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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ユニークなペリカンのラベルは ワイン造りへの深い愛情の証
ドメーヌ・ド・ペリカン アルボワ サヴァニャン ウイエ 2014

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

自然派ワインの宝庫 秘境ジュラ地方

ブルゴーニュの東に位置し、自然派の造り手が活躍するワイン産地として注目を集めるジュラ地方。ジュラとはラテン語で「森林」を意味し、フランスの秘境ともいえる大自然の中で葡萄栽培が行われています。近年では予約で完売になるほど人気の自然派ワインも出現。その中でもユニークなラベルと優雅な味わいで大人気の生産者をご紹介しましょう。

水と緑のアルボワでブルゴーニュに勝るワイン造り 

シンプルな白のラベルには、ドメーヌ・ド・ペリカンの文字。そのワイナリー名のごとく、中央に描かれているのはユニークなペリカンのマークです。大きく羽を広げるお母さんペリカンの下に、愛らしい三羽の赤ちゃんが寄り添う姿がうかがえます。

ドメーヌ・ド・ペリカンは、ブルゴーニュのヴォルネイ村で、200年以上ワインを造り続けてきた老舗ドメーヌ・マルキ・ダンジェルヴィーユが、ジュラ地方のアルボワに設立したワイナリー。アルボワはスイス国境に近い水と緑に恵まれた風光明媚な町で、昔から葡萄栽培が盛んに行われてきました。当主のギョーム・ダンジェルヴィーユはこの町でブルゴーニュに負けない素晴らしいワインを造ろうと、2012年、探求心に燃えてワイナリーを創設したのです。

皇帝夫妻に愛された「皇帝ペリカン」

では、どうしてペリカンというユニークな名前がつけられたのでしょうか。そこにはアルボワにまつわる逸話がこめられています。15世紀末、神聖ローマ皇帝のマクシミリアン1世は、従者と共に長らくアルボワの町に滞在していました。当時は異国の動物を飼うことが貴族のステータス。皇帝夫妻も南国の鳥ペリカンを愛育していました。

特に皇妃は人懐こいペリカンをとても可愛がり、一緒に連れて散歩をしたともいわれます。ところが、不幸なことにアルボワ滞在中にこのペリカンは病気で亡くなってしまいます。その死を大いに悲しんだ皇帝夫婦は、町のエンブレムをペリカンとするように定めたのでした。



血を与えるペリカンはキリストの象徴、聖杯や紋章に刻まれた歴史も

ペリカンがこんなにも皇帝に愛されていた理由は、実は他にもあります。もう一度ワインのラベルのペリカンをよく見てみましょう。そこに描かれているように、ペリカンは幼子を育てるとき、与えるエサが無くなってしまった場合は、自分の胸に穴を開けて血を与えてでも養育するという伝説があり、古来より慈愛や母性愛の象徴と伝えられてきました。さらにこの伝説によってペリカンは、人類への愛のために十字架に身をささげたイエス・キリストの象徴となり、中世の聖職者の紋章や聖杯にその姿が刻まれるようになりました。

無農薬で化学肥料も無添加、精魂込めたビオディナミ農法

こうしたいくつかの逸話に基づき、ドメーヌ・ド・ペリカンの名前には「アルボワの象徴となり、精魂込めて深い愛情をもって素晴らしいワインを造って行こう」という願いが込められています。そのため大切な葡萄畑には、農薬や化学肥料を一切使わず、濃縮したハーブエキスなどの自然の肥料を与え、月の満ち欠けに従って葡萄栽培を行うビオディナミ農法を実践しています。また畑の耕作においても、土を硬くしてしまうトラクターでなく、馬で行うことで土中に空気を含ませ微生物を活性化させています。



ピノ・ノワールと伝統品種の融合

さらに、「ブルゴーニュとアルボワの二つの葡萄生産地の懸け橋となりたい」と、強い思いを抱いていたギョーム氏。そのためワインにも、アルボワの伝統品種であるサヴァニャン、ブルゴーニュの伝統品種であるピノ・ノワールやシャルドネなど、両生産地の品種を使っています。葡萄栽培に情熱を注ぎ、ブルゴーニュのエレガンスと、アルボワの力強さを融合させたドメーヌ・ド・ペリカンのワイン。近年自然派の造り手では一番の注目株! 是非一度お楽しみください。

東急フードショーのおすすめ

ドメーヌ・ド・ペリカン アルボワ サヴァニャン ウイエ 2014
(750ml) 5,076円

生産地:フランス ジュラ地方アルボワ
葡萄品種:サヴァニャン100%
味わい:白・辛口・ミディアムボディ

ジュラ山脈ふもとのアルボワの葡萄畑から造るペリカンのワイン。ちなみにアルボワはワクチンの研究で知られる偉大な科学者パストゥールが育った町。パストゥールもアルボワに葡萄畑を所有し、発酵の実験を行っていました。町のシンボルであるペリカンのマークをラベルに描いたこのワイン。同じく町の伝統品種である、サヴァニャンの有機葡萄を100%使用しています。味わいは溌剌として力強く、香りはレモンや黄色いリンゴ、時間とともにマンゴーなどのエキゾチックフルーツの芳香も現れ、芳醇でふくよかな風味が楽しめます。ウイエとは補酒を意味し、サヴァニャンのフレッシュさと豊かなアロマを保つために、2週間に1度同年のワインを添加し、非常に丁寧に樽熟成をしています。

ドメーヌ・ド・ペリカン アルボワ トロワ セパージュ 2014
(750ml)5,076円

生産地:フランス ジュラ地方アルボワ
葡萄品種:ピノ・ノワール60%、トルソー35%、プルサール5%
味わい:赤・辛口・ミディアムボディ

同じくドメーヌ・ド・ペリカンが、2012年にアルボワの有機ピノ・ノワールを用いて造り上げた渾身の赤ワイン。近年注目の自然派ワインでフランスでは予約完売してしまう希少なキュヴェです。15年以上前から農薬も化学肥料を一切使用しないビオディナミ農法を実践することで、ピュアで繊細にして、伸びやかな果実味を備えた素晴らしいワインが生まれました。ピノ・ノワールにトルソーとプルサールの伝統品種をブレンドすることで、よりエレガントで深みのある味わいを醸し出しています。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。