白い花のような純粋さと気品 東急おすすめワインランキングに輝く 注目のモルドバワイン アルブ・デ・ジターナ 2018
ラベルが語るワイン物語
CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。
梅雨明けも間近、カラッと晴れた夏の訪れが待ち遠しい季節となりました。今回は白いジャスミンの花のようなピュアでフレッシュ、そして、大変珍しいモルドバ共和国の白ワインをご紹介しましょう。東急百貨店ワイン専門スタッフが100種のワインからブラインドで選ぶ、「おすすめワインランキング」のトップ6に輝いた実力派ワイン。ラベルもさわやかで美しく、この夏いちおしのワインです。
ジプシーの女性を描いた 歴史を伝えるワイン
写真:モルドバのワイン造りを支えた、ジターナの象徴の絵画がワイナリーにも残る。
ワインの名前は「アルブ・デ・ジターナ」。アルブはラテン語で白、ジターナはワイナリー名、つまり「ジターナワイナリーが造る白ワイン」を意味しています。名前のとおり、ラベルもボトルネックも真っ白で非常にシンプル。またアルブには「ミサの時に司祭が着る足元までの長さの”白い綿の衣服”」の意味もあり、ヘロデ王がイエスに着せた衣服と清められた魂を象徴しています。
さらにラベルの左横にもご注目くださいね。透かし模様でジターナ(=ジプシーの女性)の美しい横顔が描かれています。実はこのワインが生まれたモルドバ共和国は、14世紀にルーマニア人のシュテファン大公がオスマントルコに勝利して独立した国。
15世紀になると東ヨーロッパ諸国を流浪していたジプシーの人々が移り住み、葡萄栽培に励み、ワイン造りを発展させました。女性や子供も含む家族総出で葡萄栽培に励み、葡萄畑を拡大。その努力が実って18世紀にはジプシーパレスという、御殿を立てるほど繁栄しました。ラベルに描かれたジプシーの女性画はこうした歴史も伝えています。
4000年以上の歴史をもつモルドバワイン ロシア支配下の苦難を乗り越え
写真 上:広大で日照量が豊富なモルドバのぶどう畑。
写真 下:ジターナでは、選果を丁寧に行い手摘みで収穫を行う
モルドバはルーマニアとウクライナに挟まれた小国ですが、ワイン造りの歴史は古く、今から4000年以上前の紀元前30世紀から。16世紀のシュテファン大公の時代には、国際博覧会でも高い評価をうけ、ヨーロッパの宮殿や王室で広く愛飲されました。しかし1940年、ソビエト連邦の一部としてモルダビア・ソビエト社会主義共和国となると、ゴルバチョフ書記長によってアルコール禁止令が発令。それによって葡萄樹の伐採、ワインの破棄、ワイナリーの閉鎖が行われ、モルドナにとっては国家的悲劇に見舞われました。
しかし1991年、モルドバは旧ソ連から独立後、ワイン産業の回復に向けて果敢に立ち上がります。ワイナリーの民営化を行い、フランスやドイツなど欧州先進国から、最新機械の導入、技術者の派遣、人材育成をはかります。そして、わずか25年あまりでワインの質を高め生産量の90%を海外に輸出するまでに成長。現在ワイナリーの数は約150。海外で経験を積んだ若い世代の生産者も増え、国際品評会では多くのワイナリーが高評価を得るまでになりました。
モルドバの伝統品種を愛し自然農法を実践
写真 上:小規模ながら最新技術を用いて丁寧なワイン栽培・醸造を行う。
写真 下:美しい娘姉妹の新世代も活躍する家族経営のワイナリー
ジターナもこうした、歴史的苦難に耐えながら、ワイン造りの伝統を繋ぎ発展させてきたワイナリーです。モルドバ南部のヴァルル・ルイ・トライアン地域に1953年に創立。ソ連から独立後の1999年に再建され、現在は娘姉妹を含めた家族経営でワイン造りに励んでいます。
ジターナワイナリーの信念は、モルドバの伝統葡萄品種を大切にし、その個性や風味を生き生きと表現すること。農薬や化学肥料を使用しない昔ながらの伝統的農法を実践し、野生酵母を使った醸造法で、環境や人体にやさしいワイン造りを行っています。近年では海外のコンクールに入賞するほど実力を高め、モルドバが誇るワイナリーのひとつとなっています。
高貴な乙女を意味するモルドバ伝統品種 ピュアで気品あるフェテアスカ・レガーラ
写真:モルドバが誇る伝統白葡萄品種 フェテアスカ・レガーラ
このアルプ・デ・ジターナの白ワインも、フェテアスカ・レガーラというモルドバ伝統の貴重な葡萄が使われています。フェテアスカ・レガーラは「高貴な乙女」を意味し、その名のとおりジャスミンや洋梨のような華やかな芳香。フレッシュでミネラルが豊かで、ボディもしっかりとした気品あるワインです。
まさに、ラベルのごとく、白くピュアでエレガントな初々しさを感じるワイン。合わせるお料理も、ラベルと同じく白をイメージさせる食材と合わせてみましょう。鯛やスズキなど白身魚の刺身やカルパッチョ、うなぎの白焼、イカのフリット、白桃を使ったサラダ、魚介の天ぷら、セロリやチコリ、クリームチーズのサラダなどに。これから迎える暑い夏に一服の涼を運んでくれるワイン、ぜひ食卓でお楽しみくださいね。
【ワイン専門スタッフ厳選の「おすすめワインランキング」&選考会とは】
東急百貨店では、ソムリエやワインアドバイザーなどワインの専門資格をもつスタッフが、季節に合わせて100種類以上のワインをブラインドでテイスティング。香り、バランス、余韻などを採点し、その中から赤・白上位10本を選出して「おすすめ10」として、売り場やネット販売で紹介しています。
そのコンセプトは「食事との優れた相性、ギフトにも最適、1,500円~2,500円位の価格帯でコストパフォーマンスに優れたワイン」であること。ベスト10に選出された赤・白を組み合わせた「特別企画おすすめ12本セット(税込17,600円)」も現在販売しております。
ご家庭の食卓に素敵なワインをご提供することで、食の楽しみ、友人や家族との和やかな交流に一層お役立てていただけましたら幸いです。
東急フードショーのおすすめ
アルプ・デ・ジターナ2018
(750ml) 1,980円
生産地:モルドバ共和国
生産者:ジターナ ワイナリー
葡萄品種:フェテアスカ・レガーラ
タイプ:白・辛口・ミディアム・ボディ・フレッシュで旨みあり
紀元前30世紀からワイン造りの歴史をもつモルドバが誇るワイナリー。1953年に創立後、旧ソ連の支配下に置かれるが、1999年ドゥルガー夫妻により私有化され再建。現在は海外で研鑽を積んだ娘姉妹が参画し、確かな醸造技術と農薬や化学肥料を使用しない伝統的葡萄栽培を融合し、世界にも誇るワインを造っています。国内外のコンクールで多くの賞を受賞。シャルドネをブレンドしたワインは、白い花や桃、アカシアやはちみつの芳香を備え、フレッシュでエレガントな味わい。ほどよい旨みとボリューム感をもつ気品あるスタイル。8~10℃ぐらいに冷やして、魚介のサラダや前菜、ローストした魚、白身魚や夏野菜を盛り込んだ和食とも、ぜひお楽しみください。
伴 良美(ばん・よしみ)
ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。