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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

偉大な未亡人が発展させたシャンパーニュ
ヴーヴ・クリコ・イエローラベル・ブリュット

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

品質はただひとつ、最高級だけ

鮮やかな黄色のラベルで有名な「ヴーヴ・クリコ・イエローラベル・ブリュット」。心地よい爽やかさと際立ったフルーティ感で、多くの人に愛される最もポピュラーなシャンパーニュといえるでしょう。ヴーヴとは未亡人を意味し、その名の通り27歳の若さで夫を亡くしたクリコ夫人が発展させたシャンパンハウスです。

クリコ夫人は1790年、シャンパン事業を立ち上げたばかりの若い実業家フランソワと結婚します。ところが、そのわずか1年半後に夫が急死。時代はフランス革命の真っただ中、経済的にも最悪の混乱の時代でした。しかし夫人は夫の遺志を継ぎ、「品質はただひとつ、最高級だけ」という信念に基づいて、会社を大きく発展させていこうと決意します。

透明のシャンパーニュを発明

彼女の素晴らしいところは、非常に研究熱心であったこと。当時のシャンパーニュは今とは違って、ボトルの中に澱(おり)を含んでいたため、透明感がなく濁っていました。そこで夫人は自宅のテーブルに穴を開け、ボトルを逆さにしてビンの口に澱を集める台「ピュピートル」を発明。これによって初めて透明なシャンパーニュを造ることに成功したのです。

この台に入れたボトルを、毎日1/8ずつルミアージュ(手で回すこと)しながら、少しずつ澱を瓶口に集めて、氷点下で凍らせて取り除くという、画期的な製法を編み出したのです。

キャップシールにも描かれる「ラ・グランダーム」

やがて夫人は、果敢にロシアの貴族に営業をかけ、透明のシャンパーニュはロシア宮廷で広く愛飲されるようになりました。当時、ロシアの詩人プーシキンは「ロシアの上流階級は、クリコしか飲まないほどだ」と語ったほど人気のシャンパーニュとなりました。

さて、クリコ夫人が事業を受け継いだときは、年間わずか5万本の生産量でしたが、89歳で死去する際は年間300万本にもなっていました。ヴーヴ・クリコ社では、その功績をたたえて、彼女の晩年の面影を今もボトルのキャップシールに描いています。

特許を取得した独特の黄色い色調

時代の流れをいち早く読み取り、視野の広さと行動力でシャンパーニュの発展に努めたクリコ夫人。彼女は「ラ・グランダーム(偉大な女性)」と呼ばれ、この名前は1972年から造られている同社の最高級品、プレステージ・シャンパーニュの名前にもなっています。「ラ・グランダーム」のボトルは長いネックの美しい曲線が特徴ですが、クリコ夫人が大変気に入っていたボトルの形状を再現したものといわれます。

さらに、イエローラベルに使われている黄色は、同社のシンボルともいえる色で、実はヴーヴ・クリコ社が特許を取得し、同じ業種ではこの色は使えないことになっています。毎年、このクリコ・イエローをモチーフとした期間限定グッズも発売されています。独特のオレンジかかった鮮やかな黄色は、クリコ夫人のエネルギッシュなパワーを伝えているかのよう。見ているだけでも元気になれる色調です。

東急フードショーのおすすめ

ヴーヴ・クリコ イエローラベル・ブリュット
(750ml)7,236円

生産地:フランス・シャンパーニュ地方
葡萄品種:ピノ・ノワール、シャルドネ・ピノ・ムニエ
味わい:発泡・白・辛口

フレッシュ感と際立つ果実感
50区画の畑のキュヴェをブレンド
ヴーヴ・クリコ社の顔ともなるイエローラベル・ブリュットには、3種類の葡萄が使われています。主体となるピノ・ノワールがしっかりとした骨格を作り、わずかにブレンドするピノ・ムニエがまろやかさを、そして、1/3ほど使用されるシャルドネが優雅な気品をもたらし、繊細で優美なバランスのシャンパーニュを造り上げています。特級格付けと一級格付けの葡萄を主体に、50にもおよぶ異なる畑のワインがブレンドされています。味わいは、キレのあるフレッシュ感と際立つ果実感が印象的。白い花や赤い果実、時間とともにブリオッシュのような複雑な芳香も感じられ非常にエレガントです。新年を祝う乾杯に、食欲を誘う食前酒として、また、お刺身やシーフードサラダなどの魚介料理に、幅広くお楽しみください。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。