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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

博士の愛鳥 きいろを描き 甲州ブドウを世界に躍進させた シャトー・メルシャン 甲州きいろ香 2016

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

2005年発売後 わずか2カ月で完売。世界に羽ばたいた甲州ワイン

写真:「香りがなく平坦」といわれてきた甲州葡萄。しかし2005年、柑橘系の豊かな香りが引き出されセンセーショナルな発見となった。
今月はシャトー・メルシャンが誇る「甲州きいろ香」をご紹介しましょう。このワインはシャトー・メルシャンが日本固有の甲州葡萄から、初めて柑橘系のさわやかな香りを引き出し、日本ワインに新たな希望と光をもたらしました。初リリースは2005年の春。発売後、わずか2カ月で完売、イギリスのワインガイドでも非常に高い評価を獲得し注目を集めました。

ワイン名の「きいろ」とは、ワイン誕生に貢献された富永博士の愛鳥の名前。そのラベルには、甲州葡萄のかたわらで愛らしく舞う姿が描かれています。この鳥はメーテル・リンクの童話に登場する「幸せの青い鳥」と同種類のメザンジュ・ブルー(青シジュウカラ)。遠い異国の地で富永博士の研究の支えとなったのは、大切にしていた愛鳥「きいろ」でした。ボルドー大学の庭で偶然に出会ったこの鳥は、初めは黄色でしたが、やがて成長し羽がブルーに生え変わり、幸福をもたらす青い鳥となりました。そして日本の甲州ワインが躍進し世界に羽ばたいた幸福の象徴ともいえるのです。

きいろ香誕生の秘話。博士の研究を支えた小鳥。

写真 左:きいろ香誕生にあたり醸造指導を行い、ワインの香りの世界的権威であるボルドー大学博士の故・富永博士。
写真 右:ラベルにも描かれた、愛鳥のきいろが研究の支えに。

甲州葡萄は、1300年も前から栽培されてきた日本固有の葡萄品種。長い間、主に生食用として親しまれてきましたが、ワインにすると「香りが乏しく個性がなく平凡」と評価され、日本の畑から姿を消そうとしていました。甲州葡萄の畑を手放す農家も増え、一時は絶滅してしまうかもしれない危機的状況に立たされたのです。

そうした状況をなんとかしたいと立ち上がったのが、山梨県勝沼町のメルシャンを中心とするワイナリーと葡萄農家の人々。甲州葡萄の個性を引き出す研究チームを結成し、「甲州葡萄を世界へ!」を合言葉に改良に乗り出しました。

ある日、甲州葡萄の新しい魅力を研究していたメルシャンの研究員・小林弘憲さんは、甲州ワインの発酵試験中に、ひとつだけかつてない香りを放つワインを見つけ出します。それは、フランスのボルドー地方で多く栽培されているソーヴィニヨン・ブランの香りにも似た「柑橘系のフレッシュな芳香」。その偶然の発見にメルシャンの研究チームは色めき立ちます。

すぐさま、ボルドー大学で香りの研究に取り組む富永敬俊博士に分析を依頼。小林研究員もこの香りの研究のためにフランスに旅立ちます。富永博士とともに、来る日も来る日も香りの解析作業を行ううちに、それがチオール化合物という、まさにソーヴィニヨン・ブランの特徴香を担う物質であることをつき止めたのです。それは甲州ワインの新たな舞台の幕が上がった瞬間でした。

地元葡萄農家と力を合わせ 柑橘系のアロマを導く

写真 上:現在も、的確なタイミングで収穫するため、メルシャン従業員は葡萄農家と一緒に作業をしている。
写真 下:きいろ香はサラダやアペリティフにもピッタリ。(ワイナリーのカフェ料理:ランチプレート)

さらに、シャトー・メルシャンでは、栽培においても研究を重ねます。その結果、柑橘系のフレッシュな香りをよりワインにもたらすためには、甲州葡萄の収穫期を通常より早めること。また、涼しい早朝に収穫してすぐにワイナリーに運び、醸造までを速やかに行うことが重要であるとつき止めます。そこでメルシャンは、甲府市玉諸地区の葡萄農家に協力を願い、ついに2005年「甲州きいろ香」が誕生します。そのラベルには博士への敬意を表し、きいろの愛鳥の姿が描かれました。

発売から13年。その間「きいろ香」はさらに改良を重ね、日本が世界に誇る甲州ワインに躍進しました。今回東急フードショーがお勧めする2016年ヴィンテージは、ワインの国際コンクールであるデカンター・ワールド・ワイン・アワード銀賞。さらにインターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)銀賞をみごと受賞しています。

きいろ香は、寿司や刺身や天ぷら、懐石料理などの高級和食だけでなく、日本の家庭料理、魚介のカルパッチョやフリットなどのイタリアン、サラダやサーモンなどのアペリティフにもよく合います。ラベルに羽ばたく愛らしいきいろを眺めながら、繊細な風味とピュアな果実味、そしてライムやグレープ・フルーツのような爽やかな香りをお楽しみくださいね 。

シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリー ワインツーリズムも楽しもう

写真:試飲付きのワイナリーツアーが楽しめ(要予約)、瀟洒なワインショップやカフェも併設する。
日本ワインの躍進に伴い、日本でも生産者の熱意を間近で感じることができるワインツーリズムが人気です。中でも山梨県勝沼町のシャトー・メルシャンでは日本ワインの素晴らしさを知り尽くした専門家「メルシャンおもてなしガイド(MOG)」が、ワイナリーを案内。温かく丁寧にワインの醸造や葡萄の栽培を説明し、テイスティング法やその楽しさも伝えてくれます。資料館、レストラン、ワインショップも併設され、葡萄畑を眺めながらゆったりとした時間を過ごすことができます。新酒も生まれる秋、ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

シャトー・メルシャン ワインツーリズム情報
http://chateaumercian.com/
(写真・資料協力:シャトー・メルシャン)

東急フードショーおすすめ

シャトー・メルシャンは1877年に、山梨県勝沼町に設立された、日本初の民間ワイン醸造会社の系譜を継ぐワイナリーです。同じ年、本格ワイン造りを目指し、高野正誠と土屋龍憲の二人の青年がフランスに派遣され、葡萄栽培とワイン醸造を学びました。その後、今日まで、葡萄農家を応援し、共に協力し合って、140年以上もの間日本ワインを牽引。日本ならではの「フィネスとエレガンス」を表現してきたパイオニアブランドです。

日本ワインを応援する東急フードショーでは、この秋、シャトー・メルシャンのワイン3アイテムを販売しています。国内外のコンクールで高い評価を獲得したヴィンテージを揃えておりますので、ぜひお楽しみください。


シャトー・メルシャン 甲州きいろ香2016
(750ml) 2,700円 [写真 左]

生産地:日本・山梨
葡萄品種:甲州100%
味わい:白・辛口 なめらかで生き生きとした酸とフレッシュな味わい
受賞歴:2018年デカンター・ワールド・ワイン・アワード 銀賞
2018年インターナショナル・ワイン&スピリッツ・コンペティション(IWSC)銀賞

日本固有の葡萄品種「甲州」の隠れた香りのポテンシャルを引き出そうと、ワインの香りの世界的権威であるボルドー大学と共同研究して生まれた、新スタイルの甲州ワイン。グレープフルーツ、ライムなどのフレッシュで美しい柑橘系の香り。ヴィンテージ2016年は恵まれた気候を反映し、豊かな香りに加え、フレッシュな酸とミネラル感がより感じられます。
料理との相性:白身魚の刺身、揚げ出し豆腐、魚介のカルパッチョ、天ぷらや魚介のフライなど。柑橘系の芳りに合わせて、料理にもレモンやスダチやユズなどの柑橘類をサッとかけていただくとより好相性に。


シャトー・メルシャン 穂坂マスカット・ベーリーA2014
(750ml) 3,262円 [写真 中]

生産地:日本・山梨県韮崎市穂坂地区
葡萄品種:マスカット・ベーリーA100%
味わい:赤・辛口・フルボディ
受賞歴:2018年日本ワインコンクール 金賞

日本が世界に誇る黒葡萄国有品種「マスカット・ベーリーA」。中でも山梨県の穂坂地区は標高が高く昼夜の寒暖差が大きいため、熟度が高く酸がしっかりとした傑出したマスカット・ベーリーAが生まれます。上品な赤紫の色調に、チェリー、イチゴのようなチャーミングな赤い果実香。さらに、時間をかけてオーク樽でワインを育成することで、果実の凝縮感とフレッシュな酸、凛とした気品を合わせもちます。
料理との相性:焼き鳥(タレ)、鶏の照り焼き、カツオのたたき、ミートソースのパスタ、鰻の蒲焼、肉じゃがなど。


シャトー・メルシャン 新鶴シャルドネ2016
(750ml) 3,510円 [写真 右]

生産地:福島県会津美里町新鶴地区
葡萄品種:シャルドネ100%
味わい:辛口・白 美しい酸とふくよかな風味
受賞歴:2018年日本ワインコンクール 金賞

日本にも素晴らしいシャルドネが生まれています。福島県の新鶴地区のシャルドネは繊細で豊かなフィネスとエレガンスを表現した、まさに日本人の琴線に響く素晴らしいワイン。収穫量を抑えて、独自の雨よけ施設を設けることで、収穫前の葡萄を適切に成熟させてワインの質を大幅に向上させています。若々しい酸、パイナップルや南国のフルーツの芳香、樽発酵・育成に由来するアーモンドやナッツの香りも感じられます。ふくよかでこの上なくエレガントな日本のシャルドネをぜひお楽しみください。
料理との相性:白身魚のムニエル、チキンのクリーム煮、ホワイトソースのパスタ、海老フライのタルタルソース添え、しゃぶしゃぶなど。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。