ラベルにもワインにも優しさが溢れる ブルゴーニュ自然派生産者 ドメーヌ・オリヴィエ・メールラン マコン・ラ・ロシュ・ヴィヌーズ・ブラン2014
ラベルが語るワイン物語
CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
フランス・ブルゴーニュ地方のマコネ地区。高価なグランヴァンを生むコート・ドール地区と同じシャルドネから生まれる白ワインの銘醸地ですが、気候が穏やかで安定していることからトロピカルフルーツのような甘い香りと優しくまろやかな果実味が魅力です。今回は2000円代というコストパフォーマンスに優れた、マコネの秀逸な造り手「ドメーヌ・オリヴィエ・メールラン」のワインをご紹介しましょう。ふくよかさと凛とした気品を合わせもち、週末の食卓、大切な人へのプレゼント、女子会など大活躍のブルゴーニュワインです。
名前の由来は「ワインが湧き出る岩」
写真：美しい景色も魅力のマコネ地区ラ・ロッシュ・ヴィヌーズ村。
マコネ地区はブルゴーニュ地方の最南端。ヌーヴォーでもおなじみのボージョレ地区に隣接する白ワインの銘醸地です。幾重にも続く丘陵に、30の小さな村々が点在。白亜の教会や中世の面影を残す町並みが美しい観光地としても愛されています。さらに、ブレス産チキンやシャロレ牛、シェーブルチーズなどグルメの宝庫としても知られています。
今回ご紹介するワインのラベルに描かれた文字は「Macon La Roche Vineuse Blancマコン・ラ・ロシュ・ヴィヌーズ・ブラン」。“ワインが湧き出る岩”を意味するラ・ロッシュ・ヴィヌーズ村から生まれる白ワイン。その名の通り、この村はマコネ地区の中でも、特に秀逸でミネラル豊かなワインを生みだす“白亜の石灰岩”を多く含む土壌なのです。
夫婦二人で力を合わせ 妥協のない葡萄栽培とワイン造り
写真：いつも仲良しのメールランご夫婦。ワイン造りの実力と暖かい人柄を慕って大手ドメーヌの後継者も修行に来る。
生産者のオリヴィエ・メールランさんは、1987年にこの村のテロワールにほれ込みワイナリーと畑を購入。以来夫婦二人で力を合わせて、素晴らしい土壌と自然環境を守るべく、化学肥料や除草剤を一切使わないビオロジックの有機栽培に励んできました。
彼の畑はラ・ロシュ・ヴィヌーズ村の中でも最良の場所にあります。丘の中腹の標高200～300m。高い標高によって昼夜の寒暖の差が大きく、美しい酸と豊かな果実味を備えたワインが生まれます。また、差し込む陽ざしの角度が絶妙な丘の斜面にあるため、糖度の高い高品質な葡萄を収穫できます。さらに斜面の畑は、暑い夏でも乾燥して風通しがとてもよいことから、害虫が付きにくく殺虫剤を散布する必要がないのです。
すべて手摘みで熟度の高い健康な葡萄を収穫
写真：“ワインが湧き出る岩”を命名する白亜の石灰岩を含む畑
さて、マコネ地区は機械収穫が約90％も占める中、メールランさんは全て丁寧に手摘みで収穫を行います。その際、「よく完熟して真に健全な葡萄だけを選び、さらに、実を傷つけないために小さな箱に入れて収穫します。ワイナリーに運んだ後もさらに葡萄を選果し厳選しています」と伝えます。そして葡萄のフレッシュさを保つため、素早く醗酵タンクに入れ、酵母も自然酵母を使って醸造します。
素晴らしい土壌を守り、真に健康な葡萄栽培を目指し、その葡萄を最大限に生かすため日々努力と工夫を重ねてきたメールランさん。その熱意と信念から生まれたワインは評判を呼び、非常に高い評価を得ています。フランスのいくつもの3ツ星レストランで取り扱われ、ル・クラスマンでも星を獲得しています。
コシュデリ、コントラフォンが敬う実力と人柄 ラベルにも深い愛情が
写真：大手ドメーヌの後継者も修行にくる醸造所。入り口にはラベルと同じ流れの星のロゴが。
家族経営の小さなドメーヌですが、ブルゴーニュの伝統ある大御所ワイナリーも一目を置き、その実力とともに温かく誠実な人柄でも知られています。彼を慕い尊敬するドメーヌ・コシュデリのフランソワ・コシュデリは、長男をメールランさんの元に修業に行かせ、ドメーヌ・コント・ラフォンもマコンに畑を購入する際に、助言と指導を求めたといわれます。
さて、最後にこのワインのラベルをもう一度ご覧ください。ラベルをデザインしたのは、奥様のコリーヌさん。「ラベルの右下に薄く浮かび上がるのは、花でも雪でもなく“流れ星”です。そして四角いロゴの中にあるMerlinの文字にも、"i"の上部分に重なるように「流れ星」を描きました。流れ星は幸運や幸福の象徴。それをラベルに描くことで、私たちがワイン造りから感じるファンタスティックで幸せな気持ちを皆さんに伝えたかったのです」といいます。
そのワインも「everyday drink」と語るように、毎日飲みたくなる柔らかい口当たりと、しっとりと体に染み込むようなピュアな果実味が魅力。ラベルと同様にその味わいにも、生産者の包み込むような優しさが溢れています。
（写真協力：株式会社ｎａｋａｔｏ）
東急フードショーのおすすめ
マコン・ラ・ロシュ・ヴィヌーズ・ブラン2014
(750ml) 2,376円
生産者：ドメーヌ・オリヴィエ・メールラン
生産地：フランス・ブルゴーニュ・マコネ地区
葡萄品種：シャルドネ100％
味わい：白・辛口・柔らかい果実味とフレッシュな酸
輸入元：株式会社ｎａｋａｔｏ
近年天候不順や土地の高騰でワインの価格が高騰しているブルゴーニュ地方。しかしその中でも南部のマコネ地区は温暖で気候が安定し、土壌にも恵まれコストパフォーマンスの高さからブルゴーニュでは注目の産地です。マコネ地区の傑出した生産者ドメーヌ・オリヴィエ・メールランは、最良のテロワールのひとつラ・ロシュ・ヴィヌーズ村に畑を所有。有機農法から生まれるワインは、黄桃、カリン、オレンジの花、金木犀などの優しいアロマ、フレッシュな酸と凝縮した果実味。果実の甘みやまろやかさとともに、ミネラル感と凛とした気品も兼ね備え、料理との汎用性の高さも魅力。カルパッチョ、エビやカキなど甲殻類のグラタン、クリーム系パスタやシチュー、チキン料理の他、生ガキ、天ぷら、豆乳鍋、ゴマだれのしゃぶしゃぶなどの和食にも。週末の食卓や女子会に、また大切な人への贈り物にもふさわしい気品ある美味しさです。
伴 良美（ばん・よしみ）
ライター＆ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。