1855年のメドック格付けが決定して以来、第1級の首位の座を一度たりとも譲り渡したことのない、不屈の栄光を誇るシャトー・ラフィット・ロスチャイルドです。その基礎を築いたのは、1670年から1784年まで所有していた、ボルドーの有力者、ニコラス・ド・セギュール氏とその息子ニコラスアレクサンドル氏です。1868年に、ジェームズ・ロスチャイルド男爵が厳しい競売の末に勝ち抜いて落札して以来、シャトーの栄光はロスチャイルド家によって守られています。1994年~2015年までシャトーのテクニカル・ディレクターを務めたシャルル・シュヴァリエ氏は、ブドウ畑の小区画毎のきめ細やかな管理を実践。これはただ低収量にするのではなく、ブドウ樹にグラン・ヴァンのための適正なセレクションを行うことを意味します。収穫の時期についても慎重に決定され、成熟が頂点に達したら、450名以上もの労働者を雇い、ラフィットとデュアール・ミロンのブドウをわずか11日間で摘果。彼はこれについて、「我々はよいブドウが良いワインを造るという原則を実践している。私の仕事はブドウの能力を十分に発揮させることにある」と言っています。現代的な醸造法を多く試み、また取り入れたものを廃しながらも、そこで重要視されているのは、例えばマロラクティック発酵の促進の方法などではなく圧搾ワインの質を重視することや、投資の面で同様の哲学が取り入れられています。ラフィットを形容するとき「気品」という言葉なくしては語れません。10年の熟成にもなんなく耐えうる熟成ポテンシャルを秘め、長期熟成を遂げたその味わいは、ボルドーの真髄ともいえるエレガンスを体現しています。2019年ヴィンテージは色調は深く、非常に凝縮した果実を十分な酸が支える構造で、タンニンは艶やかで豊富な非常に大きな構造を備えた年となりそうです。この20年ボルドーの醸造技術は精緻を極め、若くとも艶やかで滑らかな味わいながら、その裏に隠された凝縮した果実、酸、そして豊富なタンニンは長期熟成のポテンシャルを感じさせます。2019年は2010年、2015年、そして2016年に匹敵するあるいはそれらを凌駕するエキサイティングなヴィンテージと言えるでしょう。