2023.09.01

「十五夜に読みたいお月さま絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。 毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

一冊は持っておきたいお月さま絵本

 今月は、お月見ということでお月さま絵本についてです。
お月見のイベントがある保育園や幼稚園も多く、お月さまに関心のあるこの時期に読みたいお月さま絵本。
でも、絵本売り場では本当にたくさんのお月さま絵本が並び、どれにしようか迷ってしまいます。
そこで、数あるお月さま絵本の中から一冊は持っておきたい絵本を選びました。


 『おつきさまこんばんは』は、ファーストブックとしてもおなじみ、まず持っておきたい一冊。
ページいっぱいに広がる夜空に黄色く輝くまんまるおつきさまは、眺めているだけで癒されます。「おつきさま」「こんばんは」と繰り返される言葉が子どもに刺激を与えてくれます。
また、月に関心を持つきっかけにもなります。なにより、見て楽しめるお月さま絵本の代表作です。

『おつきさまこんばんは』(林明子 さく/福音館書店) 対象:0才から

 お月さま絵本の二冊目として持っておきたいのは、しかけ絵本『パパ、お月さまとって!』。
ダイナミックに広がるしかけとエリック=カール氏独特の色彩が、五感をたっぷりと刺激してくれます。小さい子がお月さまを見ると、その小さい手をうーんと伸ばしてお月さまを手に取ろうとする姿は本当に愛らしいです。お月さまをとってほしいという子どもたちの夢を叶えた絵本です。
また、月の満ち欠けや空の高さなども表現されていて幅広い年齢の子どもたちが楽しめ、学びのある絵本です。

『パパ、お月さまとって!』(エリック=カール さく もりひさし やく/偕成社) 対象:3歳から

子どもたちに伝えていきたいお月見文化

 せなけいこ氏のおばけ絵本『おつきみおばけ』は、「お月見」と「おばけ」とまさに秋にぴったりの一冊です。
おつきみの夜にママとはぐれてしまったうさぎちゃんと一緒に遊んであげる優しいおばけの物語。すすきを飾り、お団子をお供えしようとするおばけでしたが…。
十五夜にはすすきを飾って、お団子や収穫物をお供えして、収穫の喜びを分かち合う。そんな昔から伝わってきた日本の美しい文化に子どもと一緒に触れることができる絵本です。

『おつきみおばけ』(せなけいこ/ポプラ社) 対象:3歳・4歳・5歳

満月の夜、コーヒーをお供に読書時間

 家族でお月見をした後は、丁寧に淹れたコーヒーをお供にママも月をテーマにした本を読んでみませんか。
子どもたちの夏休みが終わり、やっと戻ってきた日常。そんな中で、束の間の静かな一人時間に読み進めやすい、ほっこりと心温まる短編小説と大人のためのファンタジーを二冊選びました。
秋の気配を感じながら、読書を再開させたい方にも手に取りやすい二冊です。


大人気シリーズ『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』は、満月の夜にだけ開店する珈琲店の物語。
三毛猫のマスターが悩めるお客様のためにとっておきのドリンクとスイーツ、そして星詠みでもてなしてくれます。本作は、家庭や家族をテーマにした連作短編集です。本当の自分を見失った悩みを抱える者たちが、自分を見つめなおし、本来の自分を取り戻していきます。
尚、こちらはシリーズ二作目となっております。本作だけを読んでも楽しめますし、一作目からシリーズを通して読み進めても楽しめます。

『満月珈琲店の星詠み~本当の願いごと~』(望月麻衣 画・桜田千尋/文春文庫)

 『月とコーヒー』は、夜のほんのひとときの読書時間に最適な小さくてやさしくておいしい二十四篇の物語。
喫茶店ゴーゴリの甘くないケーキ。映画技師に夕食のサンドイッチを届ける配達人。シニカルな老人たちが作るクリームシチュー。トランプから抜け出したジョーカー。バナナ会議を行う猿など、大人のための不思議な物語。
「これさえあれば他に何もいらないのではないかという安心感」とある通り、生きていくために必要なものではないかもしれないけれど、なくなったら日常が味気なくなってしまう。そんなものたちが愛おしくなる本です。

『月とコーヒー』(吉田篤弘/徳間書店)

中秋の名月くらい、ゆっくりと月を眺める余裕を持ちたい

 いつも忙しくしていて、月をゆっくりと眺めることなんてないのが正直なところ。でも、夏の騒がしさが落ち着き、秋の気配を感じながらゆっくりと月を眺めていると、自然と気持ちも落ち着いてきます。お月見という文化がはじまったのは平安時代(※諸説あり)ごろのようですが、その時代の人々と変わらずに私たちもこうして月を眺めているのは不思議な気持ちになります。そして、中秋の名月くらいはゆっくりと月を眺める余裕と、日本人として月を愛でる感性を大切にしたいと思います。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。