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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ロマネ・コンティの甥が造る フランス・ロワールの春色ロゼ
サンセール・ロゼ ドメーヌ・デュ・ノゼ 2019

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

春が近づく季節はワインもロゼ色に着替えてみてはいかがでしょうか。今月はフランスの庭園ともいわれる美しい自然と古城が広がる、ロワール地方のワインをご紹介しましょう。それはドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの共同経営者の甥が造るロゼワイン。ビオディナミの自然農法由来のピュアで優雅な味わいには、一族の高い誇りと気品が感じられます。春のお祝いや贈り物にもふさわしく、ぜひお楽しみいただきたいロゼワインです。

ピノ・ノワール100% ラベルには男爵家の館とくるみの木

写真:フランスの庭といわれ美しい古城が残るロワール地方。ワインの銘醸地でもある。
ワインの名前は「サンセール・ロゼ・ドメーヌ・デュ・ノゼ」。フランス・ロワール地方のサンセール地区で、ピノ・ノワール100%で造られるロゼワインです。ロワールは中世にはフランソワ1世やシャルル7世などの王侯貴族が、数々の城や教会を建立し、政治の中心として発展した地。今でもロワール川沿いには140もの美しい古城が残り、ユネスコ世界遺産にも登録されています。

中世の時代、ロワール地方は宮廷文化の開花とともに葡萄栽培とワイン造りも発展。サンセール地区もそのひとつで、このワインの生産者ドメーヌ・デュ・ノゼも男爵の家系。ワインのラベルにも一族の歴史を伝える貴族の館とクルミの木が描かれています。館の周囲には古来よりクルミ(フランス語でノゼ)の木が茂っていたことから、ドメーヌ・デュ・ノゼ(=ノゼの館)というワイナリー名になったといわれます

ロマネ・コンティの哲学をオマージュ ビオディナミ農法を実践

写真 左:重機の重さで土を固めてしまうトラクターを排し、馬で耕作を行うシリルさん。
写真 右:アブラムシなど害虫を駆除するてんとう虫が畑を舞う。
ドメーヌ・デュ・ノゼの現当主は若き3代目のシリル・ド・ブノワさん。シリルさんの母はかの有名なドメーヌ・ド・ラ・ロマネ・コンティの共同経営者であるオーベル・ド・ヴィレーヌの妹。つまり彼は甥にあたります。大地を守り宇宙と自然の流れの中でワイン造りを行う叔父の哲学を深く尊敬し、ロマネ・コンティと同じビオディナミの自然方法を2011年から実践しています。

ビオディナミ農法は、化学肥料や農薬を一切使わず、畑は馬で耕作し、月の満ち欠けに従って農作業を行います。葡萄樹と葡萄樹の間には害虫を防ぐハーブを植え、益虫のてんとう虫が害虫を食べることで、防虫剤などの農薬を排除。また牛糞や水晶の粉、イラクサやカモミールなどのハーブの煎じ液を肥料として、畑に与えることで化学肥料を排し、大地を守り葡萄の味わいを最大限に生かしたワイン造りを行っています。

祖先の土地を再生した祖父の想いを継ぎ 宇宙と一体化したビオディナミ農法

写真 左:畑のお手伝いをしながら、無農薬栽培の葡萄を食べるシリルさんの息子さん。
写真 右:美しいバラが咲く畑。バラはブドウよりも繊細で病虫害にかかりやすいため、バラの状態をチェックすることで、ブドウの病虫害をいち早く察知し予防している。
さらに彼がビオディナミ農法を行うのは、単なるロマネ・コンティの物まねではありません。その背景にはシリルさんの祖父と父母が、長年、丹精込めて畑を開墾してきた歴史があります。ブノワ男爵家はフランス革命後、先祖代々受け継いできた土地をやむなく手放します。1970年、それを買い戻して土地を切り開き、念願の葡萄畑を再生させたのが、シリルさんの祖父と父母でした。

使えなくなった古木は抜き、一本一本植え替えてゆく作業は非常に時間がかかり、すべての畑で植え替えが終了したのが2006年。畑を受け継いだシリルさんは、祖父たちが丹精込めた畑を農薬に汚染させずに、しっかりと守り次世代に繋いでいこうと2008年から自然農法のビオロジックを開始。さらに2011年からビオディナミ農法を実践し、2014年にデメターの認証を取得。ワインの味わいもより深くピュアに飛躍してゆきました。

生産本数わずか2000本 ロゼ専用の貴重な区画から生む伸びやかで気品ある味わい

写真:ビオディナミの美しい畑。葡萄樹の畝には、ハーブやマメ科の植物をあえて茂らせ、空気中の窒素を取り込んだり、害虫よけをする。ハーブは最後、刈り取って土に隙き込み堆肥としたり、煎じ液にして畑に与える。
特にこのロゼを生み出す、ピノ・ノワールはたいへん貴重で質が高く、ロゼ専用のわずか0.1haの小さな区画から生まれます。100%ピノ・ノワールで、セニエではなく圧搾法で丁寧にロゼ色を抽出し、天然酵母で醸造しています。

フレッシュなベリーの芳香、優雅で気品ある味わい、ビオディナミならではの柔らかさと優しさを兼ね備えた、辛口で正統派のロゼワインです。アペリティフだけでなく、豚や鶏の肉料理やトマトを使ったパスタや煮込み、中華やエスニックなどにもよく合い、幅広くお楽しみいただけます。春の到来と桜の開花を祝って、ぜひご家族でお楽しみいただきたいワインランク上のロゼワインです。

渋谷 東急フードショーのおすすめ

サンセール・ロゼ ドメーヌ・デュ・ノゼ 2019
(750ml) 3,520円

生産者:ドメーヌ・デュ・ノゼ
生産地:フランス・ロワール地方サンセール地区
葡萄品種:ピノ・ノワール100%
タイプ:ロゼ・辛口・フレッシュでベリー系の香り

ロマネ・コンティの共同経営者のオーベル・ド・ヴィレーヌの妹夫妻が1971年にロワールに設立したドメーヌ。このワインは、ロゼ専用の小さな区画から造られるピノ・ノワール100%のロゼ。ドライでとてもフレッシュで小粒の赤いベリーの香りをもち、骨格がしっかりとした気品ある味わいで、ビオディナミならではのしなやかさも兼ね備えています。和食、トマト系のイタリアン、エビチリなどの中華、タイやベトナムのエスニック料理と、あらゆる料理に合わせやすい柔軟性も魅力。ワンランク上の正統派ロゼワインは、春のお祝いや贈り物にもぴったりです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。