2022.07.15

知っておきたい中学受験のこと vol.6 中学受験、費用はどれくらいかかる?

Column

親のサポートやわが子の適正など、中学受験で気になるポイントは山ほどありますが、なかでも多くの保護者を悩ませるのが、費用面の問題ではないでしょうか。そこで、中学受験のための通塾に始まり、入学してからの学習費、さらに費用を抑えるポイントや費用捻出のためにできることについて、中学受験アドバイザーの西 和美さんにお聞きしました。

私立中学に通う場合、いつ頃からどんなお金がかかるの?

まずは通塾にかかる費用から受験料(検定料)、入学時の初年度納付金まで、どれくらいかかるのかをチェックしましょう。
「中学受験の進学塾には、多くのお子さんが小3の2月から通います。塾の費用は近所の個別指導塾から大手進学塾まであり、それぞれ異なりますが、約3年間で200〜300万円がかかります。この費用には、テキスト、夏期講習、冬期講習、定期的に行われる模試の費用も含まれます。
続いて、受験料(検定料)についてです。東京都が発表した「令和3年 都内私立中学校の学費の状況」によると、検定料の平均額は23,365円です。出願校数は平均して4〜5校と言われているので、受験料だけでも10万円の費用がかかります。入学時の初年度納付金の平均は、970,176円ですので、受験時には100万円以上は必要と考え、準備しておきましょう」

私立中学と公立中学の学習費の差は?

続いて、私立中学と公立中学の学習費について、どれだけ違うのでしょうか。
「文部科学省『平成30年度子供の学習費調査』によると、公立中学校の学習費の年間総額(「学校教育費」「学校給食費」及び「学校外活動費」)は、48万8,397円。私立中学校の学習費の年間総額は、140万6,433円。3倍近い差があります。しかし、私立中学入学後は、高校受験がないため塾代は不要なご家庭も多いのではないでしょうか」

中学受験の費用を抑える方法は?

通塾にかかる費用、受験料と初年度納付金、さらに公立中学と比較して、約3倍の差がある私立中学の年間学習費。中学受験にかかる費用を計算していると、頭の電卓が火を吹きそうですよね。少しでも費用を抑えるには、どのような方法があるのでしょうか。

1.通信教育での自宅学習
「大手学習塾の費用は、小学4年生から6年生まで通うと約300万円の費用がかかるように、最も大きな負担は塾代です。このため、通塾ではなく、通信教育、市販の問題集などで自宅学習にすると大幅に費用を抑えることができます」

2.公立中高一貫校に通う
「私立中高一貫校では、6年間の学費が約500万円(※)。一方、公立中高一貫校での学費は私立の半額と費用の負担は大きく減ります。国公立受験は2月3日のみで1校しか受験できませんが、合格できれば、学費の負担を減らしながらも、質のよい授業を受けられるので、挑戦してみるのもひとつです」
※学費を公開している東京都の私立中高の学費の平均値より算出

3.特待生制度、奨学金制度の利用
「成績優秀者が学費を免除される『特待生制度』が多くの私立中高一貫校に設けられています。これは、入試結果や、定期試験の成績で決まります。6年間毎年、トップの成績を残すことは容易ではありませんが、年間約80万円の学費を免除されることは、家計の負担を軽くするだけでなく、とても名誉なことです。制度の有無、内容は学校によって異なるので、受験前に調べておくとよいでしょう。ちなみに、わが家の長男の学校には特待生制度があり、中学入学から数年間、特待生として学費を免除され、家計の負担を減らしてくれました」

4.自治体の制度の利用
「文部科学省が2017年に設置した『私立小中学校等に通う児童生徒への経済的支援に関する実証事業 』という制度があります。年収400万円未満かつ資産保有額600万円以下の世帯が対象となり、最大で年額10万円の支援があります。該当する場合は利用されると良いと思います」

中学受験の費用捻出のためにできること

続いて、中学受験の費用を捻出する方法についてお聞きしました。

1.収入を増やす
「お父様が会社員の場合は自分の意思で仕事を増やすことは難しいので、お母様のパート勤務の出勤日数や勤務時間を増やすことで収入を増やしましょう。契約社員になり、毎月安定した収入を確保することも良いでしょう。お子さんが通塾し始めると、家にいる時間も少なくなるので、仕事がしやすくなったと話す方もいらっしゃいました」

2.支出を減らす
「節約効果が高いのは、レジャー費、外食費を削ること。また、海外旅行、スキー旅行、などは控えましょう。小5、小6になると、春季講習、夏期講習、冬季講習があるため、実際に長期間の旅行は難しくなります。しかし、旅行が好きでストレスになる場合は、期間を短くしたり、日帰り旅行にすることで、支出をできる限り少なくし、工夫して楽しみましょう。また、習い事の取捨選択も大切です。『今、本当に必要なものは何か』考える良い時期と捉えて、何となく続けてきた習い事は整理していきましょう」

3.受験を考えたらすぐに貯蓄を始める
「現実的に小6の1年間は、塾代+受験料+入学金+前期授業料+制服代など約200万円をすぐに支払えるように貯蓄しておかなければなりません。中学受験を見据えて、早くから貯蓄をしておきましょう」

中学受験費用に悩むママやパパへ

最後に、中学受験費用について不安を感じているみなさんに、西さんからのメッセージをお届けします。
「私立中高一貫校には学校独自のカリキュラムや、教育方針など魅力が多く、家計的に厳しいと認識していても、何とか子どもにあった教育環境を与えてあげたいと思う親心は、同じ道を通ってきた先輩ママとして、とても共感します。受験は勉強するのも試験を受けるのもお子さん自身です。保護者は代わってあげることはできません。できることがあるとすれば、日々のサポートと、教育費の工面です。節約と貯蓄や収入を増やす努力は大変に感じることもあると思いますが、頑張っているお子さんのために、できることがあることに幸せを感じ、楽しさに変えていきましょう」



公立中学と私立中学。その費用の差を考えると、頭を抱えてしまうご家庭もあるでしょう。しかし、西さんの言うように、教育費の工面は保護者としてわが子のためにできる重要なサポートだと捉え直すと、節約したり、収入を増やす努力をしたりして頑張ろうという気持ちが湧いてきます。夫婦でも話し合いながら、よい方法を探ってみましょう。

教えてくれた人

西和美さん

中学受験アドバイザー

双子の母。長男次男とも中学受験をし、別々の私立中高一貫校へ進学。その後、大学受験で国立大学へ(東京大学 / 東京医科歯科大学)。受験は親子関係が大切であり、ママの負担も大きい。自身の経験から中学受験のサポートに悩むママたちの心に寄り添ったサービスを提供している。
サポート詳細や受験期ママへのヒントはブログにて

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