東急百貨店90周年ver

渋谷 東急フードショー

営業情報
  1. 東急百貨店
  2. 渋谷 東急フードショー
  3. コラム一覧
  4. ワインコラム

Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

冬の味覚に新年の門出に
白い帆船のクロ・フロリデーヌ・ブラン2009

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

ボルドー白ワインの革命家 デュブルデュー教授が造る

ラベルに描かれているのは、白い帆船の絵柄。そして、爽やかなシンプルな文字で書かれたワイン名は「クロ・フロリデーヌ」。このワインは、ボルドー大学醸造学部教授のドゥニ・デュブルデューによって造られました。彼はボルドーの白ワイン造りに革命をもたらした偉大な人物で、「白ワインの法王」とも呼ばれています。

昔からボルドーといえば、マルゴーやラ・トゥールといった偉大な赤ワインの銘醸地として知られていますが、白ワインにおいて傑出するのはテロワールに恵まれた一部の有名シャトーに限られていました。しかし1980年代、デュブルデュー教授はボルドーの白ワインにおいても、その潜在能力を引き出すべく醸造研究を行ってゆきます。

豊かな香味成分を引き出す新しい醸造法の開発

その結果彼が編み出したのは、「マセラシオン・ペニキュレール」という発酵方法。これは、葡萄の果皮を葡萄果汁に低温で長く接触させることで、果皮に含まれる芳香成分を、最大限に抽出し、豊かでピュアな果実味を引き出す方法でした。

デュブルデュー教授は、自らの発酵方法を、ボルドーの多くのシャトー(ワイナリー)に伝授しながら、コンサルタントとして貢献します。やがて、シャトー・カルボニュー、シャトー・ド・フューザル、シャトー・レイノンといった、素晴らしいワインが生み出され、ボルドーは白ワインの銘醸地としても世界的に知られるようになりました。

ワイン造りを航海にたとえた 白い帆船のラベル

さらに、デュブルデュー教授は、グラーヴ地区に自身のワイナリーを創設し、渾身のワインを造り上げます。そのワインは、ル・クラスマンで「非常にエレガントで、素直で、清らかで、無理な誇張がなく、水晶のように澄んだワイン」と絶賛され、多くのワイン愛好家の心をつかみました。

ワインの名前である「フロリデーヌ」は愛妻であるフローランスさんと、自身のドゥニの名から由来したもの。ラベルに描かれた白い帆船は、夫妻が自分たちのワイン造りを航海にたとえたものと言われます。そのため、このワインは、人生の門出や新たな出発にもふさわしく、新年の始まりにもぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

ボルドーの郷土料理 生カキやホタテのポワレと楽しんで 

フランス農水省の関連団体フランスアグリメールでは、フランスの名産地ワインとその土地の郷土料理を紹介するキャンペーンを行い、その楽しみ方を伝えています。ボルドーは大西洋に流れこむジロンド川の両岸に広がるワイン産地。その歴史も古く、ワインの銘醸地で有名なサンテミリオンは、8世紀に修行僧聖エミリオンが一枚岩のモノリス教会をつくり隠遁生活を送った地として、葡萄畑とともに世界遺産にも登録されています。また10世紀から貿易港として栄えてきたボルドーは、新鮮な魚介類にも恵まれ、近郊にはアルカッションのカキの名産地もあります。そのため、ボルドーのグラーヴ地区やアントルドメール地区の白ワインは、冬の味覚であるカキやホタテなどの魚貝類と非常に相性がよく、ぜひとも楽しんでいただきたいマリアージュです。

中でもグラーヴ地区は、氷河期に運ばれた石灰岩の白い砂利が畑をおおい、その砂利が地熱を蓄え葡萄畑の水はけも良くすることから、豊かなミネラルと果実味に溢れた傑出した白ワインを生みだします。地元の郷土料理でもある、ホタテのポワレや生ガキと一緒に楽しんでみましょう。またセミヨンやソーヴィニヨン・ブラン種特有の、白桃のような芳醇なアロマを備えるため、和食との相性も良く、おせち料理やタラバカニ、さらにタラちりなどの魚貝を使った鍋料理にもよく合います。ボルドーの白ワインの特徴でもある、黄金色に輝く色調は、新年の始まりにふさわしく、お正月の食卓を華やかに彩ってくれることでしょう。

東急フードショーのおすすめ

クロ・フロリデーヌ・ブラン2009
3,885円

生産地:フランス ボルドー グラーヴ地区
生産者:シャトー・クロ・フロリデーヌ
葡萄品種:ソーヴィニヨン・ブラン55%・セミヨン44%・ミュスカデル1%
タイプ:発泡性・白・辛口


現在は世界を舞台に、ディケム、シュヴァル・ブラン、カルボニュー、オー・バイィ、ラフォン・ロシェなど傑出したエステートのコンサルタントを務めるドゥニ・デュブルデュー教授。ボルドーの白ワインに革命を起こし、その品質を大きく向上させた功績が世界から高い評価を受けています。クロ・フロリデーヌは彼が立ち上げたシャトーで造る渾身の白ワイン。化学肥料や除草剤はいっさい使わず、野菜のコンポストを有機肥料にするなど、自然を尊重しながらの栽培を実践し、葡萄はすべて手摘みで収穫。自らが編み出した独自の醸造法で果汁をゆっくり優しく抽出することで、「エレガントで、素直で、清らかで、無理な誇張がなく、水晶のように澄んだワイン」を生み出します。格付けシャトーに匹敵するほどの素晴らしいワインにもかかわらず、優れたコストパフォーマンスも魅力です。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。