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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ブルゴーニュへの憧憬から ロエロを赤ワインの銘醸地に変えた先駆者 マッテオ・コレッジァ・ロエロ・ロッソ2016

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

イタリア・ピエモンテ州の2大赤ワインの銘醸地といえばバローロとバルバレスコ。さらに近年、それに次ぐ勢いで注目されているのが、「ロエロ」の赤ワイン「ロエロ・ロッソ」です。深まり行く秋に向けて、瑞々しさとエレガンスを合わせもち、コストパフォーマンスにも優れる、ロエロの偉大なる生産者マッテオ・コレッジァのワインをご紹介しましょう。

太陽が豊かな南向き斜面の銘醸地 ロエロ

写真:ブルゴーニュと同じ白い石灰質土壌で陽光豊かなロエロの葡萄畑。
ロエロは白トリュフやゴルゴンゾーラチーズの美食の地としても知られる、ピエモンテ州南部にあるワイン産地。葡萄畑はワインのラベルに描かれているイラストのように小高い丘が幾重にも続き、太陽が豊かに照らす南斜面に広がっています。

元々ロエロはアルネイスという白葡萄から造る白ワインの銘醸地で、30年前までは赤ワインは全く造られていませんでした。その理由には、土壌が黒葡萄の栽培に適さず、バローロやバルバレスコに比べると、軽くて薄い味わいの赤ワインしか生まれないと信じられていたからなのです。

しかし、このワインの生産者マッテオ・コレッジァは、高い栽培・醸造技術とその情熱によって、30年前にロエロで初めて黒葡萄を植えて赤ワインを醸造。バローロ、バルバレスコに負けない赤ワインの銘醸地に押し上げたのです。

ブルゴーニュとよく似た気候土壌 ロエロでも素晴らしい赤ワインが生まれると信じて!

写真:高いポテンシャルを信じてロエロを赤ワインの銘醸地に押し上げた、情熱の人マッテオ・コッレジァ。
ではマッテオが赤ワイン造りに情熱を傾けたきっかけは何だったのでしょうか。
それは1976年、若きマッテオはフランスのブルゴーニュ地方に研修に行き、現地で素晴らしいブルゴーニュワインを口にしたことがきっかけでした。

「ブルゴーニュワインにおいて最も感嘆したことは、軽やかさと複雑さを合わせもっていること。さらにブルゴーニュ地方はロエロと同じ石灰岩を多く含む土壌で、霧が多い気候も似ているという共通点が多い。きっとロエロでもブルゴーニュのような素晴らしいワインができるに違いない!」と確信したのです。

いまだかつてない収量制限と高密植で 凝縮感のある上質な葡萄栽培を実現

写真:ロエロが誇るネッビオーロの葡萄。マッテオは上質な赤ワイン造りのために、糖度の高い葡萄の上部2/3のみ使い、残りはあえて切り捨てている。
一方でマッテオは、ロエロで素晴らしい赤ワインを造るためには、栽培方法をもっと工夫して素晴らしい黒葡萄を育てることが大切だと痛感していました。そのためには当時は誰も知らなかった「収量制限」と1㏊当たり5000本の「密植」を行い、凝縮感のある上質な葡萄を栽培することに力を注ぎます。

さらに当時としては驚くことに、「収穫時にせっかく育てた葡萄の房の下部3分の1を切り捨てる」ことを行いました。それはなぜでしょうか。 「葡萄の房の先端部分は糖度が低く酸度が高く水分量も多いので、糖度が高く凝縮した上部3分の2のみを使っているのです」と当時マッテオさんは伝えております。

不慮の事故で急逝 その遺志はファミリーに受け継がれ 世界的銘醸地に

写真:マッテオの死を乗り越え、夫人と子息がワイナリーを立派に受け継いでいる。
マッテオ氏のこうしたさまざまな工夫と地道な努力によって、ロエロはネッビオーロやバルベーラの黒葡萄から生まれる、赤ワインの銘醸地としても世界に知られるようになりました。

2006年、マッテオは不幸にも開墾作業中のトラクターの事故で亡くなってしまいます。しかし、その意志はオルネッラ夫人と息子ジョヴァンニにしっかりと受け継がれ、世界に知られる素晴らしいワインを生み出しています。

それはまさにマッテオがブルゴーニュで感嘆した、複雑性としなやかさを合わせ持った繊細にして美しい果実感に溢れた味わい。そしてワインのラベルにはマッテオが最も愛した丘の畑マルンに、太陽が豊かに降り注いでいる様子が描かれました。素朴でシンプルなデザインながら、ロエロの土地を信じ続けた深い愛情と信念が感じられます。

東急フードショーのおすすめ

マッテオ・コレッジァ・ロエロ・ロッソ2016
(750ml) 2,750円

生産者:マッテオ・コッレジァ
生産地:イタリア・ピエモンテ州 D.O.C.Gロエロ
葡萄品種:ネッビオーロ100%
味わい:赤・辛口・透明感のある華やかな果実味

白ワインの産地として有名だったロエロを、高品質赤ワインの銘醸地に押し上げた先駆者、マッテオ・コレッジァ。このワインは、ロエロのパオイニアが造るスタンダードクラスのコストパフォーマンスに優れた逸品です。複数の区画を絶妙にブレンドしたワインは、透明感のある華やかな果実味とみずみずしい酸が口いっぱいに広がります。タンニンも細やかで、余韻も美しくバランスに優れた味わい。同じネッビオーロから造る、バローロやバルバレスコとはまた異なる、繊細で可憐な魅力に溢れています。生ハムやサラミ、トマトソースのパスタ、ピッツァ、カポナータなどのイタリアン。チキンや豚肉のトマト煮込み、さらに栗やキノコを使った秋の料理にもお勧めです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。