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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

愛を伝えるハートのラベル シャトー・カロン・セギュール2011

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

「我が心はカロンにあり」セギュール侯爵の深い愛情を表現

2月はバレンタインデーにふさわしく、ラベルに愛のメッセージが込められたワインをご紹介しましょう。愛をテーマで思い浮かぶワインといえば、ラベルに大きなハートが描かれていることで有名なカロン・セギュールです。ボルドーのメドック地区サンテステフ村にある歴史あるシャトーで造られ、1855年のメドック格付けでは第3級に認められた実力派ワイン。ラベルの愛らしさだけでなく、味わいの素晴らしさにおいても広く知られています。

18世紀に、このシャトーを所有していたセギュール侯爵は、他にも、シャトー・ラフィット・ロートシルトやシャトー・ラトゥールなどの偉大なシャトーを所有していました。どちらもメドック格付けでは第1級を獲得した最高位のワイン。第3級のカロン・セギュールより、高いランクに格付けされていました。にもかかわらず侯爵は、当時友人たちにはっきりとこう伝えます。

「我、ラフィットやラトゥールを造りしが、我が心カロンにあり」。

つまり、他の素晴らしいどのワインより、私はカロンを一番愛しているんだよ…と公言したのです。後に侯爵はさまざまな事情により、所有するいくつものシャトーを手放さなくてはいけないことになります。しかしシャトー・カロン・セギュールのみは、手放すことなく最後まで大切に所有し続けました。こうした逸話から、ラベルには大きなハートマークが描かれるようになり、侯爵の深い愛情は今もラベルの中で生き続けています。

1級シャトーにも匹敵する優雅で濃潤な味わい

カロン・セギュールのワインは、ハートをモチーフとしたラベルデザインにより女性らしいイメージを抱きますが、実は香り高く豊満で力強さを秘めています。またその畑は、メドック地区の最北端に位置し鉄分が多い石灰岩が堆積するため、ワインは優雅さを合わせもち、色調が濃くミネラルが豊かなことも特徴です。

シャトーは1970年代に方向性を見失った時期もありましたが、1980年代に入り優秀なコンサルタントを招き、畑の改革、醸造設備の刷新などを精力的に行い、見事に復活をとげました。現在では1級シャトーに匹敵する評価を得るようになり、毎年安定して素晴らしいワインをリリースしています。

愛をテーマに特別ワインも

なお東急フードショーのワイン売場では、バレンタインやホワイトデーの時期には、愛をテーマにしたワインや、この時期だけの特別ラベルのワインなどもご用意しています。例えば、1986年のパリテイスティング会で、ボルドーの1級シャトーを凌駕した、カリフォルニアの『クロ・デュ・ヴァル』の特別ボトルもその一つ。エッチングボトルのラベルには、真紅のハートマークと「Just for you(あなたの為だけに)」の文字が描かれています。大切な方への贈り物や記念日に、さりげなく愛のメッセージを伝えるワインを贈ってみてはいかがでしょうか。

東急フードショーのおすすめ

シャトー・カロン・セギュール2011
ハーフボトル(375ml)5,616円

生産地:フランスボルドー地方メドック地区サンテステフ村
葡萄品種:カベルネ・ソーヴィニヨン78%、メルロ20%、プティ・ヴェルド2%
タイプ:赤フルボディ

近年ボルドーでは、早飲みも可能で凝縮感を基調としたモダンなスタイルにシフトするシャトーが多い中、カロン・セギュールは濃潤で熟成によって花開く、クラシックなボルドースタイルを追求するシャトーです。若いうちはタンニンが豊富でスパイシーな特徴もありますが、熟成が進むにつれエレガントで滑らか、そして複雑味が増してゆきます。濃いダークルビーの色調、ブラックベリーの甘い香り、ほのかに森の下草やハーブの芳香も備えています。ふくよかで濃厚でありながら、豊かな果実味とほどよい酸味をもつ、優雅で気品ある味わい。あと10年以上熟成の可能性がありますが、若いうちにお飲みになる場合は、1時間位前に抜栓をしてデカンタージュしてから楽しむことをお薦めします。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。