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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

フランスの庭ロワールが生む癒しの自然派ワイン
ブルグイユ・ジュール・ド・ソワフ2005

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

古城と緑豊かな自然 風光明媚なワイン産地

フランス中部にあり、「フランスの庭」とも呼ばれるロワール地方。シノン、ブロワ、シュノンソー城など、王侯貴族が暮らした優雅な古城が点在し、その周囲には美しい丘や小川、緑豊かな森が広がります。また、全長1000㎞にも及ぶフランス最長のロワール川流域は、フランス屈指のワイン銘醸地。今回は風光明媚なロワール地方の魅力と、今、最も注目を集める自然派ワインをご紹介しましょう。

軽やかで繊細な美味しさ 「渇きを癒す」ジュール・ド・ソワフ

ワイン名は「ジュール・ド・ソワフ」。フランス語で「渇きの日」を意味するように、その味わいは、軽やかでジューシーでありながら非常に繊細で、のどの渇きを優しく癒してくれる美味しさです。ラベルも非常に印象的。一見すると水墨画のようでもあり、よく見るとミロの絵画のようにモダンでもあり、グラスに注がれたワインの赤と、太陽の黄色がアクセントになり不思議な世界観を感じさせます。

このワインの生産者は、ピエール・ゴーティエ。カベルネ・フランの銘醸地でもあるブルグイユに15haの畑をもつ自然派の素晴らしい造り手です。葡萄畑では殺虫剤や除草剤や化学肥料は一切使わず、土のすき返しも機械ではなくすべて手作業で行い、空気をふんだんに含んだふわふわと柔らかい畑を造り上げます。そのため土中には自然の微生物が生き、ワインの樹に栄養と力を与えています。また土壌自体も素晴らしく、地上30センチが石灰粘土質で、その下は固い石灰層の岩盤。そのため出来あがるワインは、石灰由来の生き生きとしたミネラルと爽やかな果実味を備えています。

自然を愛し大地とともに生きるピエール・ゴーティエ

さらに何よりも素晴らしいのは、造り手であるゴーティエ氏の、葡萄栽培とワイン醸造に対する姿勢です。彼は一年の大半を畑仕事に費やし、バカンスもとらずに丁寧に葡萄を育て上げます。この地域はヴィンテージによっては、畑仕事を怠る生産者には厳しい年となりますが、そのような年であってもゴーティエ氏は見事なワインを造り上げてきました。

たとえば、1999年は葡萄の房がたくさん付きすぎ、グリーンハーヴェストをして収量を抑えなかった生産者は色の薄い水っぽい葡萄になった年でした。しかし彼は、一本のぶどうの樹に5つの芽だけを残すように丁寧に剪定し、早い段階からグリーンハーヴェストを行って収量を抑えました。さらに収穫時も徹底した選果を行い完璧な葡萄を収穫し、ピュアでナチュラルな果実味を追求しています。

このように化学的なものは一切使わず、懇切丁寧な栽培と醸造によって造り上げた彼のワインは、ピュアでナチュラルな美味しさとなめらかで甘い果実の風味が魅力。そしてワインのラベルも、自然を尊重し大地とともに生きる彼の姿勢を表すべく、友人の画家が彼のために描いたデザインといわれています。

王侯貴族も魅せられた ロワールの美食と多彩なワイン

フランスの庭と讃えられるほど温和な気候と豊かな農産物に恵まれたロワール地方。中世には王侯貴族がこぞってこの地方に城を構えたのも、ロワールのワインと豊かな食材から生まれる美食に魅せられたからでしょう。

全長1000kmにも及ぶロワール河流域に広がる、ワイン産地は大きく3つの地区に分かれ、生まれるワインも多彩です。海の影響を受ける河口付近は、きりっとキレのある酸が特徴のミュスカデの白ワインが生産され、川魚やホタテやカキなどの海の幸と楽しまれています。また中流のアンジュ・ソミュール地区は、香り高いソーヴィニヨン・ブランやシュナン・ブランの白ワインや発泡酒が、地元名産の山羊のチーズと親しまれ、ガメイやカベルネ・ソーヴィニヨンなどの軽やかな赤やロゼワインも生産されます。

さらに上流のトゥーレーヌ地区はカベルネ・フランやピノ・ノワールから生まれる、まろやかで芳醇な赤ワインが、地元名産のきのこ料理、うなぎの赤ワイン煮、豚肉のリエットなどの郷土料理と楽しまれています。いずれも柔らかく優しい味わいが多いロワールのワイン。これからの季節は、お花見や気軽なホームパーティなど、春を楽しむシーンにもふさわしく、どのような料理とも合わせやすい親しみある魅力を備えています。
(取材&写真協力:フランス農水省関連団体フランスアグリメール、野村ユニソン)

東急フードショーのおすすめ

ブルグイユ・ジュール・ド・ソワフ2012
2,100円

生産者:ピエール・ゴーティエ
生産地:フランス・ロワール地方ブルグイユAOC
葡萄品種:カベルネ・フラン100%
タイプ:ミィデアムボディ辛口赤
輸入元:野村ユニソン

徹底した間引きと収穫時の選果を実践し、バカンスもとらず一年の大半を畑仕事に費やすピエール・ゴーティエ氏が造る渾身の一本。殺虫剤や化学肥料を一切使わない自然派の生産者で、自然を尊重しひたすら大地と向き合うことで生まれたワインは、非常にピュアでナチュラル。「ジュール・ド・ソワフ=喉の乾く日」を意味するように、ごくごく飲める軽やかで口当たりの優しいカベルネ・フラン100%ワインです。スムーズで赤い果実の風味が印象的、軽快でありながら非常に繊細で、清らかな余韻が心地よく続きます。温かくなる春やお花見の季節にぜひとも楽しみたい赤ワインです。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。