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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

シャープでフレッシュ 地中海のテロワールが生む夏ワイン ドメーヌ・アザン ピクプール・ド・ピネ 2019

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

初夏の日差しがまばゆく、少し汗ばむ季節は、キリっと冷えたフレッシュなワインが飲みたくなりますね。6月は5月に続き、東急百貨店のネットショッピングでも購入できる南仏の白ワインをご紹介しましょう。地中海の海風を感じる、豊かなミネラルと果実味を備え、岩ガキや旬の魚介類にもピッタリな夏ワインです。

地中海からわずか6km 南仏の海風がそよぐ有機栽培の畑

写真:南仏ラングドックの地中海沿いには美しい村々が点在
そのワインは「ドメーヌ・アザン ピクプール・ド・ピネ」。南フランス・ラングドックの、中心都市であるモンペリエから南西に車を走らせること30分。地中海沿岸のピクプール・ド・ピネというエリアで生まれたピクプール・ブラン種100%のワインです。生産者はドメーヌ・アザン。地中海から潮風が心地よく吹きよせる場所に畑とワイナリーがあり、1985年からビオロジック(有機)栽培を実践。健康で力強い葡萄栽培に励んでいます。

ワインのラベルは、鮮やかなコーラルグリーンを配し、波のようにウエーヴしたデザイン。まるで、地中海の風とフレッシュで爽やかな味わいを表現するかのようですね。左側には、エコセールとAB(アグリカルチャー・ビオロジコ)の有機ワイン認証マークが施され、ラベルのデザインと一体化してとてもおしゃれ。さらに、ボトルのネック部分にもご注目ください。ピクプール・ド・ピネのワインは、2013年にAOCに認定され、その証として、魚と波を表現した“ネプチューン模様”が刻印されています。

“舌を刺す”を意味する豊かな酸 ナポレオン3世が愛した古代品種

写真 左:フレッシュで豊かな酸のピクプールの葡萄
写真 右:牡蠣の養殖とフラミンゴの生息地としても有名

では、ピクプール・ブランという世界でも珍しい葡萄品種についてご説明しましょう。ピクプール・ブランは、南仏ラングドック地方の地中海からわずか6km、トー潟湖の北で栽培される葡萄品種。トー潟湖は牡蠣の名産地でフラミンゴの生息地としても有名で、美しい自然環境と温暖な気候に恵まれています。

実はこの品種、約2000年も前からこのエリアで栽培されてきた古代品種。ナポレオン3世の時代には、この葡萄から生まれる白ワインは、高価でファショナブルなワインとして人気を集めたそうです。私が以前南仏を取材で伺ったときAOCディレクターのギイ・バスクさんはさらに次のようにお話くださいました。

「トー潟湖周辺では、毎年8月中旬から秋にかけて海から霧がやってきて、ピクプールはその湿度を好む遅摘みの品種であることからこの地域に根付きました。葡萄は9月末に完熟し、『舌を刺す(=ピクプール)』ほどの高い酸をもつことが名前の由来。ワインはフローラルで、レモンやシトラスのアロマ、口内にあふれるほどの生き生きとした酸をもつフルボディのスタイルになるのです」

リンゴ農家から転身 化学肥料や農薬を排した有機栽培に励む

写真 左:畑の向こうは地中海。真っ白な石灰質土壌の畑は、ピクプールの葡萄と好相性。
写真 右:樹齢の高いピクプールの葡萄樹。砂を含んだ畑は病害にも強く、吹き抜ける海風が防虫効果をもたらす

ワインの生産者のドメーヌ・アザンさんは、こうした南仏のトー潟湖の自然と古代品種ピクプールの豊かな個性に魅せられ、この品種のポテンシャルをより高めるために、化学肥料や農薬などを一切使用しないビオロジック栽培を実践しています。

実はアザンさん、昔はリンゴ農家だったそうです。「果物の中でもリンゴは、特に耐病性が弱く農薬を多く使わないといけないのです。私はその現実といつも闘っていました。しかしある時、この豊かな自然環境を守っていくために、農薬を使わない農業を行うことを決意。それは、リンゴではなく葡萄栽培に転換したのです」と伝えています。

キリッとしたフレッシュな酸 魚介にピッタリな夏ワイン

写真 左:ワイナリーはシンプルで無駄がなく、自分たちで堆肥作りも行う
写真 右:地元では牡蠣と一緒に。エビやイカなど甲殻類にピッタリ。

現在はワインを造るときに出る葡萄の絞りかすを廃棄せず、一年間発酵させて堆肥として、畑に漉き込んでいます。そうすることで化学肥料や農薬を必要としない豊かな土を育てるまでになりました。アザンの畑で海風を受けながら育つピクプールの白ワインは、レモンやシトラスのアロマ、口内にあふれるほどの生き生きとした酸をもちます。

かつて初夏にこの地域を訪れた時、海風がそよぐレストランで、地元の人々とレモンをたっぷり振りかけた牡蠣やエビ、魚介のマリネなどとこのワインを楽しんだ記憶がよみがえります。ピクプールは暑くなるこれからの季節に特にピッタリのワイン。魚貝類にとてもよく合い、魚貝のパスタやフリッタ、カルパッチョやマリネだけでなく、お刺身や寿司、天ぷら、レモンを添えた焼き魚、夏が旬の岩ガキなど、和食とも広くお楽しみくださいね。
(写真協力:ディオニー)

渋谷 東急フードショーのおすすめ

ドメーヌ・アザン ピクプール・ド・ピネ 2019
(750ml) 1,980円

生産者:ドメーヌ・アザン
生産地:フランス・ラングドック地方ピクプール・ド・ピネ
葡萄品種:ピクプール100%
タイプ:白・辛口・キレの良い酸とフレッシュ感
輸入元:ディオニー

無農薬有機栽培でていねいに育てたピクプール100%のワイン。葡萄は、白い石灰質土壌で、地中海から潮の香りを含んだ海風が心地よく吹きつける畑で育ちます。そのため出来上がるワインには、ほのかな塩味と豊かなミネラル感があり、レモンやグレープフルーツのような爽やかな芳香を備えています。芳醇な果実味がボリューム感をもたらしキレのよい酸が全体をまとめバランスに優れた味わい。レモンを振りかけた旬の魚貝料理や、寿司やお刺身など和食とも好相性です。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。