2022.08.01

「親子で一緒にムーミンの物語を読んでみる」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

絵本や小説など様々なスタイルで楽しむムーミンの物語。

 8月9日は、ムーミンの生みの親でもあるトーベ・ヤンソンさんのお誕生日ということで「ムーミンの日」だそうです。長年愛され続けているムーミン。私自身、キャラクターとしてのムーミンは知っていたけれど、大人になるまで物語は読んだことがありませんでした。もしかしたら、同じように物語は読んだことがないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。ムーミンシリーズは、原作小説や児童書のイメージをお持ちの方も多いと思いますが、絵本や名言集、そしてコミックと実は様々なスタイルでムーミンの物語を読むことができます。

 『ムーミンの いないいないばあの えほん』は、0歳から楽しめるしかけ絵本です。ちびのミイ、ムーミンパパ、ムーミンママなどムーミン谷の仲間たちがかくれんぼ。しかけをめくり、みんなをみつけるという一冊。「いないいないばあ」の絵本はいろいろありますが、ムーミン版「いないいないばあ」はムーミンのファーストブックとしてもぴったりです。

『ムーミンの いないいないばあの えほん』トーベ&ラルス・ヤンソン 当麻ゆか 訳 徳間書店


作者のトーベ・ヤンソン初の絵本でもある『[新版]トーベ・ヤンソンのムーミン絵本 それからどうなるの?』。ムーミントロールとミムラねえさんが、いなくなったリトルミイを探す大冒険の物語。インテリアとして飾りたくなるくらいおしゃれなデザインで、大型本のこちらはプレゼントとしても喜ばれる一冊です。

『[新版]トーベ・ヤンソンのムーミン絵本 それからどうなるの?』トーベ・ヤンソン作 渡部翠 訳 講談社


 『ムーミンのたからもの』は、ムーミンママやムーミンパパ、それに友だちにはたからものがあるのに、自分にだけないと感じたムーミンが自分だけのたからものを探しに行く物語。ムーミンママが最後に、「ムーミン、あなたのもっているたからものは、めにみえないけど、ここにあるわ。ママにはちゃあんとわかりますよ。それはね、じぶんのことだけじゃなくて、みんなのことをかんがえられるこころ。あなたはそれを、もってるわ。」と言ってムーミンを抱きしめる場面は、思わず涙がこぼれそうになります。お子さまだけでなくママの心にも響きます。

『ムーミンのたからもの』原作 トーベ・ヤンソン 文 松田素子 講談社


絵本とつながるおとなのための2冊

 ムーミンの物語を読んだことがないという方にも、気軽にお楽しみいただける大人のための本を2冊選びました。ムーミンシリーズの小説は全9作ありますが、その中からムーミンとムーミンママの絆を描いた小説。そして、手っ取り早く全9作を網羅できる、全作の解説を集約した一冊です。

小説『新装版 たのしいムーミン一家』は、ムーミンとムーミンママの親子愛が印象的な一冊です。黒い魔法のぼうしによって、奇妙な姿に変わってしまったムーミントロール。誰にもムーミントロールだと信じてもらえないなかで、ムーミンママだけがムーミントロールだと信じます。「ね、なにがおこったって、わたしにはおまえが見わけられたでしょ」と、たとえ姿形が変わっても、愛する人はちゃんと見わけられる。そんなムーミンママの愛に胸が打たれます。

『新装版 たのしいムーミン一家』トーベ・ヤンソン 山室静 訳 講談社文庫


数多くのムーミン作品の翻訳を手掛ける著者による、シリーズ全9作の解説集『ムーミンを読む』。ムーミンが生まれた背景、作者ヤンソンについて、ムーミン人気のヒミツに迫っています。各作品を象徴する場面や名言、キャラクターの解説もありますので、ムーミンワールドを理解するにはぴったりの一冊です。

『ムーミンを読む』冨原眞弓 ちくま文庫


今だからこそ親子で一緒に読みたいムーミンの物語

 誰もが知る個性強めなキャラクターばかりなのに、ムーミン谷のみんなは誰もが幸せそうで心地よさそうに過ごしているのが印象的です。お互いを尊重し合い、みんな自由に過ごしています。誰かを責めたり否定したりしない平和な物語を、眠りにつく前にゆっくりと読み進めるだけで心穏やかになるかもしれません。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。