2024.08.28

遊んで食べるクッキー生地〈コロリド〉開発者 竹内ひとみさんインタビュー【前編】|“コミュニケーションを生み出すクッキー”をめざして

● フード

ねんどのように遊べて、焼くだけでおいしく食べられるクッキーをご存じですか? それは〈コロリド〉。クッキー作りを楽しい「体験」として提供しています。
今回は代表の竹内ひとみさんに、商品の開発秘話や魅力、ブランドに込めた思いまでをインタビュー。前後編でお送りします。

ねんどのように遊べるクッキーのアイデアはどこから?

― 竹内さんは営業職としてバリバリ働きながら妊娠・出産。専業主婦になってから料理関係の資格を3つ取得されたそうですね。もともと料理はお好きだったのですか?

竹内さん:わたし自身が4人きょうだいの長女で、母を手伝う意味でも料理はよくやっていました。資格を取ったのは、家にいる時間がもったいなくて、とりあえず何かを始めようと思って。家族の栄養管理など、知識として無駄にはならないだろうと食に関する資格にしました。

― どうして、ねんどのように遊べるクッキーを作ろうと思ったのですか?

竹内さん:10年前、夫の仕事に同行するため一家で渡米したときです。アメリカでは焼く前の冷凍クッキー生地が多く市販されているんです。はじめて見たときに「すごい!あとは焼くだけなんて、めっちゃラクじゃん!」って感動したんです。でも、ほとんどの製品はチョコチップクッキータイプ。すぐ買って作ったのですが、チョコチップクッキーは油分が多いので、どんな形を作っても丸く広がってしまうんです。天板に生地を並べるだけなのが、簡単すぎて物足りない状態に。最初のうちは子どもと一緒に作っていたんですけど、そのうち「ママ、焼けたら教えて」って(笑)。

― 型抜きしたり成形したりがクッキー作りの醍醐味なんですけどね。

竹内さん:そうですね。一方で当時、起業家向けのシェアハウスを運営していて、世界中から来るゲストに食事を提供していたんです。彼らの食文化や宗教、アレルギーや好みなど、毎日の献立を考えるのは大変だったのですが、一緒に食卓を囲む時間が彼らとの関係性を深いものにしてくれました。「食」はコミュニケーションツールになると確信し、世界の共通言語でもある「クッキー」に目をつけ、「食」と「遊び」を融合させることで誰もが楽しめる体験にしました。

“わたしが世界初になる!”アメリカで奮起

― その原体験が〈コロリド〉の発想につながったのですね。

竹内さん:はい。アレルギーフレンドリーでカラフルなクッキー生地を探してみたんですけど、世界のどこにもなくて。ということは、わたしが作ればわたしが世界初じゃん!って(笑)。

― その行動力には驚かされます。開発にあたって苦労も多かったと思いますが。

竹内さん:まず、アメリカの食品衛生取り扱いの資格を取らなくちゃいけないんですが、その勉強がキツかったです。シェアハウスの家事を夜中の2時に終わらせてからの勉強だったので、体も頭もへとへとで全然覚えられないし。試験では2回落ちて、3回目でようやく合格しました(笑)。

― アレルギーフリー、ヴィーガン・グルテンフリー対応など、「安心・安全」の確保も大変だったのではないでしょうか。

竹内さん:通常のクッキー生地よりも多くの縛りがあるなかでの開発が必要でした。試行錯誤の繰り返しで、完成までに3年ぐらいかかりましたね。アレルギー対応、ヴィーガン対応の原材料の選定をはじめ、焼いても色褪せない天然色素、さらに生地の状態での保存、焼き上がりの状態……すべて考慮するのは難しかったです。中でも一番苦労したのは、保存料を使わずに常温で半年以上保存できる生地にしたこと。クッキー生地なので、加熱処理もできず、水分活性値やPh値を計測しながら、菌の繁殖しないレベルで生地にするには、たくさんの失敗の積み重ねでした。今もより良い生地になるよう常に研究開発しています。

作りたかったのは、コミュニケーションツールとしてのクッキー

― 味も多種多様ですね。ブルーベリー味なんてクッキーとしては珍しいですよね。

竹内さん:色も味も自然由来のものを使って、できるだけ体に安全なものを作ろうという意識はもちろんあるんですが、それ以上に、コミュニケーションや楽しむ気持ちを大事にしたいと思っていて。ブルーベリー味とメロン味を混ぜたらどんな味がするかな?とか、このクッキーいろいろな味がするねとか。「食品」という枠にとらわれない、「コミュニケーションを楽しむツール」としてのクッキーをめざしました。

― お客様の反響はどうですか?

竹内さん:「ありそうでなかった!」「おいしい」「楽しい」といった声から、「子どもが前日から楽しみにしていて、思っていた以上にいい思い出になりました」という声まで、たくさんの反響をいただいています。そうそう、お父さん、お母さんのほうがクッキー作りに夢中になってるって聞くのもうれしいですね。大人は、どう作るかに個性が出るんですよね。頭の中に抱いているイメージが可視化されるので、企業研修のチームビルディングでも使っていただいています。子どもが喜ぶだけでなく、「大人が楽しいと思えるか」にこだわったので、時折すごく凝った作品を見るのもとても楽しいです。

― 竹内さんからmamaco withユーザーへメッセージをお願いします。

竹内さん:わたしは日米両方の環境で子育てしましたが、結局どれをとっても「メリット」「デメリット」はある、ということを身にしみて感じています。子育てにネガティブな感情はつきものですが、振り返れば「わたしの成長には必要な経験だったな」と感じています。〈コロリド〉も「時間がない」「めんどくさい」「でも罪悪感は感じたくない」というわたしの親としてのネガティブな感情がなければ生まれませんでした。子育て時期は人として成長できる機会がたくさんあるので、時々の幸せの瞬間で乗り切りながら、楽しんでいただけたらと思います。よろしければ〈コロリド〉でも時々遊んでみてくださいね(笑)。




後編では、子育てをしながらキャリアを再構築することについてお話をうかがいました。そちらもどうぞお楽しみに!

教えてくれた人

竹内ひとみさん

1974年兵庫県生まれ 4児のママ。Shibuya Startup University 1期生。東京都女性ベンチャー成長促進事業 APT Women 7期生。2014年に家族でシリコンバレーに移住、起業家向けのハッカーハウスをスタート。7年間で60カ国、6,000人以上のゲストを迎えた。その経験から言葉や世代、性別を超えたコミュニケーションを楽しむツールとして、〈コロリド〉をスタート。2021年に帰国。生地の改良や工場探しを重ね、2022年9月、正式に日本でローンチ。ママ起業家として絶賛奮闘中。
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