東急百貨店90周年ver

渋谷 東急フードショー

営業情報
  1. 東急百貨店
  2. 渋谷 東急フードショー
  3. コラム一覧
  4. ワインコラム

Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

白バラのような華やかな芳香 アルザスのトップ生産者が造る エミール・ベイエ・コート・デギスハイム ・トラディション 2015

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

南アルザスの名門生産者 歴史を伝える紋章を描いた気品あるラベル

写真:葡萄畑と美しいエギスハイムの街並み
ドイツ国境に近く、中世の街並みが美しいフランス・アルザス地方。ここは、ボルドー、ブルゴーニュと並ぶフランス有数の葡萄産地。中でもリースリング、ピノ・グリ、ピノ・ブラン、ゲヴュルツトラミネールなど傑出した白ワインを生む銘醸地です。世界遺産にも認定されるストラスブールの街から南には、ライン川に沿うように素晴らしいワインを生む村々が連なり、そこはワイン街道とも呼ばれています。

今回ご紹介するワインは「エミール・ベイエ・コート・デギスハイム」。エミール・ベイエはアルザス南部のエギスハイムで、1580年からワイン造りを行う名門生産者。ワインボトルはアルザス特有のすらりとしたフルート型で、ラベルにはベイエ家の紋章が描かれています。シンプルながら気品あるデザインは、ワイナリーが歩んだ長い歴史と伝統を伝えています。

豊かな自然と偉大な畑を守るべく ビオロジックを実践

写真:豊かな自然と共存し有機無農薬農法を行う畑
エミール・ベイエで特筆すべきは、エギスハイムの中でも特に素晴らしいワインを生むグランクリュ畑「アイシュベルク」を所有していること。アイシュベルクは6500万年から260万年前にかけて形成された第三紀の礫岩と泥灰土を含む土壌。中でもエミール・ベイエが所有する1㏊の区画は適度な石灰と砂岩を多く含むため、特にリースリングの葡萄栽培に適し、優美でしっかりとした骨格をもつ傑出したワインを生み出します。

現在、葡萄栽培とワイン醸造を中心に行うのは、14代目のクリスチャン・ベイエさん。彼は祖先から伝わるこうした素晴らしい畑を守るため、2007年からアイシュベルクを含む17haの自社畑で、除草剤、殺虫剤、化学肥料を排した有機無農薬農法ビオロジックを実践。豊かな自然と共存しながら、優雅でミネラル溢れる瑞々しいワインを生産しています。 クリスチャンさんは「健康でよい葡萄を育てるため、よいワインを造るため、そして次世代にエギスハイムの豊かな自然を伝えるために、たとえ手がかかってもビオロジックに取り組むことが僕の使命と考えています」と伝えています。

土壌を活性化させ 健全で活力ある葡萄を栽培

写真:リースリングの聖地ライガウで研鑽を積みワイナリーを継いだクリスチャンさん
さらに「化学肥料や農薬に頼ると、土はテニスコートのように固くなってしまいます。しかしこれらを排したビオロジック農法は、土中の微生物を活性化させて湿り気のある土を生み出します。それによって葡萄の木全体に生命力がみなぎり、健全で活力のある葡萄が実ります。重機のトラクターも土が固くなってしまうので使用せず、土は人の手で雑草とともに丁寧にすき返しを行います。低収量で完熟させた葡萄を、自然酵母で発酵させることで、優美で芳醇で骨格のしっかりとしたワインを造り上げています」と続けます。

醸造施設を刷新 より明確にテロワールを表現

写真:築400年の醸造所は、今も村に大切に残されている。(写真協力:株式会社フィラデス)
2009年には醸造所を新築し、合理的かつ実用的な設備を整えたことで、品質管理が容易になり、葡萄の個性とテロワールの特徴をより明確に伝えるワインの追求が可能となりました。この時期を節目にワインの質はさらに高まり、フランスのワイン評価雑誌「ラ・レヴュ・デュ・ヴァン・ド・フランス」ではアルザスのトップ生産者の一人として称賛されました。築400年の歴史ある醸造所は、今も村の中心に残り、エミール・ベイエのさらなる発展を見守っています。

東急フードショーのおすすめ

エミール・ベイエ・コート・デギスハイム ・トラディション 2015
(750ml) 1,728円

生産地:フランス アルザス地方 エギスハイム村
葡萄品種:ピノ・ブラン85%、ミュスカ15%
タイプ:白・辛口
輸入元:株式会社フィラデス

エギスハイムの豊かな自然と共存しながらビオロジック農法を実践するエミール・ベイエ。 手摘みで葡萄を収穫した後、空気圧式の最新プレス機で4~6時間かけて優しく圧搾。ステンレスタンクで品種ごと発酵・醸造を行った後にブレンドし、緻密に丁寧にワインは造り上げられます。より複雑な香りとフレッシュさを得るために2種類のミュスカの葡萄(ミュスカ・オットネルとミュスカ・ダルザス)を使用。すらりと引き締まったボディに、清楚な白いバラを思わせる華やかな香り。大らかでありながら、軽やかさとフレッシュな酸、豊かな果実味とミネラルが感じられ、バランスに優れたワインです。有機栽培で育てられた果実の自然な甘みが夏の疲れを癒し、魚貝、チキン、サラダ、和食やエスニックなど、料理との汎用性も高さも魅力。コストパフォーマンスにも優れ、夏の食卓で是非ともお楽しみいただきたいワインです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。