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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ブルゴーニュから新天地リムーへ 泡立ち優しい南仏ラングドックのクレマン シャトー・アントニャック クロズリー・デ・リ・クレマン・ド・リムー

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

百合の花咲くシャトーが生む 清らかな気品

写真:南仏のシャルドネとピノ・ノワールの聖地として注目されるリムー。風通しの良い温暖な地中海性気候で豊かな自然が広がる。

ワイン名の「クロズリー・デ・リ」とは、フランス語で“百合の花咲く小さな庭”という意味。その名前の通り、ラベルにはワイナリーの庭に咲き誇る、美しい百合の花々が生き生きと描かれています。このボトルをテーブルに置くだけで、まるで花束が添えられたような華やかな雰囲気になりますね。みんなが集まるパーティでは可愛いラベルがきっと話題に。そして大切な人への特別な贈り物にもふさわしい、この夏おすすめの1本です。

百合には「純潔、無垢」などの花言葉がありますが、ワインの味わいもまさにピュアでフレッシュ。香りも百合の花を思わせるような清らかで気品ある芳香。そして何よりも泡立ちが非常にクリーミィできめ細やかなのです。

さらにラベルの中央には「クレマン・ド・リムー」の文字が。このワインは、南仏のラングドック地方 “リムー” で、シャルドネやピノ・ノワールから造る発泡性ワインの “クレマン” 。実はリムーは、南仏におけるシャルドネとピノ・ノワールの聖地として注目を集める銘醸地。ブルゴーニュのコート・ドールにも匹敵する素晴らしいテロワールを備えながら、ワインの価格は2000円から3000円代という非常に優れたコストパフォーマンス。今ぜひ知っていただきたいワイン産地です。

新天地を求め南仏リムーに ブルゴーニュに酷似した気候と土壌

写真:ブルゴーニュの出身のジャンとクリスチャン。二人の奥様は仲よしの姉妹。一族が力を合わせてワイン造りを行う。

実はこのワインの生産者はブルゴーニュ出身。ブルゴーニュのマコネ地区で何世代にも渡って葡萄栽培に励み、1986年にワイナリーを設立した名門です。故郷でワイン造りに情熱を注ぐ一方で、ブルゴーニュ以外にもシャルドネとピノ・ノワールの可能性を模索し続け、たどり着いた新天地が南仏のリムー。1997年にシャトー・アントニャックを購入します。

このシャトーの畑があるのは、リムーの中でもブルゴーニュの気候風土に非常によく似た、素晴らしいテロワールをもつオート・ヴィレ地区。ユネスコ世界文化遺産でも有名なカルカッソンヌ城近郊にあります。そこは海抜400mの高い標高にあり、地中海から吹く涼風に恵まれ真夏でも気候が爽やか。さらに、ブルゴーニュと同じ白亜の石灰質土壌で、1970年代に植樹されたシャルドネとピノ・ノワールの古樹も現存するこの上ない好環境にありました。

栽培は限りなくビオロジック 醸造は最新の醸造設備を完備

写真:発酵タンクと樽熟成庫。ピュアな果実味を生かすために、徹底した温度管理を行う。

当主のジャン・リュックとクリスチャンは、シャトーと畑を購入後、さらにワイン造りの環境を整えてゆきます。醸造においては葡萄のフレッシュさを保つために、気温の低い早朝に収穫を行い、自然酵母で発酵。発酵温度もピュアな果実味を生かすために、徹底した温度管理のもと20℃以下にコントロールしていきます。

栽培においては、彼らの出身地マコネからもたらされたクローンを保護。周囲の自然を守りながら、限りなく化学肥料や農薬を抑えたビオロジック栽培を実践してゆきます。また葡萄のクオリティを確かなものにするため、新たに植樹する苗木は他から購入せず、自社の苗木場で培養したものを丁寧に植えてゆきました。

環境を守り 美しい自然をワインに封じ込めたい

写真:地道に努力を重ね、念願の初収穫は2000年。

こうした数々の努力が実り、初ヴィンテージ2000年はフランスで著名な評価誌のひとつである、ベタンヌ・エ・ドゥソーヴは「極上のシャルドネ」と絶賛。またワイン・アドヴォケイト誌においても「並外れた成功作」と高く評価されました。

その一方でシャトー・アントニャックでは、現在も謙虚な姿勢を崩しません。「私たちはリムーの豊かな自然から様々なことを学び、この地に最適な手法を研究してきました。これからも、努力を重ねて環境を守り続け、この美しい自然を感じていただけるようなワインを造っていきたいです」と伝えています。

百合の花が咲くシャトーから生まれる、シャルドネを主体とした瑞々しく気品あるクレマン・ド・リムー。ちなみに百合は収穫の時期を教えてくれる花であるため、シャトーの庭に植えられているそうです。美しい自然と共存しながらワイン造りを行う、シャトー・アントニャックの高貴な志を象徴しているかのようですね。
(写真協力:フィラディス)

東急フードショーおすすめ

クロズリー・デ・リ・クレマン・ド・リムー
(750ml) 2,484円

生産者:シャトー・アントニャック
生産国:フランス・ラングドック地方リムー地区
葡萄品種:シャルドネ60%、シュナン・ブラン30%、ピノ・ノワール5%、モーザック5%
味わい:フレッシュで柔かな発泡性・辛口・白
輸入元:フィラディス

クロズデリー・デ・リ=百合の花咲く小さな庭の意味をもつ、クレマン・ド・リムーの発泡性ワイン。実はリムーは「世界最古の発泡性ワイン」の歴史をもち、ドン・ペリニヨンがシャンパーニュを発明した17世紀よりも1世紀も前に、発泡性ワインを生み出した伝統をもちAOCにも認定されています。フローラルな豊かなアロマ、きめ細やかでクリーミィな泡立ち、フレッシュで生き生きとした酸。エチケットの百合のようにピュアで清らかな味わいです。暑い夏にピッタリのワインは、夏野菜や魚介類との相性も抜群。ピッツァやラタトゥーユ、魚介のカルパッチョやサラダに。ワインのフレッシュな酸は、レモンをぎゅっと絞ったフライやフリットとも好相性です。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。