2023.10.02

「秋の一大イベント芋ほりが楽しくなるおいも絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディックブルーナさんの言葉です。 毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

実りの秋、芋ほりがもっと楽しみになる絵本

 秋の一大イベントといえば芋ほり。広い畑のどこに埋まっているのかわからないお芋。それを宝探しのように友だちと競い合うように夢中で土を掘り、お芋を見つけたときの喜び。大小さまざまなお芋を母がいろんな料理にしてくれて、家族みんなで食べたときのおいしさ。そのお芋を自分が収穫したという誇らしい気持ちは今でも覚えています。そんな芋ほりシーズンに読みたいお芋の絵本をご紹介します。


 子どもたちの芋ほりの日が決まったら読みたい『おおきな おおきな おいも』。
芋ほりえんそくが雨で一週間延期になった子どもたちが、「どれくらい大きくなってるかなぁ」と想像しながら、どんどん紙を足して大きな大きなお芋の絵を描きます。そのお芋をみんなで力を合わせて引っ張り、運んで洗って料理して、最後はおいもパーティー。
子どもたちが描く自由で大きなお芋には夢があります。たのしみにしていた芋ほりが延期になり駄々をこねながらも、無限の想像力で楽しみに変えていく子どもたちのポジティブな絵本です。

『おおきな おおきな おいも』(赤羽末吉 さく・え/福音館書店) 対象:4才から

 『さつまのおいも』は、土の中で暮らすおいもをユニークに描いた絵本。
おいもがごはんをたべたり、歯を磨いたり、トイレに行ったりとまるで人間みたいな暮らしぶりがかわいくて思わず笑ってしまいます。
子どもたちが畑にやってきて、育ったおいもとつなひきの場面では、芋を掘るときの臨場感が溢れています。「スッポーン!」とおいもたちが出てきたときの爽快感。芋ほりの前に読みたい絵本です。

『さつまのおいも』(中川ひろたか・文 村上康成・絵/童心社) 対象:3歳から

食育絵本としてもぴったり!子どもたちも大好きなおいも絵本

 赤ちゃんにとって身近で大好きなおいもが動き出す絵本『おいもさんがね・・』。
「よいしょ よいしょ」芋づる式に土の中から顔を出すおいもたち。「すっぽーん」と出てきたと思ったら、「ごろごろごろごろ」お水に「ぼっちゃ~ん」。擬音語が多くリズミカルなので絵と共に音でも楽しめます。
やきいもになったおいもさんはあつあつほくほくでおいしそうで、赤ちゃんのお芋や食への好奇心を刺激します。こちらは食育絵本としても人気の「おいしいともだち」シリーズで、他にもおにぎりやバナナなど子どもたちも大好きな食べ物が勢ぞろい。子どもたちの好きな食べ物からそろえたくなります。

『おいもさんがね・・』(とよたかずひこ/童心社) 対象:2歳から

食欲の秋に読みたいおいしい小説

 芋、栗、かぼちゃ、それから新米にきのこに梨など、おいしいもので溢れる秋。
そんな食欲の秋に読みたいおいしい物語といえば、食通でおいしいものが大好きな原田マハさんの『生きるぼくら』。そして、おいしい小説に定評のある小川糸さんの『あつあつを召し上がれ』です。おいしくてほっこりする小説は数多くありますが、食欲の秋真っただ中の今だからこそ読みたい二冊です。


 新米のおいしい季節に読みたい『生きるぼくら』。
自然あふれる蓼科で、祖母マーサさんと暮らしながら米作りを手伝う二十四歳・麻生人生(あそう じんせい)の成長の物語。マーサさんから米ひと粒に七人の神様が住んでいるということを聞いて育った人生がごはんひと粒残さずにおいしそうに食べる場面では、お腹が空いてきます。
「自然と、命と、自分たちと。みんな引っくるめて、生きるぼくら」の一文に、自然に触れること、人と助け合うこと、そして食の大切さに気づかされます。

『生きるぼくら』(原田マハ/徳間文庫)

 十月になり肌寒くなってくると温かいものを食べたくなります。でも、育児中は湯気の立つうちに温かい料理を食べることが難しいときもあると思います。そんなときに読みたいのが『あつあつを召し上がれ』です。
中華街のぶたばら飯、娘の作るみそ汁、奥能登の旅館の松茸料理、父の大好きだったきりたんぽ。温かくて、優しくて、幸福感に溢れ、ちょっぴり切ない七つのおいしい短編集。1日1話、夜眠る前にベッドの中で好きなところからお読みください。

『あつあつを召し上がれ』(小川糸/新潮文庫)

おいしいものを食べる幸せ、一緒に食べる喜び

 子どもたちは芋ほりを通して、自然に触れることの楽しさ、大好きなお芋をはじめ食への関心を高め、収穫の喜びを体感します。私たち大人は、子どもたちの芋ほりの様子を通して、食べ物が自然の恵みであること、生産者への感謝、食の大切さを再確認します。
そして、おいしいものを食べることの幸せ、大好きな人たちと一緒に食べることの喜び、普段の何気ない食卓がより尊いものになるかもしれません。

 それでは、今夜もすてきな絵本時間をお過ごしください。



5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。