2021.08.27

妊娠中から見直そう 口内環境

Column

妊娠期の女性と生まれてくる赤ちゃんの健康を守るために、妊娠中に一回、妊婦歯科健康診査を無料で行なっている自治体が多数あります。これは、口内環境と全身疾患は密接な関連性があるからなのです。
特に、妊娠期の女性はホルモンの影響や生活習慣の変化などにより、口内環境が悪化しやすく、それが早産など思わぬリスクにつながる場合があります。
また、赤ちゃんの口には虫歯菌はいません。虫歯菌には周囲の大人から感染するので、赤ちゃんが生まれる前に、口内環境を整えておく必要があります。
このため、妊婦歯科健康診査は必ず受けたいもの。ここでは、妊娠期の女性が気をつけたい口腔内の病気についてチェックしていきましょう。

妊婦歯科健康診査票(受診券)はどこでもらえるの?

妊娠届の際に母子健康手帳と一緒に配布されます。
妊娠中に1回、実施医療機関に予約のうえ、受診券を持参して受診することができます。
歯や歯周組織の状況や、口腔内の衛生状態などを診てもらえます。
安定期に入ったら、なるべく早めに受診しましょう。

妊娠期の女性が気をつけたい口腔内の病気

妊娠中は、「妊娠関連性歯肉炎」になりやすいといわれています。これは女性ホルモンの影響で起こり、歯ぐきが赤くなったり、ぷよぷよと腫れていたり、歯を磨いたときなどに出血しやすいといった症状が見られます。通常は尖っている状態が好ましい、歯と歯の間にある歯ぐきが丸く膨らんでいる状態も、歯肉炎の大きな特徴のひとつです。
歯肉炎は歯周病の初期症状であり、放置すると歯ぐきの炎症が進み、歯周炎という病気に進行します。
歯周病が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞、糖尿病悪化のリスクが高まるため、早めの治療が必要です。

早産や低体重児出産が心配されるのはなぜ?

歯周病が進行すると、炎症を誘発する「サイトカイン」や「プロスタグランジン」といった物質が増えます。これらの物質が歯ぐきの毛細血管から子宮に流れてしまうと、子宮が収縮し、早産につながる可能性があるのです。
進行した歯周病は胎児の発育にも影響を及ぼし、低体重児出産のリスクが高まります。

インフルエンザへの感染リスクを下げる

歯みがきなどの口腔ケアは、インフルエンザへの感染リスクを下げることがわかっています。最近は、インフルエンザ同様、口腔ケアを行うことで、新型コロナウイルスの感染や重症化リスクを低下させられる可能性があるとして、多くの研究者がその証拠を探しているのだとか。いずれにせよ、感染症予防において重要な免疫力の向上には、「お口の健康」が欠かせませんし、健康な体づくりのためにも口腔ケアは常に意識したいところです。

基本的な歯のケア

健やかな口内環境を保つためにも、妊婦歯科健康診査の受診は必須であることがわかりました。
日常的にはどのようなケアをしていけばよいのでしょうか。

● 丁寧なブラッシング
歯ブラシを歯の面に当てたら、細かい動きでブラッシングしていきます。1本の歯につき、10秒ほどかけて磨くのがベスト。
歯と歯ぐきの間は、ブラシをやさしく歯と歯ぐきの間に押し込むようなイメージで、丁寧にみがきましょう。

● 力を入れすぎず、軽い力で
力が強すぎると歯と歯ぐきの負担になるので、ブラッシングはやさしく軽い力で行いましょう。

正しいブラッシングを行うと、歯ぐきが引き締まってきます。

歯科医院で定期的なプラークコントロールを

歯ブラシでの毎日のブラッシングはとても重要ですが、セルフケアだけではみがき残しの心配も。
また、歯ブラシが届きにくい箇所もあるので、定期的に歯科医院を受診し、歯垢(プラーク)や歯石を取り除いてもらいましょう。自治体によっては、産後歯科健康診査を無料で実施しているところもあるので、産前の健診と合わせて活用してくださいね。



「たかが歯科検診」と思っていたら大間違い。口内環境をととのえることは、ママの健康だけでなく、赤ちゃんの未来の健康を守るうえでもとても大事なことだとわかりました。
安定期に入ったら早めに妊婦歯科健康診査を受けて、安心して出産に臨めるよう備えましょう。