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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

悲しい戦争の歴史を偲ぶ美しいワイン
ウインダウリ サクラシラーズ2011

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

なぜ、桜SAKURAなのか?

淡い桃色のラベルには、春の訪れを感じさせるような美しい桜の花が描かれています。その名前は『サクラシラーズ』。このワインはオーストラリアのニューサウスウェールズ州カウラ地区のウインダウリ・エステートで造られました。温暖な気候で、畑にはカンガルーやうさぎが走り回るほど豊かな自然に恵まれたワイナリー。しかし、日本とは遠く離れた土地のワインに、優美な桜の花が描かれているのは何故なのでしょう。桜のラベルには、悲しい歴史を偲ぶある秘話が込めています。

悲しい歴史 カウラの大脱走

1944年第二次世界大戦中、カウラの地では、捕虜になっていた日本兵1000人が大脱走を企て200人以上もの死者を出した事件がありました。収容所では、日本兵の生活は過酷なものではなく、むしろ極めて人道的な扱いがなされていたといわれています。トマトや葡萄栽培を行いながら、休日には野球や相撲などのリクレーション活動も自由に許されていました。

しかし、戦争当時の日本軍には「生きて虜囚の辱めを受けず」、つまり「捕虜になることはこの上もない恥辱だから、敵に捕まるくらいなら自決しろ」という厳しい教えがありました。こうした戦陣訓にとらわれた捕虜たちは、集団自決を行うために「生きるためではなく、死ぬための脱走」を企てます。その結果、200名もの死者を出す悲劇が起こってしまったのです。

日豪友好と平和の祈りを込めて

カウラ地区の人々はこの事件を悲しみ、命を落とした日本兵を手厚く葬り、戦後には日本との友好関係を深めるために本格的な日本庭園や日本文化センターを作りました。また、日本人墓地から日本庭園までの5kmの間に約2000本もの桜を植え、毎年10月には桜まつりが行われています。さらに、地元ワイナリーのウインダウリでは、日豪友好と平和への想いを込めて、「ウッドブロック サクラシラーズ」を造り上げ、そのラベルに桜の花を描いたのです。

また、このワインに使われているシラーズの葡萄は、オーストラリアを代表する固有品種。日本の桜とオーストラリアの葡萄が一つのボトルに込められた、両国の架け橋ともいえるワインです。桜の季節には、爛漫な春を思わせる、芳醇でエレガントな風味をぜひお楽しみください。

東急フードショーのおすすめ

ウインダウリ サクラシラーズ2011
(750ml)3,456円

生産地:オーストラリア ニューサウス・ウエールズ州
葡萄品種:シラーズ100%
味わい:赤・辛口・ミディアムボディ
輸入元:ヴァイアンドカンパニー

ウインダウリのワイナリーはオーストラリアのシドニーから車で西に5時間。温暖な気候に恵まれたカウラ地区初のブティック・ワイナリーです。広大な600haの畑は、野鳥や野うさぎやカンガルーが走り回る豊かな自然に恵まれ、殺虫剤は一切使用せず、葡萄はできる限り自然な形で栽培されます。収穫後は厳しく選果を行い、約40%の優良な葡萄のみ自社ワインとして醸造。家族全員がワイナリーの運営に携わり、土地の力を表現した素晴らしいワインを生み出しています。春になるといっせいに咲き誇るカウラの桜をラベルに描いた「サクラシラーズ」は、美しく熟した赤い果実の風味、樽熟成由来の繊細なオーク香を備えたエレガントなワイン。お花見の季節や春の門出にふさわしい、華やかで優美な味わいをお楽しみください。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。