ママパパカメラ| vol.3 赤ちゃんが生まれたら。家族写…
● 子育て
木漏れ日の下で、水の音と子どもたちの笑い声が響く。渋谷区の一角にこんな場所があるなんて…。
代々木公園のすぐ隣にある「渋谷はるのおがわプレーパーク」では、週に1回「どぅんどぅんどぅんタイム」と呼ばれる時間があります。この時間には、0〜2歳の子どもたちが泥んこや水あそびを思いきり楽しみ、ママたちの笑い声がやさしく重なります。
着替えや長靴の貸し出し、スタッフの見守りもあり、安心して過ごせるあたたかな空間を取材しました。
2004年に開園した「渋谷はるのおがわプレーパーク(通称:はるプレ)」は、20年以上にわたって地域の子どもたちに愛されてきたあそび場です。
園内にあるものはなるべく木や竹など自然の素材を使い、看板も遊具もすべてが手づくり。
あえて市販の遊具やおもちゃを置かないことで、あそび方の幅を狭めず、子どもたち自身の力で形が変えることができ、自分の発想で自由にあそべるようにしているのだそう。
このプレーパークを運営しているのは、渋谷区から委託を受けた市民団体「一般社団法人 渋谷の遊び場を考える会(通称:渋あそ)」です。地域の人々や行政、そしてプレーリーダーが力を合わせて、都心でも子どもがのびのびとあそべる場を育ててきました。
はるプレでは週に一度、0〜2歳の子どもたちが集まる「どぅんどぅんどぅんタイム」が開催されます。
0歳から参加OKで、予約も参加費も不要、出入りも自由。区外からわざわざ足を運ぶ親子もいました。
泥や水をさわったり、木の実を拾ったり、ゴザの上に寝転がってみたり。子どもたちが思い思いに過ごす時間です。
普段の外あそびなら「服が汚れるからやめよう」「危ないからダメだよ」と言いたくなる場面も、ここではなんでもあり!
泥を飛ばしても、水に濡れても、誰も注意しません。
冷たい水の感触、落ち葉がこすれる音、土のにおい、陽の光…五感すべてがあそびの道具になります。
げんまくんもお友だちを見て高台に登ってみたり、ハンモックに座ってみたり…。 途中で立ち止まったのは、落ち葉の掃きだまり。ママに上から落ち葉をかけてもらうと、頭に葉っぱをつけながらとびっきりの笑顔を見せてくれました。
その後も興味がどんどん移り変わり、あちこちをずんずん探検。
プレーパークには3名のスタッフが常駐しているので、初めての外あそびデビューでも安心です。
はるプレでプレーリーダーを務める「まるちゃん」と「くはっち」にお話をお伺いしました。
―「どぅんどぅんどぅんタイム」を始めたきっかけを教えてください。
まるちゃん:0〜2歳の子の時間を設けたのは、今から10年ほど前です。当時は「はるプレ=小学生のあそび場のイメージ」という声も聞かれたので、「小さい子でもあそべる場所なんだよ」と知ってほしくて始めた時間です。
―「どぅんどぅんどぅん」はどういう由来なんでしょうか?
くはっち:はるプレの非公式キャラクター、「どぅんぐり君」にちなんで「どぅんどぅん」という音になりました(笑)。10年前に始まった当初は「だんだんどんどん大きくな〜れ」と呼んでいたのですが、コロナ禍で外あそびに不安を感じるママたちが増えて。「もう一度、安心して楽しめる時間を作りたい」と考えた時に「どぅんぐり君」というキャラクターが誕生して、それに合わせて名前も変更しました。
―「どぅん」の響きが楽しいですし、一度聞いたら忘れられないフレーズですよね(笑)。
くはっち:そう言っていただけると嬉しいです!
―取材中も、ママたちの笑い声があちこちから聞こえてきたのが印象的でした。
まるちゃん:同年代の子どもたちが集まるので、ママ同士のつながりも生まれやすいんです。どぅんどぅんどぅんタイムの時は、名前と月齢を書いたテープを子どもの背中にはるのが恒例。互いの名前を呼び合うことで、自然と距離が縮まっていくんですよね。
くはっち:昔は「ちょっと買い物行ってくるから子どもを見てて!」なんてママ同士で声をかけ合える関係性ができていたんです。でもコロナを経て、そういうやりとりが減ってしまった。だからこそ、こういう場で人と関われること自体が貴重なんだと思います。
―私も息子が赤ちゃんの頃は大人と喋りたくて仕方ない時期がありました…。こんな場所があったなんて、もっと早く知りたかった…!(笑)
まるちゃん:ありがとうございます(笑)。ママ同士で育児の相談をしたり、幼稚園や小学校の話を聞いたり、そういう“ちょっと話せる場”が心の支えになったりしますよね。
―0〜2歳の子に人気のコーナーはありますか?
まるちゃん:やっぱり水ですね。チャプチャプした触感、冷たいという感覚…水は身近なものですし、小さい子でもあそびやすいと思います。はるプレではお水もあそびの一貫として、とっても人気があります(笑)
―うちの息子もそうなんですが、中には「場所見知り」をしてなかなか動き出せない子もいると思うんです。そういった子にはどういう声かけをしますか?
まるちゃん:これは親御さんに対してですが、「放っておけばあそび始めるから、気長に待って」ですね。もちろんあそび出すような仕掛けはこちらでもしますが、何かをする・しないはその子の自由なので、無理はさせません。
―うう、今まで初めて行くあそび場で息子に「せっかく来たんだから」とアレコレ勧めてしまっていました…(反省)。
くはっち:小さな子にとっては、この場所にいるだけで五感が刺激されています。もしお子さんが何もしなくても、「うちの子何もできなかったわ…」と思わず、何度でも来てもらえたら嬉しいですね。
―子どもに声をかける時に意識していることはありますか?
まるちゃん:「ダメ」「危ない」は言わないようにしていますね。
―はあ…めちゃくちゃ言ってしまっています…(反省二度目)。
まるちゃん:わかります(笑)。「危ないからダメ」だけでなく、「人に迷惑をかけるからダメ」だからつい言ってしまうこともあると思うんです。でも、ここでは水に濡れても泥がかかっても「おたがいさま」という空気があるから、親も自然と力を抜ける。そういう点も、はるプレのいいところだと思っています。
くはっち:子どもは、あそびを通して自分の力を知っていきます。「ここは危険だな」「こうすると痛いんだな」と学んだり、相手への力加減を覚えたり。そういう小さな経験の積み重ねが大事なんです。
―「危険を避ける」じゃなくて、「危険から学ぶ」という感じですね。
くはっち:そうですね。もちろん、毎日遊具のメンテナンスをして、尖った石など、子どもたち自身が事前に危険を察知できないものは、なくすようにしています。でも、子どもが「学びに変えられそうな体験」は、あえてそっと見守る。プレーリーダーも、子ども一人ひとりの表情や動きを見ながら、「今日は少し慎重だな」「思いきり体を動かしたい日だな」と察して、その日のあそび場を整えています。
まるちゃん:だからこそ、ここにいる間はいつもの公園よりも少し引いた気持ちで見守ってもらえたら。「どこまでできるかな?」と見守る時間が、親にとっても発見になると思います。
―本日はありがとうございました。最後に、メッセージをお願いします。
まるちゃん:ここに来ると、子どもたちの見たことのない笑顔に出会えます。あそびを通して一皮むける瞬間がたくさんあるので、親御さんもぜひ汚れてもいい服で来てもらえたら。子どもは、親が一緒にあそんでいる姿を見るとすごく安心するんです。
くはっち:はるプレには、寄付で集まった長靴や洋服の貸し出しもあるので、「このあと渋谷に行くから服が汚れたら困る…!」という日でも大丈夫(笑)。お出かけのついでにも、ぜひのぞきに来てください。
*
子どもの頃ここであそんだ子が、中学生や高校生になっても顔を出しにきたり、大人になってプレーリーダーとして戻ってきたり。
小さな頃に感じた“自由にあそぶ”楽しさが、そのまま心の中に残っているという何よりの証拠です。
木漏れ日の下で、思いきり泥んこになってあそぶ——。そんな時間が、親子にとってもいつか「帰りたくなる原点」になるかもしれません。
□ 開館時間/10:00〜17:00
□ 休園日/毎週木曜日
□ 予約不要
□ 入園料無料
□ 公式サイト / Instagram
アクセス
□ 住所/東京都渋谷区代々木5-68-1 はるのおがわコミュニティパーク内
□
電車/
・東京メトロ千代田線 代々木公園駅(3番出口/徒歩5分 上りエスカレーター有 or 4番出口/徒歩5分 エレベーター有)
路線バス/
・【京王バス】「宿51」
新宿駅西口←→渋谷駅
A:「代々木公園西門」停留所/徒歩2分
・【京王バス】「渋63・64」
中野駅南口←→渋谷駅
B:「八幡下」停留所/徒歩5分
C:「富ヶ谷」停留所/徒歩6分
・渋谷区コミュニティバス ハチ公バス 「春の小川ルート」
⑥㊱代々木八幡駅入り口/徒歩8分
⑤㊲富ヶ谷下車/徒歩6分
□ お問い合わせ/03-3481-9661