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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

現代絵画をラベルにしたその意図は?
ルーウィン・エステート・アートシリーズ・リースリング

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

ワインの中で愉快に泳ぐカエルくん

ラベルに描かれているのはユニークで色鮮やかなカエルの絵。瓶の緑色とも相成り、リースリングワインの中で幸せそうにカエルが泳いでいるようにも見えます。このワインを生み出したのは、オーストラリアのマーガレッド・リヴァーを代表する、著名な造り手「ルーウィン・エステート」。マーガレッド・リヴァーは、人気の観光地パースにも近く、今ではプレミアムクラスの高級ワインを造る銘醸地です。1960年代、ぶどう畑などまだない時代に、この地を開発したのが、ルーウィン・エステートの創業者であるデニス・ホーガンさんでした。

オーストラリアマーガレッド・リヴァーの開拓者

ホーガンさんは、若くして成功を収めた会計士でしたが、1969年に大好きなサーフィンの名所であるマーガレッド・リヴァーに別荘と広大な牧場を購入します。温暖な海沿いの地域でありながら、夏の夜間は涼しい海風が吹き、避暑や別荘地にはもってこいの場所。こうした気候風土は葡萄栽培にも最適で、やがてこの土地に注目した、カルフォルニアの有名醸造家ロバート・モンダヴィの勧めでワイナリーを創業。最新鋭の設備を設けて、モンダヴィをコンサルタントに迎え地元の醸造チームと一丸となって、最高品質のワインを生み出していきました。

高品質ワイン「アートシリーズ」が世界へ

ホーガンさんは「愛する土地のテロワールを表現する伸びやかで、果実味あふれる高品質のワイン造りを目指しました。しかし、それだけではワインは売れません。当時、マーガレッド・リヴァーはデリカテッセンに行っても、ろくなソースも置いていない、グルメとはほど遠い土地柄でした。そこで私はレストランを開店して、食事とともにワインを楽しんでもらおうと、ワインツーリズムを始めました。さらに、大都会から離れたマーガレッド・リヴァーのワインの素晴らしさを知ってもらうために、ラベルに現代絵画を採用した『アートシリーズ』のワインを造り、世界の市場にアプローチしていきました」と語ります。

シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、リースリング、メルロなど品種ごとに異なる美しい絵画をラベルに配したユニークなワインは、やがて世界中に知られるように。今ではその美味しさも相まって多くのワイン愛好家の心をつかんでいます。アートシリーズのワインは「BMWの価格で買えるロールスロイス」と言われるほど、コストパフォーマンスに優れ、中でもリースリングは非常に端麗でキリっとした酸味と果実味のバランスがよく、完成度が高い逸品。葡萄は自然農法で丁寧に栽培されています。

ラベルは4種 どれが届くかお楽しみ

ラベルには地元オーストラリアのアーティストである、ジョン・オルセンの絵画「FUROGS IN RIESLING」を採用。名前のごとくリースリングの中でカエルが幸せそうに泳いでいる様子がとてもユニークです。実はこのカエルくんのラベルは、デザイン違いで4種類あります。どのラベルが手元に届くか楽しみにしている愛好家や、4種類を同じヴィンテージで集める収集家もいて、ワインの美味しさとともに、見て楽しむわくわく感にあふれています。

最後に、ルーウィン・エステートではワイナリーツアーの他に、毎年、世界的に有名なオーケストラやアーティストを招いての野外コンサートが開催され、音楽を楽しみながら、洗練されたオーストラリアキュイジーヌの料理とワインを堪能できます。ワインツーリズムのメッカに、是非一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

東急フードショーのおすすめ

ルーウィン・エステート・アートシリーズ・リースリング2012
2,700円

生産者:ルーウィン・エステート
生産地:オーストラリア マーガレッド・リヴァー
葡萄品種:リースリング100%
タイプ:白・やや辛口
輸入元:ヴィレッジ・セラーズ

1970年代にオーナー夫妻が設立したオーストラリアの名門ワイナリー。マーガレッド・リヴァーを高級ワイン産地として世界に知らしめたパイオニアでもあります。南半球で最も近代的な醸造設備を有する一方で、葡萄栽培は自然農法にこだわり、常に収量を抑えて葡萄の品質を高め、自然とのバランスを重視しています。品種ごと異なる絵画をラベルに配したアートシリーズの中で、このリースリングは最もコストパフォーマンスに優れた逸品。非常に鮮度の高い、生き生きとした味わいはまさにリースリングの真髄を感じさせる美味しさ。白い花の香りに、レモン、ライム、のフレーバーが美しく、後味に心地よいミネラルと、長い余韻が感じられます。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。