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Wine Columnワイン コラム

  • 伴良美のオススメ!

豊かな自然をオマージュしたアルザスの自然派ワイン
メール・エ・コキアージュ2012

ラベルが語るワイン物語

CDやDVDにはジャケ買い、という言葉があるように、ワインもラベルが奇麗なものや、興味深いデザインのものには、つい手がのびてしまいます。実際にワインのラベルは、ワインの歴史やエピソードを伝えるものが多く、そこにはさまざまな情報や物語が隠れています。ラベルのささやきを聞きながらワインを飲めば、いっそう美味しく楽しく感じられることでしょう。

繊細な和食やお正月料理にもぴったり

フランス北東部、ドイツとの国境にあるアルザス地方は、ボルドーやブルゴーニュと並ぶ、フランス屈指の白ワインの名産地。ここは風光明媚な美しい自然を守ろうと、昔から自然派のワイン生産者が多いことでも知られています。今月は正月のおせち料理やお刺身などの和食にもよく合うことで知られる、個性豊かなアルザスワインの魅力とその楽しみ方をお伝えしましょう。

美しいワイン街道沿いの葡萄畑

アルザスの葡萄畑はストラスブールからコルマールにかけての、ライン河沿いに広がり、そこはワイン街道ともいわれています。アルザス伝統の木組みの家が並ぶメルヘンチックな街が点在し、その美しさから観光地としても大人気のワイン産地。

葡萄畑は、緑豊かなボージュ山脈の麓にあり、その山脈が西側からやってくる雨雲を防いでくれるため、雨の少ない温暖な気候に恵まれています。特に葡萄の生育期は太陽が豊かにふり注ぎ、よく完熟したすばらしい葡萄が生まれます。


ドイツ国境で独自の個性を守りぬいた伝統のワイン産地

アルザス地方は、フランスとドイツに代わる代わる統治された歴史をもちながら、ワインにおいては独自の個性と伝統を守りぬいてきた産地といえるでしょう。ボトルの形はドイツに似た首がすらりとしたフルート型ですが、ワインの味わいは全く異なり、ドライで骨格がしっかりとしていて、ミネラル豊かでキレのある味わいが特徴です。

また、他のフランスワインと異なり、多くは葡萄の品種名をラベルの中央にはっきりと記載。そのトップには法律で認められたグラン・クリュという特に傑出したワインが存在し、リースリング、ピノ・グリ、ミュスカ・ダルザス、ゲヴュルツトラミネールの4種の高貴品種から、アロマに溢れ長期熟成型のすばらしいワインが生まれています。

有機農法が盛んな理由は?

さらに、アルザスワインの大きな特徴は、フランスで最も有機農法が盛んな地域であること。アルザス全体の20%近くを占めています。アルザスワイン委員会ではその理由について「温暖で雨が少なく乾燥した気候に恵まれているので、元々、カビや害虫が葡萄につきにくく有機栽培がしやすいこと。とても豊かな自然と美しい景観が魅力の葡萄産地であるため、生産者一人一人がそのすばらしい環境を守っていこうという意識が高いこと。特に1938年から1945年に、ナチスドイツに占領された時代に、ナチスの命令で生産量を上げるために化学肥料を大量に使わざるを得ない時期があり、そのことが生産者にとって『畑を改革して自然環境を守っていこう』という意識をより強めたのです」と伝えています。

世界中が注目する自然派生産者 【ドメーヌ・ジュリアン・メイエー】

アルザスでは近年、こうした信念を受け継いだ若手の自然派生産者が次々と生まれ、東急百貨店でも、すばらしい生産者の自然派ワインをお客様のためにご用意しています。

そのひとつは、ドメーヌ・ジュリアン・メイエーが造る「メール・エ・コキアージュ2012」。ワイン名のメール・エ・コキアージュは、日本語で「海と貝」という意味。ラベルにも、ヨットやサザエなど、海をイメージする愛らしいイラストが描かれています。

ではなぜこのような名前がワインにつけられたのでしょうか?それはここの畑は、遥か昔に「海が隆起してできた土地」で、粘土石灰質のミネラル豊かな土壌だから。生まれるワインも豊かなミネラルと、フレッシュなレモンような芳香、口に含むと柔らかく流れるような酸味を感じるすばらしいものとなります。この土地を受け継いだ現当主で醸造家のメイエーさんは「土を醸造家が借りているんだ」と畑に敬意を払い、1990年代から完全無農薬の100%ビオディナミ農法を実践。ワインにおいても、亜硫酸を用いずに醸造を行っています。


【ドメーヌ・アンドレ・ステンツ】

もうひとつは、ドメーヌ・アンドレ・ステンツが造る「ピノ・ブラン・ミクロサルフィット2012」コルマールからワイン街道を南西に下った、ヴェトルスハイムにワイナリーを所有。日照に恵まれた理想の畑で、環境への敬意をはらい有機栽培を実践しています。1984年にはフランスでも権威ある有機栽培の認証団体「ナチューレ・エ・プログレ」の認証を取得。化学肥料、除草剤、化学殺虫剤などは一切不使用で葡萄栽培を行っています。益虫が害虫を捕食する生態系を畑の中に作りあげ、春から夏に伸びるハーブやイネ科の草を自然の肥料として使っています。ラベルにも太陽と月と葡萄畑が記され、自然農法らしい素朴なデザインです。

ワインと和食ミネラルが結ぶマリアージュ

さて、アルザスワイン委員会では、近年、アルザスの白ワインと和食とのマリアージュを推奨しています。ミネラル豊かでフレッシュでありながら、繊細さも持ち合わせたアルザスのワインは、元々世界のどんな料理とも相性が良いといわれていますが、特に日本のミネラルが豊かな野菜や魚介類を盛り合わせた、繊細な和食とは好相性。

この季節はお正月のおせち料理や、甘エビ、ホタテ、サーモンなどのお刺身などともピッタリです。アルザスには、辛口のリースリング、ゲヴュルツトラミネール、ピノ・グリのワインの他にも、クレマン・ダルザスといって繊細な泡立ちのスパークリングワインや黄金色に輝く甘口のワインもあります。お正月の乾杯の酒やお屠蘇がわりに、ぜひ楽しんでみてはいかがでしょうか。

東急フードショーのおすすめ

メール・エ・コキアージュ2012
(750ml)2,376円

生産地:フランス アルザス
生産者:ドメーヌ・ジュリアン・メイエー
葡萄品種:シルヴァーネル85%、リースリング15%
味わい:白・辛口

「海と貝」と名付けられたワインは、遥か昔、海が隆起してできた土壌で育った樹齢50年の葡萄から生まれます。アルザスの美しい自然と大地の恵みに敬意をはらい、農薬・除草剤・化学肥料を一切使わない100%ビィオディナミ農法を実践。熟したレモンやミントの爽やかな香り、柔らかな酸やオレンジピールのほろ苦さ、余韻にミネラル由来のほのかな塩味が感じられます。その味わいから、牡蠣やほたて、エビやサーモンなどの魚貝料理やお刺身にもよく合います。

著者近影

伴 良美(ばん・よしみ)

ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。