2023.03.06

「しりとり絵本を読んで、しりとりをしてみよう」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

子どもの語彙力が広がるタイミングで読みたいしりとり絵本

 ある日の帰り道、前を歩く小学校一、二年生くらいの女の子とお母さんが大笑いしながらしりとりをしていました。その様子があまりにも楽しそうだったので聞き耳を立てていると、お母さんの「りんご」や「ラッコ」などよくしりとりに登場する言葉に対し、女の子は学校で流行っているのか自分と周りの友達がわかるような言葉を言っていました。世代が全く違うだけでこんなにもしりとりの展開が変わることに驚きました。子どもとしりとりをすると、こんな言葉いつの間に覚えたの?と驚かされます。

また、子どもたちの世界で流行っている新しい言葉の使いかたを教わることもあります。4月から幼稚園・小学校に入ると子どもたちの世界が広がり、知識も語彙力も一気に増えると思います。そのタイミングで読みたい親子で一緒に楽しむしりとり絵本をご紹介します。


 『しりとりのだいすきなおうさま』(中村翔子 作 はた こうしろう 絵/すずき出版)は、読むたびに思わず吹き出してしまうほどのおもしろい一冊。なんでもしりとりのじゅんばんになっていないときがすまないおうさまは、りょうりもしりとりのじゅんばんにたべます。サンドイッチ→ちくわ→わかめ→目玉焼き…何からはじまるかわからない上に、さいごはおうさまのすきなプリンと決まっているため、りょうりを用意するけらいたちは大慌て。必死でしりとりの順にりょうりを用意するけらいたちを応援しつつも、想像もしなかったしりとりりょうりの順番に思わず笑ってしまいます。

『しりとりのだいすきなおうさま』中村翔子 作 はた こうしろう 絵/すずき出版

 大人気絵本作家・荒井良二さんの色鮮やかで大胆な絵が印象的なしりとり絵本『しりとりあそび』(石津ちひろ 文 荒井良二 絵/のら書店)。こちらは少し難易度が上がります。ページをめくると、おおきくなるしりとり、ちいさくなるしりとり、はるのしりとり、しろのしりとりなど、テーマが異なるさまざまなしりとりが繰り広げられます。大人の私も感心してしまうほどのしりとり絵本。簡単なしりとりや言葉遊びの絵本に飽きはじめたら、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

『しりとりあそび』石津ちひろ 文 荒井良二 絵/のら書店

 初めてのしりとり絵本にぴったりの『ぐりとぐらのしりとりうた』(なかがわりえこ 作 やまわきゆりこ 絵/福音館書店)は、おなじみのぐりとぐらがリズムに合わせてしりとり。はじめてしりとりをするという子どもにも、人気のぐりとぐらの絵本なら入りやすいかもしれません。一月からはじまり十二月まで、季節感あふれるしりとりうた。うたになっているので、リズムもよく初めての言葉遊びでも入りやすいのではないかと思います。この絵本はコンパクトサイズで小さな子どもの手にも収まりがよく、気軽に持ち歩けていつでどこでも楽しめます。

『ぐりとぐらのしりとりうた』なかがわりえこ 作 やまわきゆりこ 絵/福音館書店

絵本とつながるおとなのための2冊

 しりとりは、言葉のセンスと人間性がよく表れると思っています。子どもだけではなく、大人であっても語彙力と言葉のセンス、そしてユーモアを持っておきたいところです。そこで、今回はセンスが試されるおとなのためのしりとり絵本と共感溢れる益田ミリさんのエッセイをご紹介。


 『しりとり』(谷川俊太郎+和田誠/いそっぷ社)は、谷川俊太郎さんと和田誠さんによる大人向けのしりとり絵本。このお二人のしりとりということはただのしりとりであるはずがありません。例えば、「無花果」→「くろい馬」→「Marseille」→「ゆりかご」→「ごみ」→「Mitch Miller」→「ラーメン」など、英語もありだし、「Mitch Miller」って何?となりますよね(ちなみに本書に付いている谷川俊太郎さんの解説には、「Mitch Miller」はアメリカの合唱指揮者で作曲家との記載があります)。このように普段のしりとりではおそらく登場しないであろう言葉と抜群のブラックユーモアがおもしろい一冊です。

『しりとり』谷川俊太郎+和田誠/いそっぷ社

 エッセイのタイトルがしりとりで繋がっている『しあわせしりとり』(益田ミリ/ミシマ社)。友人らとしりとりをしながら散歩した日のこと、初めてのひとり暮らしの思い出などのエッセイと日記がイラストとともに綴られています。「しりとりの言葉はいろいろだった。しあわせのかたちもいろいろなのだと思う」。なにもない一日の夜にはもちろん、他人の何気ない一言に傷ついたり、なんとなく疲れたり空しくなる夜にも、そんな夜を明るく乗り越えられる言葉と出合えます。表紙や見返しなどに描かれているかわいいしりとりのイラストを眺めるだけでも思わずクスッとなり、気持ちがほぐれます。一日の終わりに、小さなしあわせを感じられる一冊です。

『しあわせしりとり』益田ミリ/ミシマ社

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。