル・デュエロはスペイン北東部に位置し、ローマ時代から葡萄栽培が行われてきた伝統あるワイン産地。しかし1960年代になると、働き手が減少しワインの質も低下。大量生産型のワインばかりが造られるようになってしまいます。また農家の中には、スペイン伝統の固有品種テンプラニーリョの葡萄を引っこ抜き、フランス系の葡萄に植え替えたり、他の農作物に転換する人も増大します。

そうした中、フェルナンデスは「このままでは故郷のワイン産業が疲弊し、スペインの伝統品種も消滅してしまう」と立ち上がります。繊細で香り高く独特の魅力をもちますが、気難しさもあるといわれるテンプラニーリョの葡萄。彼はこの葡萄品種にはどういう土壌が最適で、どういう仕立てをすれば魅力を最大限に発揮したワインができるかを研究。陽当たり、地質調査、葡萄の仕立て、栽培や醸造を工夫し、テンプラニーリョのポテンシャルを最大限に引き出したワインを造ることに情熱を注ぎます。

そして1972年。苦労して造り上げたペスケラは、ロバート・パーカーが「これぞスペインのペトリュス」と絶賛したことで知れ渡り、その素晴らしさに世界は驚嘆。さらに、その味わいに感動した地元生産者もフェルナンデスに賛同し、やがてリベラ・デル・デュエロは、世界でも屈指の高級ワイン生産地に発展します。

ワイナリーのマークに秘められた門出の神ヤヌスの石門

現在80歳を超える、フェルナンデスですが、ワインへの情熱は衰えず、テンプラニーリョの素晴らしさを伝えるべく、この葡萄品種に適した土地を発掘し新たなワインを次々と生み出しています。その一つが今回ご紹介したエル・ヴィンクロなのです。

最後にもう一つ、エル・ヴィンクロのラベルに込められた逸話をご紹介しましょう。ラベルの下中央に描かれている門のマークにご注目ください。これはワイナリーのマークですが、元々はローマ神話のヤヌスJANUSの神に由来しています。ヤヌスは「門出や扉、物事の始まり」を祝い守る神。また、一年の始まりである一月(JANUARY)を司る神でもあり、その語源にもなっています。

フェルナンデスは、このヤヌス神の象徴である石門をワイナリーのマークにしました。そこには、「古代からの伝統を守りながら門戸を開いて、現代の技術も広く受け入れていこう」「過去と未来の両方を見すえて、初心を忘れずに素晴らしいワインを造っていこう」という想いが秘められています。そして、ワイナリーの入り口にも、ヤヌス神殿の門を模した石門が造られ、その信念を伝えるかのように生産されたワインは、その門から世界中に届けられているそうです。

東急フードショーのおすすめ

エル・ヴィンクロ・クリアンサ2011
(750ml)2,050円

生産地:スペイン ラ・マンチャ地方
生産者:アレハンドロ・フェルナンデス
葡萄品種:テンプラニーリョ100%
味わい:赤・辛口・フル・ボディ

世界を席巻させたスペインの偉大なワイン「ペスケラ」を生み出したアレハンドロ・フェルナンデスが新ワイナリーで造るワイン。フェルナンデスは、多くの人々に日常的に素晴らしいワインを楽しんで欲しいと、ラ・マンチャ地方に新ワイナリーを設立し、このエル・ヴィンクロを生み出しました。2000円という価格とは思えないコストパフォーマンスの高さ。東急百貨店のブラインドテイスティングにて、最高得点を獲得したおすすめ赤ワインです。繊細で香り高いワインを生むスペインの固有品種テンプラニーリョの魅力を最大に活かし、他品種をブレンドせず100%で造る自信作。完熟したプラムのアロマに樽熟成由来のヴァニラの香りが上品に漂い、濃厚でシルクのように滑らかなテクスチャーが魅力。フルーティで表情豊か、よく成熟したしなやかなタンニン、酸とのバランスに優れ長い余韻が美しく広がります。ビーフシチューや牛肉の赤ワイン煮、ステーキ、すき焼き、ボロネーゼのパスタなどお肉料理全般と。これからの季節は野外で楽しむバーベキューパーティにもおすすめです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。