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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

娘の髪色を名づけた濃潤で気品あるローヌの銘酒
コート・ロティ・ブリュンヌ・エ・ブロンド・ド・ギガル2009

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史や興味深いエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

教皇が繁栄させた歴史あるローヌワイン

秋も深まる季節には、濃厚で芳醇なワインを美味しい料理とともに楽しんでみてはいかが。今回は太陽の恵みを享受して濃潤で果実味あふれるワインを生みだす、フランスのコート・デュ・ローヌ地方と偉大な造り手ギガルのワインのご紹介をしましょう。

コート・デュ・ローヌ地方はフランスの南東部にあり、北はリヨンから南はアヴィニヨンまでのローヌ河流域に広がるぶどう栽培地域です。フランスではボルドーについで2番目のワイン生産量を誇る産地。14世紀に、アヴィニヨンに法王庁が移され、歴代の教皇が葡萄栽培に力を尽くしたことから、質の高い素晴らしいワインが生まれるようになりました。


北南で異なる個性 ミストラルが健全な葡萄を

大きな特徴は生産地が北部と南部に分かれ、ローヌ河に沿って葡萄畑が広がっていること。それぞれに個性豊かな魅力的なワインが生まれています。北部は河沿いの陽当りのよい急斜面で葡萄栽培が行われ、シラーやヴィオニエが主要栽培品種。ワインの多くは葡萄をブレンドせずに造られます。濃厚ですがタンニンがなめらかで、美しい酸と引き締まった果実味のエレガントなスタイルが特徴。一方、海に近い南部は、温暖な地中海性気候の影響で、様々な葡萄品種を栽培。ワインも多くの品種をブレンドして造られ、豊かな果実味を備えた、ふくよかで芳醇なスタイルのワインが生まれます。

特性が異なる北部と南部ですが、共通しているのが、ローヌ渓谷から地中海へ吹き抜ける「ミストラル」という北風。ミストラルは冷涼で非常に乾燥している風で、雨の後に畑を乾燥させ、葡萄の病気を抑える役割もはたしています。そのため、ローヌ地方は減農薬で葡萄を育てることができ、さらに、農薬や化学肥料を使わない有機栽培の畑面積もフランスで最大で、ここ5年間でも30%増となっています。

ギガルのラベルに描かれた北ローヌ特有の風景

北部ローヌには、エルミタージュ、コート・ロティ、サン・ジョセフ、コンドリュー、コルナスなど、際立った個性の質の高いワインを生むクリュ(特定地区)があり、ギガル、シャプティエ、ポール・ジャブレ、ジャン・ルイ・シャーヴなど、世界に名を馳せる素晴らしい生産者が台頭しています。

中でも東急百貨店でお勧めしたいのが、ギガル社の「コート・ロティ・ブリュンヌ・エ・ブロンド・ド・ギガル2009」です。ワインのラベルには、悠々と流れるローヌ河とその両岸に広がる葡萄畑、まさに北ローヌを象徴する風景が描かれています。ギガル社のこのワインは、ロバート・パーカーが絶賛したことから、今日非常に知名度の高いワインとなりましたが、味わいの素晴らしさとともに、歴史的にも興味深い逸話で彩られています。


コート・ロティは太陽が照りつける「焼けた丘」

まず、ワインが生まれるコート・ロティは「焼けた丘」を意味するように、ローヌ河右岸の急斜面にある非常に陽当りに恵まれたクリュで、ローマ時代から銘醸地として知られてきました。またワイン名の「ブリュンヌ」と「ブロンド」にも、有名な逸話が残されています。昔からコート・ロティには土壌の異なるふたつの丘がありました。この地の領主モジロン伯爵は、これらの丘を髪の色が違う二人の娘に分け与えましたが、一人は茶色(ブリュンヌ)、もうひとりは金色(ブロンド)の髪であったことから、丘の名前もコート・ブリュンヌとコート・ブロンドと名付けたといわれています。素晴らしい葡萄を生む地区として知られ、ワインの中にもふたつの丘の葡萄が使われています。

世界の料理と楽しむ親しみやすさ

ローヌ地方では、このように特定地区から生まれるクリュの高級ワインの他にも、毎日の食卓で気軽に楽しむことができる、親しみやすいワインもたくさんあります。例えばAOCコート・デュ・ローヌの赤ワインは、円みがありカシスやラズベリーの果実味、白ワインは柔らかで花のような香り、ロゼワインはチャーミングでイチゴのような風味が魅力です。

ローヌワイン委員会では、ローヌワインと食の楽しみを提案する活動を積極的に行っており、マーケティング部長のオリヴィエ・ルグランさんは「親しみやすくまろやかさがあるローヌワインは、料理との汎用性が高く、和洋中エスニックなど世界の様々な料理と楽しむことが出来るのも大きな魅力です。また、手頃な価格でも非常にコストパフォーマンスに優れたワインが多いので、様々な料理と合わせて楽しんでください」と伝えています。

ローヌワイン委員会お勧め 韓国料理とのマリアージュ

南仏の郷土料理であるラタトゥイユやブイヤベース、トマトやオリーヴやハーブを使った料理やビーフシチューやハンバーグにも。さらに、赤ワインはとんかつや焼き鳥、うなぎの蒲焼などの和食にも。また、豚の角煮や麻婆豆腐や点心などの中華料理とも楽しめます。さらに、ユニークなマリアージュとして、日本でもポピュラーになった韓国料理ともよく合います。例えば海鮮チジミやワタリガニの醤油漬けカンジャンケジャンなどは、花のような芳香のヴィオニエや、フレッシュなルーサンヌの白ワインと。チャプチェや豚の三枚肉のサムギョップサル、スパイシーなズンドゥブチゲは、濃潤で力強いシラーやグルナッシュの赤ワインと楽しむことができます。

ルグランさんは「ローヌワインはまろやかさの中にも、太陽をたっぷり浴びて完熟した葡萄由来のスパイシーさも感じられるので、同じく唐辛子やコチュジャンを使ったスパイシーな韓国料理ともよく合い、お互いの風味を引き立て合います」と語ります。秋も深まり寒さも増す季節は、体も心も温まる韓国のお料理とローヌワイン。ユニークなマリアージュを楽しんでみてはいかがでしょうか。

東急フードショーのおすすめ

コート・ロティ・ブリュンヌ・エ・ブロンド・ド・ギガル2009
(750ml)7,020円

生産者:E ギガル
生産地:フランス コート・デュ・ローヌ地方コート・ロティ地区
葡萄品種:シラー96%、ヴィオニエ4%
タイプ:赤フルボディ

ギガル社の創業は1946年。わずか半世紀にして急成長を遂げた、北ローヌ有数の生産者です。コート・ロティは北ローヌでも特に優れた銘酒を生む、クリュ(特定地区)に認定された生産地区。その名前は「焼けた丘」を意味するように、小高い丘の急峻な斜面に葡萄畑が広がり、南仏の太陽をたっぷり浴びた素晴らしい葡萄が産出されます。ここには土壌の異なる二つの丘があり、この地の領主が、栗色(ブリュンヌ)と金色(ブロンド)の髪の愛娘に分け与えたことから名づけられました。このワインにも、二つの丘の葡萄がバランスよくブレンドされています。平均樹齢35年の古木の葡萄を、減農薬農法リュット・レゾネで栽培。手積み収穫後、野生酵母で発酵、36ヶ月もの長い樽熟成を経て瓶詰めされます。そのため、オーク樽由来の気品あるバニラ香、円やかなタンニン、ブラックベリーのような小さな赤い果実のアロマとスパイシーなフレーヴァー、凝縮感のある豊かな果実味と濃潤で気品ある味わいが魅力です。ワインは抜栓してデカンタージュするか、飲む1、2時間前に栓を開けるなど、しばらく空気に触れさせるとことで、より豊かな風味を楽しむことができます。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。