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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

豊かなミネラルとヨードの香り 媚びない真のシャブリを追求する ドメーヌ・ジャン・マルク・ブロカール シャブリ・サント・クレール 2015

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

フランスのブルゴーニュ地方北部で、唯一無二のテロワールが生む偉大な白ワインとして知られるシャブリ。清冽でミネラル豊かで引き締まった美しい酸は、新年を迎えるお正月の食卓にもふさわしい味わいです。今回は、真のキンメリジャン土壌で20年間ビオディナミを続け、妥協を許さず究極のシャブリを追求する生産者、ドメーヌ・ジャン・マルク・ブロカールのワインをご紹介しましょう。驚くほどのコストパフォーマンスの高さも魅力ですね。

ラベルには「月とアンモナイト」 ビオディナミと土壌を表現

写真:教会の周囲に広がるサント・クレールの畑。醸造所にも隣接し、収穫後、新鮮な葡萄をすぐに仕込みことができる好条件に恵まれる。
ラベルの中央に描かれているのは、ビオディナミ農法を示す“月”とキンメリジャン土壌を表現する“アンモナイト”の絵。そしてワイン名のサント・クレールは、家族経営のブロカール家がこよなく愛する畑の区画名。サント・クレール教会の周囲に広がることから名づけられました。

歴史あるワイン産地であるシャブリは、ラベルも伝統的なデザインが多いなか、こちらはユニークで個性豊か。グリーンのネックもとても爽やですね。さらにこの、月とアンモナイトが表現するように、生産者ブロカールの信念は、シャブリ特有の「真のキンメリジャン土壌」へのこだわりと「ビオディナミ農法」への追求にあるのです。

ジュラ紀に形成された 唯一無二のキンメリジャン土壌

写真:自社畑はAOCシャブリも含め全てミネラル豊かな真のキンメリジャン土壌。石灰岩やアンモナイトなどの貝類の化石を含み、葡萄樹は深く根を下ろし、この土中のミネラルを吸収。ワインもミネラル豊かで気品ある味わい。畑からは大きなアンモナイトが出土する
「本来のシャブリは1億5000万年前のジュラ紀に海の底で形成されたキンメリジャン土壌から生まれます。ところが1970年後半、AOCシャブリのワイン産地拡張に伴い、現在多くの畑を所有している大規模生産者は、ポルトランディアン土壌に葡萄を植え始めました。しかし私たちは、唯一無二のキンメリジャン土壌にこだわって畑を拡張し、昔ながらの真のシャブリを追求したのです」とブロカール家は伝えています。

その味わいは、キレのある酸と口中に広がる豊かなミネラル、海底の堆積物に由来する心地よいヨード香。そして、すっと伸びた骨格と緻密でクールビューティな気品を感じさせます。「最近のシャブリは華やかさや軽やかさを前面に出して造られることが流行していますが、私たちは口蓋の奥が引き締まるような豊かなミネラルをもつ、決して媚びない本物のシャブリを造りたい!」と強い信念を語ります。

周囲の反対と戦い シャブリ初のビオディナミに挑戦

写真:1973年に家族でドメーヌを設立した父と2代目ジュリアン(右)。80haでビオディナミを実践し、一部はデメテールの認証を得る。
ブロカール家は1973年にドメーヌを設立。わずか0.2haの畑から始まり、キンメリジャン土壌にこだわって地道に畑を広げ、現在200haの自社畑を所有しています。そのひとつが、家族がとても大切にするこのサン・クレールの畑。土壌はやはり一億5千万年以上前の堆積土で、ラベルに描かれるアンモナイトなどの貝類の化石を含んでいます。

さらにこうした土壌を守り抜くため、1988年、ブロカール家の2代目ジュリアンはシャブリで初めてビオディナミ農法に挑戦します。この農法は、農薬や除草剤や化学肥料などの薬剤を一切使用せず、全ての農作業を月の満ち欠けや惑星の動きに従い、自然と一体化して行う農法です。

しかし当時ジュリアンの父親はビオディナミ農法に猛反対します。その理由は「葡萄栽培の北限で、元々冷涼で湿度が高く雨が多いシャブリの地では、害虫やカビの発生などのリスクを伴い不可能である」と考えられてきたからです。

さわやかな生きた土の香りがする土壌 葡萄に活力と抵抗力が生まれる

写真:ビオディナミ農法を行う畑(左)と、行わない隣の畑の違い。ふかふかとした健全な土壌は香りも生きた土の香りがするが、隣の畑は除草剤の影響で土がコンクリート状になって固い。現在自社畑の80%をビオディナミに転換している
実際にビオディナミを始めた直後、雨が特に多かった年は、農薬を使用しなかったことで生産量は半分以下に。当然、売り上げも半分以下になってしまいました。「周囲からみたら僕は変人で、父が努力して築いたものを台無しにしてしまうと思っただろうね。最初は僕も不安だらけだった」とジュリアンは言います。

しかし、ビオディナミを始めて20年間。ジュリアンは除草剤や防カビ剤などの薬剤を一切使うことなく、化学肥料も排除して堆肥は天然の素材のみで自ら調剤。その調剤も大切な土地のテロワールを表現するため、すべて敷地内で作ってきました。こうした努力から、葡萄樹は病害への抵抗力が非常に強くなり、悪天候の年でも大きな影響が出ず、健康な葡萄を安定して収穫できるようになりました。

「土はやわらかで香りを嗅ぐと爽やかな生きた土の香りがします。そこから生まれるワインもシャブリらしいしっかりとしたグリップとヨード感、そして純粋で緻密な質感を備えています。このワインを飲む時、僕のこれまでの仕事は間違っていなかったと感じます」と笑顔で伝えるジュリアン。媚びない、おもねない、流行に流されない、真摯に葡萄栽培に向き合ってきたジュリアンが造るシャブリ。ミネラル豊かな旬菜や新鮮な魚貝が並ぶお正月の食卓に、ぜひお楽しみいただきたいワインです。

(写真・取材協力:テラヴェール株式会社)

東急フードショーおすすめ

シャブリ・サント・クレール 2015
(750ml) 2,268円 

生産者:ドメーヌ・ジャン・マルク・ブロカール
生産地:フランス ブルゴーニュ地方シャブリ地区 AOCシャブリ
葡萄品種:シャルドネ100%
味わい:ミネラル豊かでキレのある酸味
輸入元:テラヴェール

グランクリュでもプルミエクリュでもなく、通常のAOCシャブリは買い葡萄から造られることが多いなか、ブロカールではすべて自社畑の葡萄を使用。中でもこのサント・クレールは、グランクリュ畑と同じ、1億5000年前のキンメリジャン土壌が露出する傑出した畑から生まれたワインです。素晴らしい土壌を守るため20年間ビオディナミを実践。農薬や化学肥料を一切使わず、酵母も全て天然酵母を使用しています。AOCシャブリながら、2015年にはワインスペクテーター誌で、全世界のワインの年間トップランキングでなんと47位に選出され、コストパフォーマンスの高さも魅力です。
「私たちがシャブリに表現するのは純粋さ、ミネラル、新鮮さ」と語るように、アプリコットや純粋なミネラルや土壌由来のヨードの香り。時間がたつと柑橘系のフレッシュな果実の風味に変化し、心地よい酸と美しい余韻が感じられます。そのため、同じくミネラル豊かな生ガキ、鯛やブリのお刺身、レモンをかけた魚貝のカルパッチョなどに。さらに、昆布巻きや田作りやなます等のおせち料理ともお楽しみいただけます。
※ワインのヴィンテージと価格は、変更となる場合がありますことをご容赦願います。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。