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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

サミット晩餐会に饗された少年たちのワイン こころぜ2018 ココ・ファーム・ワイナリー

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

1980年、栃木県足利市に、知的ハンディをもつ生徒の自立を目指して設立されたココ・ファーム・ワイナリー。丁寧な手作業と無農薬栽培から生まれたワインは、2000年、沖縄サミット公式晩餐会に饗され、清らかな美味しさが多くの来賓に感動を与えました。今回は日本が世界に誇る、ココ・ファーム・ワイナリーとそのワインをご紹介してみましょう。

自然農法の畑に動物が集う 童話のようなラベル

写真:知的障害者の自立を目指して創設されたココ・ファーム・ワイナリー。ワイナリー見学も楽しめる。
ワインの名前は「こころぜ」。それは、こころみ学園の生徒が、ココ・ファーム・ワイナリーで生み出すロゼワイン。シンプルな白いラベルには、葡萄の下に集う動物の様子が童話のように描かれ、淡い紫のワインカラーを美しく引き立てています。さらに、ラベル上部の山のような曲線は、こころみ学園の生徒が丹精して開墾した急峻の畑を表現しています。

1958年、中学の特殊学級の教員であった川田昇さんは、私財を投げ打って栃木県足利市の山の斜面に葡萄畑を開墾。生徒と一緒に農作業に励み、2年がかりで38度の急斜面に3㏊の畑を築きあげました。

生徒の自立を目指し こころみ学園を創立

写真:ラベルにも表現されている、こころみ学園の生徒たちが開拓した急斜面の畑。現在は畑を眺めながらワインを楽しむことができる。
高品質な葡萄栽培に適した陽当たりと水はけの良い急勾配の畑でしたが、当時、農作業に慣れない少年たちにとっては苦労の連続。一歩一歩自らの足で斜面を昇り降りしながら、マスカット・ベーリーAの葡萄を植樹。畑の草刈り、適房、収穫、剪定作業も、すべて手作業で根気強く行ってゆきました。

自然の中での労働を通して、強い体力と葡萄栽培の生きがいを見出していった生徒たち。やがて彼らの自立のために、川田さんと父兄が中心になって、こころみ学園が創立されたのです。

「当時は、特殊学級を卒業した子供たちの2割は社会で仕事に就けない環境にありました。彼らと一緒にここで農業をして暮らせたらどんなに楽しいだろう、と考えたのです。栃木弁のやってんべぇ(やってみよう)の精神、何でも試みようの気持ちを大切にしたいと“こころみ学園”と名づけました」と川田さんは語っています。

サミット晩餐会で披露された高い実力 60年守られた自然栽培の葡萄

写真 上:赤・白・ロゼ・スパークリング・甘口など20種以上の秀逸なワインを生産し、海外にも輸出。
写真 下:マスカット・ベーリーA、メルロ、リースリングなど15種以上の葡萄を無農薬で栽培。

1980年にはココ・ファーム・ワイナリーが併設され、専門の醸造家と一緒にワイン造りを開始。2000年には、スパークリングワイン「のぼ」が沖縄サミット晩餐会の乾杯ワインに選ばれ、その信念と実力の高さが世界中に知れ渡りました。

現在は20種類以上の多彩で独創的なワインを生産し海外にも輸出。ワインツーリズムも行い、併設のレストランでは、園生が育てた無農薬野菜やワインを楽しむことができます。

ココ・ファームでは60年間、化学肥料や除草剤は一切使わず、園生たちが自然栽培で葡萄を育ててきました。醸造においても天然の野生酵母を中心に、葡萄の自然な声に耳を澄ませて葡萄の個性を生かすワイン造りを行っています。

自然との共存で生まれたワイン ピュアでフレッシュな果実感

写真:ワイナリー併設レストランの農園料理。フレッシュでフルーティなココ・ファームのワインは、料理と幅広くより添う魅力が。
この「こころぜ」もピュアでフレッシュ、葡萄本来の優しい甘さを備え、サクランボやラズベリーのような果実感溢れるロゼワインです。近年、世界がロゼブームに沸くなか、「こころぜ」はチャーミングで緻密、日本ならではの繊細な美味しさが注目されています。2015年、2016年ヴィンテージはJAL国際線ビジネスクラスに搭載され、そのクオリティも高く評価されています。

畑に集う動物たちの姿を描いた「こころぜ」のラベルを眺めると、ワインは自然の中での労働と暮らしから育まれ、自然と共存することで生まれる大地の恵みであることを感じます。ナチュラルな優しい果実味は夏の疲れを癒し、カルパッチョやカプレーゼなどのイタリアン、エビの生春巻きなどのエスニック、さらに和食など家庭料理にもよく合います。残暑が続く季節、過ぎ行く夏を思いながら、ご家族でぜひお楽しみいただきたいワインです。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

こころぜ2018 ココ・ファーム・ワイナリー
(750ml) 1,732円

生産者:ココ・ファーム・ワイナリー
生産地:日本・栃木県足利市
葡萄品種:メルロ、マスカット・ベーリーA、富士の夢、ブラック・クィーン他
味わい:ロゼ・ミディアムライト・ほのかな甘さ

ココ・ファームの自社畑を含む日本全国の多彩な葡萄をブレンド。そのため、フルーティな果実味の奥に、複雑性や旨みも感じられ、飲み飽きしない美味しさです。日本人の琴線に触れる繊細さも兼ね備え、JAL国際線ビジネスクラスに日本が誇るロゼワインとして搭載され、そのクオリティが高く評価されました。

収穫した葡萄は時間をかけて優しくプレス。低温発酵で2~3週間かけてじっくり野生酵母で醸され、非常に丁寧に造られます。淡い桜色で、サクランボやイチゴなどのフレッシュな香り、ピュアで果実感たっぷりのロゼワインです。生ハムメロン、クリームチーズのサーモン巻き、ラタトゥイユ、エビチリや酢豚、エビの生春巻きなど、夏の食卓を彩るフレッシュでチャーミングな味わいです。

東急フードショーのワイン売場では、ココ・ファーム・ワイナリーのワインは定番として3種類ご用意しています。ロゼワイン「こころぜ」の他にも、辛口赤ワイン「農民ロッソ」、辛口白ワイン「農民ドライ」もございます。ぜひ合わせてお楽しみくださいね。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。