令和天皇即位の宴に饗された ロイヤル・ブルーのシャンパーニュ ポメリー・ブリュット・ロワイヤル
ラベルが語るワイン物語
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
イベントを華やかに彩り、祝福の席に欠かせないシャンパーニュ。今回は令和天皇即位の饗宴の義でも饗された、シャンパーニュ・ポメリーの魅力と知られざる物語をお伝えしましょう。まさにシャンパーニュの王道たる風格と伝統をもつメゾン。その歴史と発展を支えたのは、生誕250年となる偉大な未亡人マダム・ポメリーでした。
純粋さと気品を表現した ロイヤル・ブルーのラベル
写真：ポメリーはシャンパーニュ地方の中心ランスに1836年に設立された由緒あるメゾン
ポメリーはシャンパーニュの中では大変ポピュラーで人気高く、ワイン愛好家なら誰もが知るメゾンですね。多彩な味わいのシャンパーニュを生み出していますが、今回ご紹介するのは「ポメリー・ブリュット・ロワイヤル」。ポメリーの気品あるスタイルを最も象徴しており、そのラベルはポメリーのブランド・カラーである鮮やかな「ロイヤル・ブルー」で彩られています。
ブルーはヨーロッパでは、貴重で高貴な色とされ、愛と幸福を象徴する色。そのため皇室や王室では、公式な場面ではブルーの洋服や装飾品を身に着けます。例えば故ダイアナ妃の婚約指輪はブルー・サファイア。さらにウィリアム王子の婚約会見では、婚約者キャサリンはロイヤル・ブルーのドレスに身を包みました。またフランスでも国旗の青は博愛を意味する色。こうした伝統からポメリーのラベルの青も、シャンパーニュに求めた純粋さと気品の高さを象徴しているといわれます。
シャンパーニュを甘口から辛口に変革した マダム・ポメリーの功績
写真：史上初の辛口シャンパーニュを造り出し、地域活性化に貢献したマダム・ポメリー。
ポメリーは1836年にシャンパーニュの中心地であるランスに創業されました。1856年にはルイ・アレクサンドロ・ポメリーが社長に就任しますが、不幸にもルイは2年後に亡くなってしまいます。そのビジネスを引き継いだのが、未亡人のマダム・ポメリーでした。彼女は卓越した感性とビジネスセンスの持ち主で、当時は甘口しかなかったシャンパーニュを改革。史上初となる辛口のシャンパーニュ「ブリュット・ナチュール」を誕生させたのです。
甘さでごまかさないピュアな果実感とミネラル感をストレートに表現した「ブリュット・ナチュール」。その出現によって、英国王室におけるシャンパーニュの消費量は3倍にも伸び、19世紀末にはヨーロッパ全土で愛飲されるようになりました。マダム・ポメリーは、現在主流となっている辛口シャンパーニュのスタイルを確立した先駆者であり、その源流が今回おすすめする「ポメリー・ブリュット・ロワイヤル」なのです。
ユネスコ世界遺産認定の地下セラーを造設 飛躍的な質の向上に貢献
写真：世界遺産にも認定されるポメリーの地下セラー
さらにマダムは、地下にセラーを造設してシャンパーニュの保管・熟成に関する研究を行い、飛躍的な質の向上に努めた偉大な人物です。当時シャンパーニュ地方には、ローマ時代の石灰岩の採掘場が多く残っていました。マダムはそこがシャンパーニュの貯蔵・熟成に理想的な環境であることに着目。その採掘場跡をセラーとして活用したのです。
全長18km、深さ30m、広大なポメリーのセラーは、年間を通して10℃を一定に保つ好環境。その中で現在も2900万本のシャンパーニュが長期熟成され、この上なく繊細な泡立ちと気品ある風味を醸し出しています。こうした自然環境と人間の英知で造られたポメリーのセラーは、2015年にはユネスコ世界文化遺産の認定を果たしました。
男尊女卑の時代にも負けず 気高く志高く
写真：高貴なロイヤル・ブルーがイメージカラー。一方香りはランなどの白い花のような芳香が特徴。
38歳で事業を引き継いだマダム・ポメリーでしたが、当時のフランスは男尊女卑で女性がビジネスを行うことなど考えられなかった時代でした。そうした環境にも負けず、知恵と勇気で、シャンパーニュ地方を活性化させ新たなビジョンを開拓していったのです。
ラベルの鮮やかなブルーは、まさに彼女の高貴で誇り高い姿勢を象徴しているかのよう。その香りも胡蝶蘭やユリの花のような気高さを感じさせます。ラベルを愛で香りを楽しみながら、お正月や新年のイベントに、ぜひお楽しみいただきたいシャンパーニュです。
東急フードショーのおすすめ
ポメリー・ブリュット・ロワイヤル
(750ml) 7,480円
生産地：フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種：シャルドネ34、ピノ・ノワール33、ピノ・ムニエ33％
味わい：白泡・辛口
エレガントでバランスに優れ、快活なポメリー・スタイルのエッセンスを引き継ぐキュヴェ。生き生きとした泡立ち、柑橘類や白い花のような芳香、さらに小さな赤い果実のヒントも感じられます。口当たりは洗練されていて爽快感と上品さの調和が楽しめます。フルーツのサラダや生ハムなどのアペリティフの他、オリーブオイルとレモン風味のホタテのカルパッチョ、舞茸の天ぷら、おせち料理、お寿司などお正月の食卓にもふさわしい華やかな味わいです。
伴 良美（ばん・よしみ）
ライター＆ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。