東急百貨店90周年ver

渋谷 東急フードショー

営業情報
  1. 東急百貨店
  2. 渋谷 東急フードショー
  3. コラム一覧
  4. ワインコラム

Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ダイナミックに変化する新生ドイツワイン
フリードリッヒ・ベッカー・シュペート・ブルグンダー2012

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

モダンドイツの旗手「ジェネレーション・リースリング」

写真 上:ドイツ・ライン河沿いの伝統ある葡萄畑
写真 下:モダンドイツワインの旗手として活躍する「ジェネレーション・リースリング」のメンバー

約2000年前のローマ時代からワイン造りが行われ、脈々とその歴史を伝えてきたドイツワイン。フランスやイタリアと並ぶ伝統あるワイン生産国ですが、今、20代、30代の若手醸造家の活躍によって、大きなムーヴメントが起こっています。今回は東急フードショーでも注目する、伝統から革新へ、ダイナミックに変化する新生ドイツワインの魅力についてお伝えしてみましょう。

近年、世界のワインメディアが注目しているのがドイツの「ジェネレーション・リースリング」の存在です。これはドイツの35歳以下の若手醸造家グループのことで、10年前にドイツワイン基金(DWI)によって結成されました。当時は50人ほどのメンバーでしたが、今や500人を超え、その30%が女性。近年ドイツの全生産地で若い生産者の活躍が目覚ましく、「伝統を受け継ぎながらも、自分たちの様な若い世代が、日常の食卓で気軽に自然体で楽しめるワインを造っていきたい」という強い志のもと素晴らしいワインが続々と生まれています。ドイツの代表品種であるリースリングの名前が冠されていますが、シルバーナーやヴァイス・ブルグンダーなど他品種のワインも進化させています。

気軽な価格ながら質高く 自然体ながら気品あり

写真:和洋中、エスニックとどんな料理とも寄り添う寛容さも魅力
こうした若い世代が造るワインは、気軽な価格帯でありながら非常に質が高く、時にピュアで自然体、時にモダンで革新的であるなど非常に個性豊か。海外で最新の醸造技術を学ぶなど、確かな技術と国際感覚を持合わせたメンバーが多いことも特徴です。さらに、和洋中、エスニックと多様化する現代の食に、柔軟に寄り添う自然体な味わいも魅力です。これまでのドイツワインのような薄甘口や甘口ではなく、「トロッケン」という辛口または中辛口のドライな味わい。美しい果実味と伸びやかな酸、豊かなミネラルを備え、軽すぎず重すぎず、気品とバランスに優れ、どんなお料理ともよく合う寛容さを備えています。

世界のメディアが注目 活発なプロモーション活動

世界のメディアがこうした若い世代が造るドイツワインに注目する中、今年7月に日本でもドイツ有名産地のジェネレーション・リースリングを披露する会が開催されました。さらに秋には、ユニークなことにジェネレーション・リースリングに、鶏肉のフォーや鯛のチャーカー、ソフトシェルクラブ、レモングラスやパクチーなどのハーヴを使った、モダンベトナム料理をマッチングする会も開催。和洋中華に加え、アジアン料理との相性も非常によく、その懐の深さを実感しました。

果実味とミネラル溢れ 料理と寄り添う寛容さ

写真:伸びやかで自然体なジェネレーション・リースリングのワイン
例えばリースリング100%のスパークリングStrauch Sektmanufaktur RHEINHESSEN 2012は、フローラルでフレッシュなリンゴの香り、モダンスタイルですが余韻には果実本来の優しい甘みが。またドイツ伝統の固有品種シルバーナー100%のWeingut Scheuring FRANKEN2014は、フランケン地方特有の完熟した果実のうまみとコクをもちながら、ミネラル豊かで洗練され、グラタンやみそ料理、エビチリやオイスターソースを使った中華炒めなど、うまみの強い料理に。グラウブルグンダー(ピノ・グリ)100%のWeingut Schloss Westerhaus RHEINHESSEN 2014は、アカシアの花、杏や黄桃のような華やかな香りをもち、寛容さの中にも凛とした清らかさが感じられ、鶏肉のフォーや鶏鍋、豚しゃぶ、鯛の刺身、サーモンフライにもよく合います。他にもWeingut Bergdolt-Reif&Nett 2015、Weingut Brixius-Bolinger 2014、Weinhaus Peter Kriechel 2013 など、いずれも美しい酸と凝縮された豊かな果実味、華やかで伸びやかな新生ドイツワインが紹介されました。

最高のピノ・ノワールの旗手 フリードリッヒ・ベッカー醸造所

写真:当主ベッカーさんと自然農法を実践する息子さん。
さて、東急フードショーのワイン売り場でも、ドイツの若手生産者のワインに注目して販売を行っています。そのひとつが、フリードリッヒ・ベッカー醸造所が造る「シュペート・ブルグンダー2012」のワインです。シュペート・ブルグンダーとは、ピノ・ノワールのことで、ブルゴーニュで最も多く使われていますが、ドイツの赤ワインでも多用する葡萄品種です。近年あまりにも高騰してしまったブルゴーニュに比べ、ドイツでは「中価格帯ながらエレガントで高品質なピノ・ノワールワインができる」ことで世界的にも注目されています。特に若手生産者がこの品種に力を入れて急速に質が高まっています。

中でもフリードリッヒ・ベッカー醸造所は、南ドイツのファルツで「世界一エレガントなピノ・ノワールを作りたい!」と1973年にワイナリーを設立。現在は当主の息子さんが中心となり、この品種に適する冷涼な気候と貝殻が混じった石灰土壌で、化学肥料や農薬に依存しない自然農法の葡萄から素晴らしいピノ・ノワールワインを生み出しています。ドイツで最も注目に値する醸造家に贈られる「ライジングスター賞」を受賞し、2008年の洞爺湖サミットでも、同醸造所のピノ・ノワールがふるまわれ、エレガントで透明感あふれる味わいで多くの来賓をうならせました。

父の遺志を継ぎ当主に ラインガウ特級畑のリースリング

写真:ライン河沿い有機栽培の特級畑から傑出したワインを造るテレーザ・ブロイヤーさん
さらに、もうひとつおすすめが「ゲオルグ・ブロイヤー・ソアージュ・リースリング2014」。ゲオルグ・ブロイヤーはドイツワインの聖地ともいえるライガウにある名門の醸造所です。現当主のテレーザ・ブロイヤーさんは、急逝した父ベルンハルトの遺志を継いで、若干20歳で当主となり醸造所をきりもりしながら醸造大学に通い、現在はその名を世界中にとどろかせています。最大斜度60度を越える断崖絶壁の急斜面の特級畑で葡萄は栽培され、真南で日当たりがよく、ライン河の照り返しを全面に受ける最高条件の畑です。近年では有機葡萄の栽培にも力をいれ、ワインの質をより高めています。ハーヴを植えて畑の緑化にもつとめ、粘板岩土壌由来の豊かなミネラルと爽やかながら一本筋が通った、秀逸な辛口リースリングを生み出しています。

目を奪う個性豊かなラベル

さてこうした若手醸造家がつくるワインは、そのラベルもどこかユニークで個性豊か。モダンであったり、愛らしかったり、思わず手を伸ばしたくなるようなインパクトがあるデザインです。中でも、フリードリッヒ・ベッカー醸造所のラベルには愛らしいキツネが描かれ、まるで絵本の1ページを見ているよう。このデザインはお腹を空かせた子ギツネが葡萄の実を食べようとしましたが、背が小さくて届かず「あれは酸っぱい葡萄だから、いらない」と諦めた寓話から生まれました。情熱に溢れ、若手醸造家が活躍するドイツワイン。その味わいは伸びやかで自然体、目も舌も心も癒すワインは、広い世代の人々に様々なお料理と楽しんでいただきたいと思います。

東急フードショーのおすすめ

左. フリードリッヒ・ベッカー・シュペート・ブルグンダー2012
(750ml) 3,240円

生産者:フリードリッヒ・ベッカー
生産地:ドイツ・ファルツ地方
葡萄品種:シュペート・ブルグンダー(ピノ・ノワール)100%
味わい:赤・ドライ・ミディアムボディ

フリードリッヒ・ベッカーは「ゴーミヨー」で最も注目に値する醸造家に贈られる「ライジングスター」賞を受賞、さらに2004年から2012年にかけては、同誌で9年連続で赤ワイン賞を受賞する今大人気の生産者です。冷涼な産地のピノ・ノワール由来の美しい酸とピュアな果実味、木イチゴ、黒スグリ、チェリー、ラズベリーなどの赤系果実がギュッと凝縮されたような甘い香りと優雅な味わいが印象的です。淡い色調ですが、うまみと豊かな果実味、ミネラルに満ちたエレガントな風味を備え、ローストビーフ、ポークソテー、鴨のロース、さらに鯛の煮つけなどの和食ともお楽しみいただけます。


右. ゲオルグ・ブロイヤー・ソヴァージュ・リースリング2015
(750ml) 2,916円

生産者:ゲオルグ・ブロイヤー
生産地:ドイツ・ラインガウ地方
葡萄品種:リースリング100%
味わい:白・ドライ・ミディアムボディ

ブロイヤーが所有する4つの急斜面の特級畑の葡萄をブレンドしたワイン。厚みがありながらも、贅肉のない引き締まった味わいで、透明感があり力強くも、果実味がとても豊かです。新鮮なグレープフルーツやマンダリンオレンジ、ライチ、白い花、青りんごなど華やかなアロマが広がり、溌剌としたフレッシュな酸味と溢れんばかりのミネラル感。口内がジューシーな旨みで満たされる美味しさで、後味には爽やかでエレガントな酸の余韻がながく続きます。魚介のフライ、豚肉料理、ポトフ、アジアン料理などの他に、寿司、天ぷら、鍋物などの和食ともお楽しみいただけます。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。