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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

ハリウッドスターに愛されたフランス南西地方のペトリュス
シャトー・モンテュス2007

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

情熱の造り手アラン・ブリュモン 人生を捧げたマディランの復活

真っ白いラベルに描かれた、シャトー・モンテュスのゴールドの文字。シンプルでありながら、精悍な佇まいを魅せるラベルのワインは、フランス南西地方マディランの偉大な造り手、アラン・ブリュモンによって生み出されました。

マディランはボルドーから南へ車で約2時間。ピレネー山脈の北、スペインとの国境近くに位置するワイン産地。豊かな自然と、フォアグラやトリュフなどの多彩なガストロノミーに恵まれた魅力ある土地で、ワイン造りもローマ時代から伝統的に行われてきました。しかし長年、知名度の高いボルドーの影に隠れ、その真価は正当に評価されませんでした。そうした中、この地に生まれたブリュモンさんは、マディランのワイン復活に人生を捧げ、世界が絶賛する素晴らしいワイン造りを目指します。

濃淳で華麗でエレガンス 伝統品種タナが生む「黒いワイン」

1980年、ブリュモンさんはシャトー・モンテュスのワイナリーを創設。まず始めたことは、豊かな自然に恵まれた未開の土地を開墾し、マディランの固有品種「タナ」を復活させたことでした。

「タナは、3000年前のローマ時代からマディランで栽培されてきた伝統品種で、この土地を最も豊かに表現する葡萄です。しかし、一部の生産者が大量生産型のワイン造りを行っていたため、本来のスタイルが失われていました。本来は『黒ワイン』とも称されるように、色調が濃く味わいは濃淳で20年から30年の長期熟成も可能。フランスの小説に出てくる三銃士のように、力強く華麗で熟成とともに深みを増すワインを生み出すのです」と語ります。

環境と生態系を守る 自然的有機栽培

また、タナを植えた土地には、100種類以上の植物や昆虫が生息しており、彼は生態系をそのまま保護して畑を開拓することに努めました。それによって、益虫が害虫を食べるため農薬は必要なく、また土中には数千の微生物が残りそれが葡萄の根に栄養を与えるため、化学肥料をほどこさなくても、自然栽培で健全なぶどうを育てることができる環境を作り上げます。

さらに、「優秀な羊飼いが何百という羊の一匹一匹を大切にしてその個性を理解しているように、私も葡萄の木、一本一本を、いや、一房、一房をじっくり観察しながら愛情を注ぎました。ワイン造りに一番大切なのは、何よりも健全で質の高い葡萄を育てることですから」と語るブリュモンさん。そのためには丹念に葡萄の木を選定し、葡萄ひと房を全て300gの大きさに整え、一株に葡萄を5房から6房しか残さないように収量を制限。大量生産でなく少量で質の高い葡萄を育て上げていきました。このユニークな栽培法を周囲の生産者は「彼はぶどう栽培者ではなく、植木職人だ」と揶揄したこともあったそうです。

トム・クルーズも愛飲 ビジネスクラスのワインにオンリスト

しかし、彼は自らの葡萄栽培とワイン醸造法を若手の生産者に伝え指導するなどしてワイン産地の復興に励みます。その情熱はやがて実を結び、マディランは傑出したタナのワインを生む産地として復活。味わいはボルドーに負けず、コストパフォーマンスは非常に高い素晴らしいワイン産地として世界に知られるようになりました。

さらに、ブリュモンさんが造るこの、シャトー・モンテュスは、遠くアメリカからトム・クルーズが自家用ジェットで買いに訪れるワインとして話題になり人気は沸騰。1991年にはフィガロ誌にてフランス最高の生産者として選出され、1997年にはナポレオン1世により制定されたフランス最高の勲章である「レジョン・ドヌール」を授与されています。

東急フードショーおすすめ

シャトー・モンテュス2007
3,255円

生産地:フランス南西地方マディラン
生産者:ドメーヌ・アラン・ブリュモン
葡萄品種:タナ80%、カベルネ・ソーヴィニヨン20%
タイプ:赤・辛口・フルボディ
輸入元:三国ワイン株式会社


マディランの伝統品種タナの素晴らしさを世界に知らしめた、アラン・ブリュモンが造る情熱のワイン。黒いワインと称されるほど濃い色調をもち、凝縮感に満ち濃淳でありながら非常にエレガント。気品ある風味と緻密なタンニン、豊かなプラム、カシス、ブラックベリーのような果実味が心地よく口内に広がり、余韻にはダークチョコレートやミントのニュアンスが続きます。エールフランス航空のビジネスクラスのワインにも選出され、トム・クルーズが自家用ジェット機で買い付けたことでも話題になった逸品。非常にコストパフォーマンスに優れたこのモンテュスは、牛肉のステーキ、ジビエ料理、ロックフォールチーズ、ビーフシチュー、すき焼きなど、冬の夜にゆっくりと楽しみたいワインです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。