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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

火山岩土壌の豊かなミネラル感 これぞ真のソアーヴェ!ジーニ・ソアーヴェ・クラッシコ2016

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

ラベルにはソアーヴェ城 ジーニの伝統と実力の象徴

写真:ソアーヴェ城の周囲に広がる伝統あるクラシコの畑。城内では毎年春と秋にワイン祭りが華やかに開催される。
イタリアの白ワインの代名詞ともいえる「ソアーヴェ」。今月はソアーヴェの3大生産者のひとり、これぞ真のソアーヴェと誉れ高い「ジーニ」のワインをご紹介しましょう。

白いラベルに描かれたワイン名は「SOAVE CLASSICOソアーヴェ・クラシコ」。爽やかにスッと引かれた線上には、金の文字で「Gini」の生産者名。そしてラベル中央には、偉大な生産地と歴史を象徴する「ソアーヴェ城」が描かれています。シンプルですが、ワインの気品と造り手の清廉さを映し出すような、優美なラベルデザインです。

ソアーヴェは、『ロミオとジュリエット』の舞台で有名なヴェローナから車で約40分。葡萄畑は、中世の教会や古城が残る緑豊かな丘陵と平野に広がります。2000年以上も前のローマ帝国時代から栽培されてきた、ガルガーネガの白葡萄品種が主体。「気持ちいい!」が名前の語源であるともいわれ、フレッシュな果実味と美しい酸が魅力です。

古い歴史・丘陵地・火山性土壌 一線を画すクラシコ地区 樹齢100年以上「サルヴァレンツァ」はトップクリュ

写真 上:高い丘に黒色の火山性土壌に広がるクリュ畑。地下深くには写真のような石灰岩が通り、100年以上の古木が根を深く張りミネラルを吸収する。
写真 下:ソアーヴェ城に雰囲気が似ているジーニのワイナリー。重力で果汁を移動。
ソアーヴェの中でも「クラシコ地区」のワインは、ソアーヴェ城の周囲で古くから葡萄栽培を行ってきた歴史ある村々から生まれます。畑の多くは“火山性土壌の丘陵地”に広がり、一般的に親しまれている堆積土壌で平野部のソアーヴェとは一線を画しています。つまり「丘陵地、歴史地区、火山性土壌」の優位な条件から、より華やかで凝縮感と深みがあり、豊かなミネラルが特徴です。

言わずもがな「ジーニ」も、まさにこのソアーヴェ・クラシコのトップ生産者。ジーニ家は今から300年も前から葡萄栽培を行ってきた伝統があります。6代目で現当主のサンドロ・ジーニさんは「真のソアーヴェはフルーティでもなく軽くもない。火山岩由来のしっかりとした骨格と鉱物感をもっています」と明言します。その信念から、クラッシコ地区の47のクリュの中でも、黒色の火山岩土壌の5つのクリュに葡萄畑を所有しています。

さらにジーニで特筆すべきは自社畑の葡萄の樹齢の高さです。中でもサルヴァレンツァのクリュは平均樹齢が100年以上。フィロキセラに侵されていない、樹齢160年の自根の葡萄樹も大切に保護しています。こうした古木は葡萄の収量が通常のソアーヴェ・クラシコの半分以下となってしまいますが、量よりも質。ジーニの古木から生まれるワインは、偉大なクリュの個性をみごとに表現し、非常に気品があり優美。深い果実のアロマと、豊かなミネラルを湛える素晴らしいワインとなります。

化学肥料・除草剤・酸化防止剤を排し 自然環境を守り続ける

写真 上:畑に自生する菜の花やハーブが窒素を取り込み、葡萄の根に栄養を与える自然農法。
写真 下:葡萄が押しつぶされないよう、浅い箱に丁寧に並べて収穫する。
サンドロさんは、「歴史ある畑を守り抜き、次世代につなげるために、私達は化学肥料や除草剤を使わずに葡萄栽培を行ってきました。また、1985年からは酸化防止剤も添加せずに醸造を行っています。畑の畝には空気中の窒素取り込んで畑の栄養にする、菜の花やハーブや豆科の植物を植え、それが天然の肥料となっています」と笑顔で伝えます。

また自然農法を行うジーニの畑には、害虫を駆除してくれるテントウムシや、受粉を促すミツバチなどが集まり、さまざまな生物によって自然の生態系を生みだしています。「私が化学的な物質を使用しないのは、葡萄にも人間に良くないことはもちろんですが、生物多様性を重んじて自然環境を守っていくためなのです」と伝えています。

ソアーヴェの更なる飛躍を目指し 保護協会会長に就任

写真:今年5月にソアーヴェ・ワイン保護協会会長に就任したサンドロ・ジーニさん。実力とともに温かい人柄でも知られる。
このようにソアーヴェの歴史を脈々と受け継ぎ、生産地全体の未来を想い、時に革新的にワイン造りを行ってきたジーニ家。こうした信頼と実績から当主サンドロさんは今年5月、ソアーヴェ・ワイン保護協会の新会長に任命されました。同協会は、クラシコ地区だけでなく、ソアーヴェ全体の70000㏊の畑、2800軒の葡萄農家、370軒のワイナリーを保護してさらなる発展を目指します。

奇しくもその就任式場は、ジーニ家が1980年からラベルに描いてきた「ソアーヴェ城」。城内で記者会見が行われ、「ソアーヴェの生産者が活発に忌憚なく意見を交わし合い、より強く団結していくよう私が中心になって頑張っていきます。そしてソアーヴェの魅力をよりたくさんの人に伝えていきたい」と力強く新任の抱負を語りました。

(写真提供:テラヴェール、伴良美)

東急フードショーおすすめ

ジーニ・ソアーヴェ・クラシコ2016
(750ml) 2,700円

生産者:ジーニ
生産地:イタリア・ヴェネト地方 ソアーヴェ・クラシコ DOC
味わい:白・ドライ・フレッシュな酸とミネラル
輸入元:テラヴェール

ソアーヴェ・クラシコの王ともいえる風格と実力を誇るジーニ。中でもこのワインは手軽な価格帯で楽しめるベーシックラインでありながら、平均樹齢60年以上の葡萄から造るスーパー・スタンダード・ワイン。クラシコ地区の中でも真のソアーヴェを生むと考える火山岩土壌のクリュ「フロスカ、モンテグランデ、サルヴァレンツァ、ヴァルデアックア」の厳選葡萄をブレンドしています。
化学的肥料や除草剤を排し、多様な生物が自然の生態系を造る自然農法を実践。古木由来の凝縮した果実感、暑い夏を癒す美しい酸と鉱物的な豊かなミネラル。過度な派手さはありませんが、実に優美で上品な調和が感じられ、飲むごとにその飲み心地の良さに驚かされます。魚介料理全般、寿司や刺身などの和食、豚やチキンなどの白身肉、ハーブを使ったエスニック料理とも好相性。この夏ぜひお楽しみいただきたい一本です。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。