2023.02.06

「猫の日に親子で楽しむねこ絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

2月22日、猫の日に読みたい絵本

2月22日は猫の日ということで、2月に入ると本屋では猫の絵本や本が多く並びます。猫派か犬派かと言われれば、私は犬と暮らす犬派。実は、現実世界ではあまり猫になじみがありません。でも、本で読む猫は、今の複雑化した社会を生き抜くうえで大切なことを教えてくれます。たいてい自由で、周りのことなど気にせずあるがままに生きています。私は、もしかしたらそんな猫たちに憧れているのかもしれません。また、猫はとても愛情深いのかもと思うようになりました。そんな猫の魅力に気づくきっかけとなった5冊をご紹介します。


 ねこの絵本といえば『100万回生きたねこ』(佐野洋子 作・絵/講談社)。長年、多くの人に愛されている名作です。私も小さい頃に読みました。読むたびに湧き上がってくる初めての感情をどうしたらいいのかわからず、戸惑ったのを覚えています。そして、大人になった今、久しぶりに読んでみると、あぁ、これは究極の愛のお話だったのだと気づきました。とてもシンプルに、人を愛すること、自分の人生を生きていくことが描かれており、読み終えたあとしばらく涙が止まりませんでした。結婚をして、愛する家族とささやかながら幸せな毎日を送る今の私だからこそ、そう感じたのかもしれません。何度読んでも、いくつになっても、どんな境遇でも、共感があり新しい発見がある。それこそが名作といわれる所以かもしれません。簡単にわからないからこそ、物語を自分のものにできたときの喜びは大きいものです。ぜひ、長年愛される名作をまずは親子で一緒に読んでみませんか。


『100万回生きたねこ』 佐野洋子 作・絵 講談社


そして、私が好きなねこ絵本といえば、町田尚子さんの『ねことねこ』(町田尚子/こぐま社)です。町田尚子さんの描かれるねこは、一匹一匹、表情もしぐさも違っていて個性豊か。リアルさと可愛さのバランスが絶妙で大好きです。たくさんある町田尚子さんのねこ絵本のなかでも、この絵本は、左右に描かれた全く違うねこを比べて、おなじところを見つけるという面白さがお気に入りです。ねこのしっぽ、て、め、はな、毛色など、猫に詳しくない私にとっては、気づかないような発見があって面白いのです。


『ねことねこ』 町田尚子 こぐま社


 町田尚子さんと並んで大好きなねこ絵本作家は、ヒグチユウコさんです。ヒグチユウコさんの描くねこは独創的で可愛くて、一目惚れでした。ねこ以外の作品も一目見てすぐにヒグチユウコだとわかる唯一無二の存在です。もしかしたら、絵は見たことはあるけれど絵本を読んだことはないという方もいらっしゃるでしょうか。『ほんやのねこ』(ヒグチユウコ 絵と文/白泉社)は本好き、本屋好きにはたまらない本屋を舞台にした絵本です。ユニークなヒグチユウコワールド全開の物語。眺めているだけでもその世界観に一気に引き込まれる魅力的な絵本です。


『ほんやのねこ』 ヒグチユウコ 絵と文 白泉社


絵本とつながるおとなのための2冊

 たくさんある猫の小説やエッセイの中から、ホロリと泣ける女の子と猫の愛情溢れる物語と気分転換にもなる癒される猫エッセイをご紹介。いつまでも続く寒さ。もういい加減飽きてきたコートやダウン。気分が重くなりがちな2月の寒い時期に、軽やかな気分をもたらしてくれる2冊です。これらを読みながら、もうすぐやってくる春を待つのはいかがでしょうか。


 『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』(万城目学/KADOKAWA/角川文庫)は、小学一年生の女の子・かのこちゃん、かのこちゃんの家で長らく一緒に暮らす老犬・玄三郎、そしてアカトラの猫・マドレーヌ夫人の物語です。猫のマドレーヌという名前は、かのこちゃんのお母さんが得意のお菓子マドレーヌと色が似ているからというその由来も微笑ましいです。小学校入学前はおしゃぶりしていたかのこちゃんが、どんどん自分の世界を広げていき、すずちゃんという親友ができたり、自由研究に一生懸命に取り組んだり、玄三郎とマドレーヌ夫人とおしゃべりしたりと、小学一年生らしい日常を瑞々しく描いています。かのこちゃんとマドレーヌ夫人の物語が並行して進み、すべてがつながるラストでは思わずホロリと涙してしまいます。この春から、小学生になるというお子さまがいらっしゃる方は、お子さまとご自身を重ねて読み進められる一冊です。


『かのこちゃんとマドレーヌ夫人』 万城目学 KADOKAWA/角川文庫


そして、『猫は、うれしかったことしか覚えていない』(石黒由紀子・文、ミロコマチコ・絵/幻冬舎文庫)は、肩の力が抜けて前向きな気分にしてくれる本です。まず、ミロコマチコさんの可愛らしい猫たちの絵に、思わず微笑んでしまいます。そして、本を開くと、「猫は、うれしかったことしか覚えていない」、「猫は、落ち込まない」、「猫は、引きずらない」、「猫は、ほどよく無視する」など、猫を通して人生を幸せにする言葉とそれにまつわるほっこりエピソード。いつでもマイペースで、誰に媚びるわけでもなく、自分のやると決めたことは貫き通す、それでいてスルー力が抜群。様々な環境で感じる生きづらさや窮屈さなどから解放され、自然体で、心地よく生きていくための哲学を教えてくれます。


『猫は、うれしかったことしか覚えていない』 石黒由紀子・文 ミロコマチコ・絵 幻冬舎文庫



 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。