2023.12.01

「お正月がたのしみになる年越し絵本」

Column

 5冊だけの本屋という女性向け選書サービスを行っておりますミホコです。

 「寝る前に読んでもらう絵本のストーリーの終わりがあたたかいものだったら、子どもたちは一日をとっても幸福に感じるでしょう。そして心地よい眠りにつけるはずです」

 これはミッフィーの生みの親でもあるディック・ブルーナさんの言葉です。 毎日、大人も子どももいろいろあります。どんな一日でも、夜眠る前に心温まる絵本をゆっくりゆっくりと読んでいると、一日の緊張の糸がほどけて自然とリラックスしてきます。彼の言葉にあるように、それが幸福や心地よい眠りに繋がるのだと思います。
この連載では、眠りにつく前にぴったりな心温まる絵本とそれにつながる5冊をご紹介します。

「年越しってなあに?」年越し絵本で親子一緒に年越し準備を。

 年越しの準備を毎年しているのに、「年越しってなあに?」と子どもに聞かれると、その説明が難しかったりしませんか?
なぜ松飾りを飾るのか。大晦日にはどうして年越しそばを食べるのか。除夜の鐘はどうして108回なのか。そういう年越しの準備の意味を絵本で親子一緒に学び、子どもと一緒に準備したくなるたのしい絵本をご紹介します。


 「らいねん」ってなに?『くまのこのとしこし』は、「らいねん」がわからないくまのこの目線で描かれる年越しの物語。
お父さんとお母さんが大掃除をしたり、年賀状を書いたり、おせちをつくったりする様子を見て、まねをするくまのこ。自分の部屋を片付けたり、画用紙に「おめでとう」と書いたり、「らいねん」のためにおやつを用意したりします。
そして、「おしょうがつって、らいねんのおたんじょうびかいみたいだね」という言葉にお正月っておめでたいことだと明るい気持ちになります。

『くまのこのとしこし』(高橋和枝/講談社)対象:3歳ごろから

『こたつ』は、こたつを中心にこうたくん家族の大晦日の様子を真上からの定点観測で描いたユニーク絵本です。
大晦日の朝食をこたつで食べているところからはじまり、家族四人の会話だけで進みます。家族がそれぞれこたつから出たり入ったりしながら、ダラダラしたり、年越しそばを食べたり、トランプやオセロをやったりして過ごす大晦日の朝から元旦までの一部始終を真上からのぞいているかのようです。
朝、「ぼく、きょうは、よなかまでおきてるからね」と高々と宣言したこうたくんが、ねむくないと言いつつも寝てしまっているところも大晦日あるあるですよね。そして、絵をよく見てみると、歌舞伎揚げやポンジュースに鳩サブレ―など細部まで実にリアル。大人も子どもも楽しめる一冊です。

『こたつ』(麻生知子/福音館書店)対象:5才から

「ぺったん ぺったん」とおもちつきのリズムが楽しい絵本

 お正月といえばおもち。赤ちゃんから楽しめるおもちの絵本といえば、『おもち!』です。
「ぺったん ぺったん」「びよ~ん びよ~ん」など、餅つきの楽しいリズムが赤ちゃんと一緒にまねしたくなります。真っ白いおもちがびよよ~んとのびてうさぎやしろくまに変身する様子がダイナミックに描かれています。
12月には餅つき大会を行う保育園や幼稚園もあると思います。その前に、餅つきの予習のために親子で一緒に読む絵本としてもぴったり。おもちをたくさん食べるお正月に読んで楽しい一冊です。

『おもち!』(文・石津ちひろ 絵・村上康成/小峰書店)対象:[0・1・2才][3・4才][5・6才]

年末年始、家族で過ごす時間がたのしみになる本

 子どもが成長すると年末年始を家族で過ごすということも少なくなってくるかもしれません。子どもが幼いうちだからこそ、年末年始休暇に家族みんなでごちそうを食べて寝て、遊んだりして楽しみませんか。
そこで、家族と一緒に過ごす時間が増える年末年始だからこそ読みたい大晦日からお正月の家族を描いた静かで温かい二冊をご紹介します。


『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』は、作家・宮下奈都氏の家族とおいしいものを綴ったエッセイ。
せっかく作ったおせちを小学校低学年と幼稚園の3人の子どもたちは食べず、チェーン店のカレー屋にいくと大喜びだったというエピソードに思わず共感してしまいます。大人になった今ではおせちの味わいなども理解できるものの、子どもの頃は正直あんまり手が伸びませんでした。他にも、クリスマスの夜のローストチキンや結婚して最初のお正月に買ったお重など家族のささやかな思い出などが綴られています。
この時期、忙しくて読書の時間が取れないという方は、順不同でクリスマスやお正月のページなど好きなところだけを自由に読んでも楽しめます。

『とりあえずウミガメのスープを仕込もう。』(宮下奈都/扶桑社)

『流しのしたの骨』は、十九歳のこと子を中心に四姉弟と両親の六人家族の物語。
お正月、お花見、家族みんなの誕生日、クリスマスなど、家族の行事と季節のイベントを大切にする宮坂家。家族でクリスマスツリーを買いに行ったり、お歳暮を贈ったり、お正月には書初めをしたりと大きな展開はないもののささやかな日常を静かに淡々と描いています。ちょっと変わっているけれど、家族それぞれを尊重し、いつでも家族の味方である絶対的安心感のある温かく心地のよい一冊です。

『流しのしたの骨』(江國香織/新潮文庫)

まっさらな気持ちで新年を迎える喜びを。

 みなさんにとってどんな一年でしたか?たのしいこともつらいこともいろいろあったと思います。
大晦日には、そういうものをゆったりと家族みんなで語らい一年を終え、まっさらな気持ちで晴れやかにささやかな希望と喜びを持って新しい一年を迎える。そういう節目の意味でも年越しは大切なのかもしれません。すっきりとリセットして新年を迎えるための年越し絵本との出合いになれば嬉しいです。

それでは、皆さま、よいお年を!

5冊だけの本屋 ミホコ

2015年に女性のための選書サービス「5冊だけの本屋」をスタート。お客様のSNSを拝見して、今のお客様にぴったりな5冊を選書している。本好きな女性にも、普段本を読まない女性にも、読書を楽しんでもらうために活動中。

「5冊だけの本屋」ミホコの今日もハッピーエンド。