2024.04.26

[防災・安心プランナー監修] もしも地震・災害が発生したときは? 赤ちゃんを守るために備えておくべき防災グッズ

Column

2024年1月1日、最大震度7の大地震が石川県能登半島を襲い、多くの方々の尊い命が失われるとともに、住宅倒壊、住宅火災、津波被害をはじめとした甚大な被害がもたらされました。また、南海トラフ地震や首都直下型地震などの巨大地震のリスクに加え、今や日本中、いつ、どこの都市が揺れてもおかしくない状況に直面しています。

もしも大地震が起きたらー。もしも大災害に見舞われたらー。

地震・災害から家族を守るために備えておきたいことを、「しほママ」こと防災・安心プランナーの柳原志保さんに教えてもらいました。ママたちの声とともにお届けします!

防災グッズを用意する前にやっておきたいこと

「防災グッズの前に大事なことがあります」と、しほママは言います。すぐに準備しておきたいことをお聞きしました。

1. 家族の災害時の状況をシミュレーションする
お子さんの年齢、持病やアレルギーの有無(薬や非常食の必要性)、自宅の場所(山や海など二次災害の可能性)、自宅の状況(マンション、木造住宅など)、帰宅困難の可能性やお子さんの預け先など、もしもの場合を想定し、家族の状況を1冊のノートに書き出し、これを家庭の防災ノートにします。こうすることで、災害時の心がまえを家族間で共有できるうえに、避難バッグの中身が明確になります。

<ママたちの防災>
1歳の娘を保育園に預けています。入園説明の際、「お迎えが来るまで、夜中でも翌朝でも必ずお子さんを預かりますので、帰宅困難の場合は無理せずに安心して、安全第一でお戻りください」と言ってくれたことがとても心強く、ありがたかったです。お子さんを預けている場合は、受託先と災害時のことを話し合っておくのがいいと思います。
(S.Oさん/1歳の女の子のママ)

2.「どこに避難するのか?」を考えよう
指定避難所にはプライバシーがありません。また、赤ちゃんが泣くと、入れないことも。さらに、避難所に入ることがストレスになる場合もあるため、自宅・宿泊施設・親戚宅・知人宅・福祉施設・車中泊など、避難所以外で避難できる場所を複数想定しておきましょう。避難先を想定することで、準備も変わってきます。一番安心なのは在宅避難ですが、耐震性の確保や安全空間づくりがなされていることが大前提です。
また、ライフラインが止まっても生活できる備蓄など、環境準備ができていないことには、在宅避難はできません。在宅避難が厳しい場合、お金はかかっても、ホテルに避難するという選択肢もあります。

<ママたちの防災>
もしも地震が起きたら、隣の県に住む義理の両親宅に避難する予定です。
ただ、発災後1週間は混乱や道路の渋滞などで身動きが取れない可能性が高いと聞いたので、やはり在宅避難を視野に入れて対策しないといけないと思っているところです。
(A.Yさん/10ヵ月の男の子のママ)

3.『受援力』をもとう
モノを備えるだけが防災ではないということを念頭においておきましょう。
たとえばパパと離れた場所で被災した場合、赤ちゃん連れ(きょうだいがいる場合も)のママがひとりで災害を乗り切るのは並大抵のことではありません。困ったときにSOSを出せる相手が身近にいますか? 地域の人、友だちなどから助けを借りる力『受援力』も大事な備えです。常日頃から、支え合える人間関係をつくっておくことが大切です。

<ママたちの防災>
マイホーム購入後、すぐに町内会に入りました。今の若い人はなかなか入らないそうで驚かれましたが、おかげで地域の方と顔見知りになり、子どもたちが遊んでいても声をかけてくださったり、畑で採れた野菜を届けてくださったりする間柄に。何かあったときも安心です。
(C.Mさん/8ヵ月の男の子と小1の女の子のママ)

乳幼児ママは「非常用ママバッグ」の準備しよう

一般的な防災グッズとは別に、赤ちゃん専用の防災セットを用意しましょう。イメージは、おでかけのときのママバッグです。普段使っているママバッグの近くにプラスαのものを入れた巾着などを置いておき、いざというときに一緒に持ち出せるようにしておくのもおすすめです。

● しほママ直伝! 乳幼児ママが備えておきたい防災グッズ
「赤ちゃんを抱っこして、さらにきょうだいの手を引いても避難先まで『持てる重さ』で揃えましょう。また、持出品はジッパー付きの袋に入れて防水対策を! ふだん使いのママバックをそのまま使う場合は、おでかけから帰ったら整えておくのを習慣にするとよいでしょう。
なお、優先順位や必要なものは人それぞれです。ここで紹介するグッズは、ご自身の非常用ママバッグを考えるための目安にしてください」(しほママ)

【貴重品】
母子健康手帳・健康保険証(スマホで写真を撮ってバックアップを)、抱っこひも、パーソナルカード、現金(ATM、キャッスレス決済は使えません)

【食料】
赤ちゃん用→ミルクセット:紙コップ(消毒できない場合)離乳食(スプーンも)
ママ用(そのまま食べられるもの)→非常食、水、おやつなど

【衛生・生活用品】
オムツ、おしりふき、マスク、パンティライナー(ママの着替えまでは持てない可能性が高いため)、生理用品、歯みがきセット、携帯トイレ、除菌シート、ガーゼ、赤ちゃん用の着替え、ポリ袋、授乳ケープまたはバスタオル

【情報収集・非常用ツール】
携帯電話、充電器、ラジオ(ライト・充電・サイレン付きなど、多機能タイプが便利)、カイロ、タオル、保冷剤など熱さ・寒さ対策グッズ、ヘッドライト、音が鳴らないおもちゃ、ホイッスル

<ママたちの防災>
子どもが避難所で泣いたり騒いだりする心配を考えると、災害時はできるだけ在宅避難がいいなと考えています。そのために大型家具は倒れてこないようにしっかり固定し、ガラスには飛散防止フィルムを貼って、地震の際にできるだけ家が散らからないよう工夫しています。
また、冷凍庫も備蓄庫と考えています。避難生活では野菜不足になると聞いたので、ミックスベジタブルやほうれん草などの冷凍食品を多めに買って、消費しながら備蓄しています。
(C.Aさん/0歳と3歳の男の子のママ)

知っておくと安心!緊急時のアイデア

赤ちゃんがいる状態で被災するということは、想像を絶する厳しさがあるでしょう。そこで、緊急時に役立つアイデアをご紹介します。

1. ダンボールを簡易ベビーベッドや簡易お風呂に
ダンボールにバスタオルや毛布を敷いて、簡易ベビーベッドに。ポリ袋をセットすれば、赤ちゃんの体を洗うお風呂になります。また、ペットボトルのふたに穴を開ければ、簡易シャワーとして使えます。

2. レジ袋とタオルをオムツに
スーパーなどのレジ袋の持ち手と両端を切り、1枚のビニールにします。ビニールの上にタオルを敷き、赤ちゃんのおしりを当てたらオムツの大きさを調整し、持ち手の部分を腰のあたりで結んで固定します。レジ袋とタオルは、「非常用ママバッグ」に多めに入れておくと安心です。

3. 哺乳瓶が使えない場合はスプーンで代用を
新生児でも、ミルクはスプーンで飲ませることができます。洗浄や消毒ができない場合は、使い捨ての紙コップがいいでしょう。無理に口の中にミルクを注ごうとするのではなく、ミルクが唇に触れるように少しずつ角度を調整しながら与えます。

4. ベビーカーや車が被災後の生活で大助かり!
ベビーカーは食事をするときのテーブル代わりにしたり、水などの重い物資を運んだりするのに役立ちます。また、車は備蓄庫代わりに使えます。窓を布などで覆えば、着替えや授乳の際などに、プライバシーを守ることもできます。



最後に、しほママからのメッセージを紹介します!
「東日本大震災の時、「防災は行政や地域のリーダーがやるもの」と思って何の備えもしておらず、シングルマザーで2児を抱え、避難所生活では不安で困ることだらけでした。親として「備えをしておけばよかった」と後悔しました。痛い目にあってから気づくのではなく、今、できることからはじめてみませんか? 大切なわが子の命と心を守れるのは、ママとパパなのですから」

教えてくれた人

防災・安心プランナー
しほママ(柳原志保さん)

宮城県多賀城市生まれ、熊本県和水町在住。2011年東日本大震災では自宅が大規模半壊し、2週間の避難所生活を送る。2014年に防災士の資格を取得後、2016年熊本地震、2020年熊本豪雨で自宅避難を経験。大災害の経験と防災士の知識を活かし、『歌う防災士』の愛称で、講演やメディアなどで防災対策の啓発活動を続けている。熊本県民テレビ「news every.くまもと」の『しほママの目からウロコの防災術』(18:15〜19:00/月1回放送)にレギュラー出演中。公式ホームページ

文/羽田朋美(Neem Tree