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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

カリフォルニアのロマネ・コンティを目指して アメリカン・ピノ・ノワールの偉大な開拓者 カレラ・セントラル・コースト ピノ・ノワール 2016

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

長く暑い夏も終わり、秋の気配が心を和ませる頃。10月は「カリフォルニアのロマネ・コンティ」とも称され不動の人気を誇るカレラ・ワイナリーの物語と、秋の訪れとともに楽しみたいおすすめピノ・ノワールをご紹介しましょう。

ラベルには石灰岩の焼き窯カレラを描く

写真:ラベルの焼き窯がワイナリーのマークに。母国アメリカでブルゴーニュに負けないピノ・ノワールを実現。
カレラとは、スペイン語で「石灰岩でできた焼き窯」を意味する言葉。その名前の通り、ワインのラベルには昔ながらの焼き窯が描かれています。

でも、なぜ、カリフォルニアの高級ワインに素朴な焼き窯が描かれているのでしょうか。 それは、アメリカでロマネ・コンティに匹敵するワインを造りたいと切望した生産者、ジョシュ・ジャンセンが、長い年月をかけて探し抜いた理想の地を象徴しているのです。

ブルゴーニュワインに魅せられて

写真:カリフォルニアでは、土壌・気候の問題でピノ・ノワールの栽培は難しいと考えられていた時代、果敢に挑戦と研究を続けたジョシュ・ジャンセン。
1960年代、カレラのオーナーであるジョシュ・ジャンセンはイギリスのオックスフォード大学に留学中、ブルゴーニュに何度も足を運び、偉大なるテロワールとワインの素晴らしさに魅了されます。そしてとうとう、ブルゴーニュ最高峰のドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティ社に赴き、約2年間の修業に励んだのです。

ジョシュはあるとき、オーナーに「ロマネ・コンティが唯一無二の偉大なるワインを生み出すのは何故なのですか」と問いかけます。するとオーナーは「そうだな、栽培や醸造の技術以上に大切なこと、それは石灰岩の土壌かな」と答えました。

NASAの写真を手に 石灰岩を探す長い旅

写真:理想の地の象徴である焼き窯カレラ。長い探索の果てにたどり着いた石灰岩の土壌を象徴する。焼き窯のある傾斜地を利用して、重力で優しく葡萄果汁を移動するグラヴィティフローの醸造技術も駆使している。
その言葉を胸に帰国したジョシュは、地質学研究所の資料を基に、カリフォルニアで石灰岩土壌の土地を探し回ります。しかし2年かけても見つからず、とうとう航空宇宙局NASAの人工衛星が写した写真を手に入れます。探し続けて1年後の1974年、ついにこだわりの土地を見つけ出したのです。

その場所は、サン・フランシスコから南150km、カリフォルニアでも最も標高の高い670m、セントラル・コーストの「マウント・ハーラン」でした。そこは、かつて石灰岩の採掘場だった場所で、近くには石灰岩を溶かしていた古びた溶鉱炉がたったひとつあるだけ。野生の草木が鬱蒼と茂るその土地に、ジョシュはロマネ・コンティなど、ブルゴーニュの優良畑から手に入れたピノ・ノワールの切り枝を植樹。ブルゴーニュに負けないワインを造り始めたのです。

ブルゴーニュを凌駕し 世界に知らしめたカレラの名前

写真:傑出した葡萄栽培地AVAに認定されたマウント・ハーランの畑。ギャラヴィン山脈にあり風通しがよく冷涼、かつ、豊かな日照を享受するピノ・ノワール理想の地。
そして1980年、ニューヨーク・タイムスが企画したブラインド・テイスティングでは、尊敬する父の名を冠した「カレラ・ジェンセン・ピノ・ノワール」が、ロマネ・コンティ社のリシュブールをはじめとした、ブルゴーニュの権威あるワインを次々に打ち破る快挙を達成。世界中にカレラの名を知らしめたのでした。

カリフォルニアのピノ・ノワールの偉大なパイオニアとして、今も多くの人々に尊敬されるカレラのジョッシュ・ジェンセン。彼が見つけた理想の地「マウント・ハーラン」は、1990年には国が傑出した葡萄栽培地に与える「AVA(米国政府認定優良ブドウ地域)」に認定されました。高級ピノ・ノワールの栽培地を誇るかのように、ラベルに描かれた石灰岩の溶解炉は今も残され、風格ある姿で畑を見守っています。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

カレラ・セントラル・コースト ピノ・ノワール 2016
(750ml) 4,070円

生産者:カレラ・ワイン・カンパニー
生産地:カリフォルニア セントラル・コースト
葡萄品種:ピノ・ノワール100%

ピノ・ノワールの銘醸地セントラル・コーストの厳選された6つの畑の葡萄をブレンド。カレラの中ではスタンダードクラスながら、ジョシュがピノ・ノワールと最も相性が良いと厳選した、フランス産オーク樽で11カ月の長期熟成を行って丁寧に造られる。自然酵母で発酵。香り高いラズベリー、レッドチェリー、カシスなどの赤い果物の瑞々しい果実味。フレンチオーク由来の心地よいタンニンと気品ある風味。秋の味覚のキノコやジビエ、鴨のコンフィ、牛の赤ワイン煮やカツレツ、さらに、うなぎ、すき焼き、牛しゃぶ、カツオ、などの和食にも好相性。秋の訪れとともに楽しみたいピュアでエレガントな赤ワインです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。