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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

黄金色の色調溢れるミネラル感
シャブリ・プルミエ・クリュ・モンマン2013
ドメーヌ・ウィリアム・フェーブル

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

シャブリ地区固有のキンメリジャン土壌がもたらすエレガンス

フランスのブルゴーニュ地方北部に広がる、シャブリの葡萄畑。そこは唯一無二のテロワールによって、偉大な白ワインの産地として知られています。今回は白ワインの王者ともいわれる、透明感とミネラル豊かなシャブリの魅力と偉大な生産者ドメーヌ・ウィリアム・フェーブルについてご紹介しましょう。

今年6月に来日した、シャブリワイン委員会会長のルイ・モローさんは、「シャブリの味わいの大きな特徴は、透明感、清廉さ、繊細さ、そして溢れるミネラル感。高貴品種であるシャルドネのみで造るワインは、黄金色に輝く色調、溌剌とした酸と美しい果実味、キレと深みが渾然一体となったエレガンスに溢れています。こうした品格ある素晴らしい味わいは、シャブリならではの特別な土壌に由来するものといわれています」と語ります。

遥か1億4千年前、シャブリの土地は、海の底にありました。その後、長い長い年月をかけて海底が隆起し、さらに海流で運ばれた土砂が堆積して、現在の土地が出来あがりました。そのためシャブリの土壌は、貝やカキ殻の化石を含むキンメリジャンの石灰質土壌が中心となっています。葡萄の根が、土壌に含まれる貝殻由来の成分を吸収することで、シャブリ特有の豊かなミネラル感と溌剌とした酸が生まれるといわれています。またこうした理由から、シャブリはカキなどの魚貝類に非常によく合うワインとしても有名です。

シトー派の修道士が発展させた葡萄栽培
シャブリのスペシャリスト ウィリアム・フェーブル

シャブリの歴史は、今から1600年前、プロビュス皇帝がローマ時代から行われていた葡萄栽培を復活させて、ワイン造りを行ったことから始まります。12世紀には、シトー派の修道士が栽培と醸造技術を発展させ、今でも修道士が掘り造った古いカーヴが大切に保存されています。

数多あるシャブリの生産者の中でも、東急フードショーが特におすすめするのが、シャブリのスペシャリストともいわれる、ドメーヌ・ウィリアム・フェーブルです。

ウィリアム・フェーブルは1850年創立の歴史ある生産者。ワインのボトルには同家の家紋が描かれ、シンプルで清楚なラベルがエレガントな味わいを感じさせます。先代のフェーブル氏はシャブリ生産組合の理事長として地域に尽力、新世界の白ワインが「シャブリ」の名前を乱用していることに対して、断固たる反対運動を展開しました。

この地域の葡萄栽培の最大の悩みだった春の遅霜対策として、畑でオイルストーブを焚く方法を開発したのも彼でした。しかし、1998年後継者のいないフェーブル氏は、ドメーヌをシャンパーニュの名門であるアンリオ家に譲渡。そこからドメーヌの新たな歴史が始まりました。

フェーブルから受け継ぐ天才醸造家 新しいシャブリのスタイルを提唱

アンリオ家が新生ウィリアム・フェーブルの醸造責任者に任命したのは、当時若干31歳という若き天才ディデエ・セギエ氏。セギエ氏は、1998年の収穫のわずか1週間前に抜擢されたばかりでしたが、それまで機械で行っていた収穫を手摘みに急遽変更する(当時シャブリでは手摘みは珍しく、大手ドメーヌで行っているところはなかった)など、次々と改革を行ってゆきます。

さらに、かつては新樽を多用していたフェーブル氏の時代から一変して、あえて新樽を使用しないことを選択します。それによって、ワインはより透明感を感じさせるスタイルとなり、フランスで最も権威あるワインガイド誌『ラ・クラスマン』から「最もピュアで最もエレガントな白ワインを造る生産者のひとつ」との評価を得ることとなり、最高評価の3つ星を獲得しました。


ビオロジックの自然農法を導入 ワインはよりエレガントに

2008年からセギエ氏は、化学肥料や農薬を使用しないビオロジック栽培をはじめ、2011年には47haの全ての畑に導入しています。収穫畑は80区画に分けて管理し、区画ごとに果実の成熟度を判断し、すべて手摘みで行われます。収穫には小型のケースを使用し、葡萄の実が潰れないように丁寧に運びます。

醸造においても、ピュアな果実味を大切にすることから、葡萄果汁にストレスを与えないよう丁寧に行います。葡萄果汁はポンプなどを使わず重量によって自然に移動、プレス果汁は低温にて軽く清澄。樽の風味が強く現れてしまう新樽は使用せず、ステンレスタンクと数年使用した樽を巧みに使いわけながら、シャブリらしいフレッシュ感とミネラル感を表現しています。

シャブリの夏の楽しみ方 豊かなミネラルは和食にもピッタリ

さて、シャブリには4つの階層のアペラシオンがピラミッド式に存在し、下から『プティ・シャブリ』『シャブリ』『シャブリ・プルミエ・クリュ』『シャブリ・グラン・クリュ』に区分されています。シャブリ委員会会長のルイ・モローさんは「各階層には法律で規定された生産範囲と特別な葡萄栽培条件があります。味わいにもそれぞれ個性があり、合わせる料理やシチュエーションによって、上手に飲み分けながら楽しんでみましょう」と伝えます。

フレッシュで果実味豊かなプティ・シャブリやシャブリは、魚のフライ、サラダや前菜などのアペリティフ、また和食によく合い、中でもシャブリは豊かなミネラルを備えるため、同じくミネラル豊富な夏の岩カキや貝、サーモンの刺身などとよく合います。

シャブリ・プルミエ・クリュは、厳選された40のクリマ(区画)から生まれ、フローラルで優雅な味わい。樽を使って熟成させることが多いため、複雑性と気品があり、生よりも火を通した魚貝料理と合い、カレイや真鯛の塩焼き、ホタテやエビのフライ、照り焼きやソテーなどの鶏肉料理、とんかつなどの豚肉料理とも合います。

シャブリ・グラン・クリュは最も優れた7つの特級畑から生まれ、生産量全体の2%の希少ワイン。ソースを使ったフレンチの他、和食にもよく合い、伊勢えびのお造り、蟹のあんかけ、和牛の炭火焼、夏野菜の天ぷら、ウニを添えたごま豆腐、寿司や懐石料理など、高級で新鮮な食材を緻密に調理した料理によく合います。

暑い夏はミネラル豊かでフレッシュな果実味を備えたシャブリワインを、さまざまなお料理と合わせて楽しんでみてはいかがでしょうか。

東急フードショーのおすすめ

ドメーヌ・ウィリアム・フェーブル
シャブリ・プルミエ・クリュ・モンマン2013
(750ml)5,832円

生産地:フランス・シャブリ地区
葡萄品種:シャルドネ
味わい:白・辛口

シャブリのスペシャリストともいわれる歴史あるドメーヌ・ウィリアム・フェーブルが造るモンマンは、シャブリ左岸に広がる1級畑のプルミエ・クリュのワインです。キンメリジャンと呼ばれる白亜質の土壌に、泥灰質が広がりミネラルを豊富に含んだワインが生まれます。また、他の一級畑よりも、葡萄の成熟がゆっくり進むことから、骨格がしっかりありながら、豊かでフレッシュな酸とピュアな果実味が特徴です。余韻が長くエレガントで瑞々しい味わいは、繊細な和食ともよく合い、ワインの美味しさを引き立てます。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。